ファッション

「ナノ・ユニバース」刷新の仕掛け人に聞く 50年続けるための「第三の道」

 TSIホールディングスの「ナノ・ユニバース(NANO UNIVERSE)」は今春から、ブランディング戦略を大きく転換する。25周年を迎える2024年に向け、セレクトショップとして始まった「ナノユニバース」をブランド化し、6つのレーベルからなる“マルチレーベルストア”の構築に取り組む。中田浩史クリエイティブディレクターにその全貌を聞いた。

 中田ディレクターは、「最近ではセレクト比率が15%程度となり、オリジナル商品は若年化した顧客層を意識した価格帯や、ECで売れやすいシンプルなデザインの商品が増えていた。ファッション感度の高い層に刺さる強気の買い付けをしていた頃から見ると失った顧客も多い。この事業を50年続けるためには、現状のまま進むべきか、服屋の魂を取り戻すべきか、社員70人と話し合いを続けた。その結果、セレクトショップに戻るわけでも、ファストファッション路線を走るわけでもなく、新たな切り札としての“マルチ・レーベルストア”を作ることに行き着いた」と話す。

 事業パーパスは、中田ディレクターの愛読書である米国の「ホールアースカタログ(Whole Earth Catalog)」からヒントを得て、「生活に役立つファッションや情報を知恵として提案することを活動とする」ことを新たに掲げた。

 レーベルは“01”〜“06”と名付けた6つで構成する。“01(ステイトメント)”は、ブランドイメージを訴求する高品質のドレスライン。メンズとウィメンズともにテーラリングにこだわったスーツや国内有数のシャツメーカーの生地を使用したシャツなどを展開する。“02(ビブリオグラフィー)”は、日本製にこだわった高価格帯のカジュアルラインで、ミリタリーやワークウエアの要素を取り入れたオリジナルアイテムのほか、ビンテージアイテムなども仕入れる。中田ディレクターは、「この2つのトップレーベルのモノ作りを主役に、ブランドビジネスに力を入れる。ジャパンメイドが中心だが、各地の高品質なモノ作りも取り入れ、海外卸も視野に入れる」という。

 “03”は、既存の顧客層や価格帯を引き継ぐ位置付け。22年の春夏は襟付きのワンピースやボリュームを持たせたパフスリーブのブラウスなどを用意し、今後もデザイン性のあるアイテムを打ち出す。“04”はライセンス商品やアウトレット、EC用の商品を展開する。“05”“06”はいずれも仕入れ商品を軸とする。特に“05”はTSIホールディングス内のブランドの仕入れや別注アイテムを中心とし、“06”では外部ブランドの仕入れのほか、ファッションに限らず、音楽や花、ライフスタイルに関するイベントやワークショップなども手がける。モノ作りにこだわる日本ブランドにも積極的に目を向ける。

 中田ディレクターは、「“01”〜“03”は、セレクトショップのオリジナル商品ではなく、『ナノ・ユニバース』というブランドの商品として打ち出す。最もボリュームを持たせる“03”の上に、トップレーベルの“01”“02”を上乗せし、“04”〜“06”で裾野を広げていくイメージだ」と説明する。

 3月には公式サイトを一新。以降、段階的に新レーベルの商品を導入する。合わせて店舗屋号は、「ナノユニバース トラック ストア」、ECサイトは「ナノユニバース カタログ」に統一する。「これは3年間の長期計画で、各レーベルの割合なども市場の反応を見ながら調整していく」。今後は半年ごとに展示会も開催予定。

 現在「ナノ・ユニバース」は、渋谷・神南の路面店のほか、ファッションビルやショッピングモールなどに約70店舗を持つ。「今後の出店は縁があれば進める。これまでは70坪規模で運営してきたが、“01”“02”だけの25坪の店舗を開いたり、各レーベルの要素を引き出す見せ方にこだわっていく」。店舗の内装は、従来のヨーロッパスタイルから脱却し、中性的なシンプルなデザインに変えていく。またサステナビリティを意識し、店内の什器は、繰り返し使用できるよう組み替え式のものを導入する。ショッパーとトルソーは再生紙を用いた紙製へ、ハンガーは檜の間伐材を利用したものへと切り替える。

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