ボンジュール!欧州通信員の藪野です。1日の新規感染者は相変わらず40万人近いですが、週末ということもあって、マレなどの繁華街は大にぎわい。“自粛”という感覚はヨーロッパには存在しないのね〜と、あらためて実感します。パリ・メンズは残すところ、あと2日。土曜日だし、ちょっと遅くまで寝たいところですが、張り切って行ってきます!
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9:00 PAUL SMITH & DRIES VAN NOTEN
起床後はまず朝食を食べながら、昨日デジタルで発表されたブランドの映像をチェック。「ポール・スミス(PAUL SMITH)」は、現在の状況を鑑みて、無観客ショーのライブ配信でコレクションを発表しました。今季の着想源は、アートハウス映画(ハリウッド映画ではない、いわゆるミニシアター系の映画)の世界観を探求。ファーストルックのスーツに見られたグリーンやダウンジャケットの濃いピンクといったジュエルトーンをはじめ、サイケデリックなジグザグ柄、白黒からサーモグラフィーのような色彩で表現したフォトプリントが目を引きます。秋冬の定番ともいえるチェックは、スーツやチェスターコートだけでなく、ダッフルコートやフィールドジャケット、カーゴパンツなどにも採用。バギーなカーゴパンツは、22年春夏のウィメンズで”Y2K”スタイルを象徴するアイテムの一つとして広がりましたが、今季のメンズでも多くのブランドが提案していて、トレンドアイテムの一つになっています。
「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」は、若いカップルが濃厚なキスをしたり、手をつないだり、仲間と戯れたりと、親密さや触れ合うことの尊さを感じさせる映像です。男女問わずメンズ・コレクションのアイテムを着て登場するのですが、リリースには「男とは何か、女とは何か - これまでの常識にとらわれず、男女の境はよりいっそう曖昧になる」という表現。今季は、「アクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)」もメンズをあえて女性モデルに着せてルック撮影していましたし、さまざまなブランドで従来の“メンズ”の枠を超えたアイテム提案が見られました。ファッションはジェンダーやルールにとらわれず、自由なマインドで楽しむべきという流れの広がりが顕著です。
11:00 ISABEL MARANT
身支度をして、「イザベル マラン(ISABEL MARANT)」のショールームへ。今季は、1990年代やカート・コバーン(Kurt Coban)のスタイルにヒントを得て、ブランド流のグランジを表現。ゆったりとしたアウトドアムードのアウターやほっこりしたセーターに、ダボっとしたカーゴパンツ(こちらでも発見)やウォッシュドジーンズを合わせ、腰にチェックシャツやボーダートップスを巻いたレイヤードスタイルが中心になっています。足もとは、ウィメンズのウェッジスニーカーから着想を得たメンズの新作の”BUMKEEH”やイエローのクリーンなスニーカー。アースカラーに加えた、レトロスポーティーなカラーブロッキングが目を引きました。
12:00 LOEWE
「ロエベ(LOEWE)」のメンズも、ウィメンズに続きショーを再開しました!インビテーションは人によって色が異なる長〜いリボンだったのですが、会場に行って納得。ショーは、アーティストのジョー・マクシャ(Joe McShea)とエドガー・モサ(Edgar Mosa)による、カラフルなリボン4000本で作った87枚の旗を飾ったセットの中で行われました。
ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)のクリエイションは、今季も実験的。目指したのは“変化した現実世界を定義すること”だそうで、ベースとなるのは典型的なアイテムですが、そこにひねりを加えています。
第二の皮膚のようなベースレイヤーは、中にクリスマスツリーに飾るようなLEDライトが仕込まれていて輝きを放ったり、縮んだ裸体がトロンプルイユで描かれていたり。シンプルなTシャツと黒のショートパンツのルックは裾や腰に配されたフープでシルエットが飛び出し、ボーダーのトップスは中に型紙を入れたかのようにハートのシェイプが浮かび上がります。また、マックコートは、レザーなのに中の白いブリーフが見えるほどの透け感!チェスターコートは、背面にペンキ塗り立てのベンチに座ってしまったかのような跡がついていたり、デニムのショートパンツが上から重なっていたり。スーツは超タイトシルエットで、セーターと手袋をドッキングしたようなニットは指の部分が極端に長く垂れ下がっています。そして、シルバーの排水溝カバーがウエアやバッグの装飾として登場。“フラメンコ クラッチ”はヤドカリのように貝殻と合体したかと思えば、シューズにもアレンジされています。本当にどのルックを見ても、「えっ?」と思うような違和感やツッコミどころが満載です。
ショー後に、ジョナサンが囲み取材で語ったのは「(今季は)先シーズンのウィメンズの延長線上にあるようなもの。現実と非現実、そして次の10年に向けて、私たちはますますデジタル化していく世界の中でどのように服が存在しうるかを競い合うことに目を向ける必要があるというアイデアだ」ということ。うーん、正直分かるような、分からないような。できることなら、彼の頭の中を覗いてみたい。個人的にそう思うデザイナーNo.1です。
15:00 HERMES
「エルメス(HERMES)」の会場は、国有の家具や調度品の管理や修復を手掛けるモビリエ・ナショナル。そこに保存されている古いタペストリーを背景にショーが行われました。実は、その大半は壁面の大きなスクリーンに映し出されたもの。ショーが進むにつれて変化していきます。
今季のキーアイテムは、取り外しできるラムファーのライニングと風合いのあるテクニカルキャンバスのアウターをレイヤードしたパーカやブルゾン、スカーフを巻いたような襟が特徴的なテクニカルポプリンのシャツ。ダークカラーに合わせた“フロスト・ブルー”と呼ぶ繊細な水色や淡いマスタード、ペールピンクといったニュアンスカラーが秀逸で、心を奪われました。全体的には、シルバーのファスナーや大きなポケットでユーティリティーさを取り入れつつ、アンクル丈のゆったりしたトラウザーやクリーンなスーツを合わせることで、軽やかさと洗練されたムードを融合。「エルメス」ならではの上質な素材使いで、活動的な新たな日常に向けたフォーマルとカジュアルがそろうバランスの良いコレクションでした。
17:00 VUARNET
マレに移動して、「ヴュアルネ(VUARNET)」のプレゼンテーションへ。1957年創業のスキーウエア&サングラスメーカーですが、昨年「ランバン(LANVIN)」のメンズなどで経験を積んだボラミー・ビジュアー(Boramy Viguier)をクリエイティブ・ディレクターに迎え、リブランディングを進めています。今回発表されたのは、ボラミーの就任後初の秋冬コレクション。スポーツ系のブランドというと、鮮やかな色やアクティブなムードが多いですが、新しい「ヴュアルネ」のイメージはダークでミステリアス。プレゼンの会場も発表された映像もスピリチュアルなムードで、ボラミーらしさを感じます。ウィンタースポーツ用の本格的なウエアやバリエーション豊富なサングラスに加え、街でも着られそうなセーターやベストも充実。できる限り環境負荷の低い素材を使用しているほか、ニットなどはフランス国内で生産しているそうです。
おまけ:今日のワンコ
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立ち寄った若手ブランド「ネームセイク(NAMESAKE)」の会場で、抱っこされて来場したヨークシャーテリアを発見。その向かいでは、キワどい刺しゅうのTシャツで知られる「カルネ ボレンテ(CARNE BOLLENTE)」がたまたま展示会を開催していて、こんなワンちゃんモチーフも……。