丸紅は、インフルエンサーとの協業によるD2C事業に乗り出した。有力インフルエンサーが監修するブランドを集めたECサイト「リット・ライブラリ(LIT LIBRARY)」を12月末に開設。同社の繊維ファッション部門はOEM(相手先ブランドの生産)など企業向けを主力としているが、D2C事業を通じて消費者に近いビジネスを新たに構築する。
インスタグラムやユーチューブで活躍する3人の女性インフルエンサーとオリジナルブランドを開発した。ストリートファッションが支持されるモデルのNiina(フォロワー数12万7000)による「クマラ(KUMARA)」、Z世代の人気を集める安保彩世(同5万1000)による「クレデュ(CLEDU)」、元「スライ(SLY)」のビジュアルスタッフだった川本七海(同5万2000)による「ビィデン(BEEDEN)」の3ブランドを20〜30代の女性に向けて直販する。各インフルエンサーおよび各ブランドのアカウントを通じて発信を強める。SNSを通じた顧客とのコミュニケーションを企画にも生かす。
各ブランドは「外出」をコンセプトにしており、品番を絞り込みながらも、ディレクターの個性を生かしたユニークなデザインを前面に出す。当面は消費者の反応を見ながら、高い技術のある国内工場で小ロット生産する。中心価格はワンピースで1万〜2万円台。
D2C事業を通じて「マーケットインの手法を磨くことで、OEMやODM(相手先ブランドの企画・生産)にも相乗効果を創出していきたい」(担当するライフスタイル第一部の今西正幸氏)。部内の若手社員がインフルエンサーと連携しながら、SNSでの発信やデジタルマーケティングの実践法を習得していく。
夏には新たなインフルエンサーを3人加え、6人体制にする。ポップアップなどのリアルな接点を設けることも視野に入れる。売上高はリット・ライブララリとしてまずは数十億円を目指す。
昨今、大手企業がインフルエンサーなど個人によるD2Cブランドのプラットフォームを作る動きが相次ぐ。ファッションEC最大手のZOZOはアパレル経験のない個人と一緒にブランドを作る「ユアブランドプロジェクト」、総合アパレルのワールドも同様に個人のブランド設立を支援するワールド・ファッション・クラウド」をそれぞれ始動させた。丸紅もクリエイターエコノミーと呼ばれるこの市場に参入する。国内外の生産や販売のネットワークなど、総合商社の武器を生かして事業拡大する。