ボンジュール!欧州通信員の藪野です。パリ・メンズもいよいよ最終日を迎えました。本日は、今季の目玉である新生「ケンゾー(KENZO)」デビューの日。そして、明日から息つく間もなくオートクチュール・ファッション・ウイークが開幕することもあり、それに先駆けて「パコ ラバンヌ(PACO RABANNE)」と「アライア(ALAIA)」のウィメンズショーもあります。
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11:00 KENZO
本日は、今季のメンズコレ最大のトピックであるNigoさんによる「ケンゾー」のデビューショーから取材をスタート。メンズとウィメンズ・コレクションの合同ショーを、故・髙田賢三さんも最初のショーを行ったギャルリー・ヴィヴィエンヌ(Galerie Vivienne)で開きます。世界的なラグジュアリーブランドやデザイナーズブランドのアーティスティック・ディレクターに日本人が就任するというのは、極めて稀なこと。「サカイ(SACAI)」阿部さんがゲストデザイナーとして手掛けた「ゴルチエ パリ(GAULTIER PARIS)」のオートクチュールショーもそうでしたが、そんな歴史的瞬間に立ち会い、取材できるのは、日本人としても、ジャーナリストとしても、うれしい限りです。
16:00 PACO RABANNE
夕方には、ジュリアン・ドッセーナ(Julien Dossena)による「パコ ラバンヌ」の2022-23年秋冬ウィメンズ・コレクションへ。明日からオートクチュール・ファッション・ウイークが始まることもあり、パリ入りしたアナ・ウィンター(Anna Wintour)やスージー・メンケス(Suzy Menkes)の姿もありました。
赤や青みがかった淡い光に照らされる中に登場したのは、ボリュームとテクスチャーの対比を生かしたドレッシーなスタイル。一着の中で質感の異なる素材を重ねたり、切り替えたり。ドレープや大きなバックリボン、ラッフルといったクラシックなクチュールドレスのような要素を、エッジの効いたミニドレスやスカートルックに取り入れています。ショーにはアウター類が一切出てこなかったのですが、強みであるオケージョンウエアを全面的に推していくという意図なのか?その真意は分からずですが、豪華なパーティーやイベントが目に浮かぶラインアップです。
17:30 DOVER STREET MARKET PARIS SHOWROOM
続いては、ヴァンドーム広場からマレの「ユニクロ(UNIQLO)」横にある「3537」というスペースに移転したドーバー ストリート マーケット パリ(DOVER STREET MARKET PARIS以下、DSMP)のショールームを訪問。DSMPとはコム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)の子会社で、ドーバー ストリート マーケットの運営やオリジナル商品の企画開発のほか、ブランドの育成や支援などを行っています。今回はメンズやユニセックスの6ブランドを展示していましたが、個人的に気になったのは、NYを拠点に22年春夏にスタートしたばかりの「スカイハイ ファーム ワークウエア(SKY HIGH FARM WORKWEAR以下SHFWW)」。同ブランドは、食糧不足の解決や再生農業の実践に取り組む非営利の農場、スカイハイ ファームを支援するために、アーティストのダン・コーレン(Dan Colen)が立ち上げたそう。デッドストック生地やオーガニック素材などを使った、フリースジャケットやフーディー、フランネルシャツなどのワークウエアがそろいます。
リサイクルコットンを手編みしたニットはポケットの中に毛糸でつながれた小さなぬいぐるみが付いていて、めちゃくちゃキュート。テイストの違うアーティストにアイコンのイチゴと月のキャラクターを描いてもらい、それをデザインに取り入れているのも面白いと感じました。
20:30 ALAIA
本日2つ目のウィメンズショーは、ピーター・ミュリエ(Pieter Mulier)による2シーズン目の「アライア」です。会場は、マレ地区のヴェルリー通りにある、アトリエやギャラリーを擁するメゾンの”ホーム”。かつて故アズディン・アライア氏がショーに使っていたこともある、ガラス屋根が特徴的なホールに、観客を迎えました。
今季もピーターが探求したのは、メゾンの核と言える”女性の体”。ボディラインにピッタリと沿うシルエットと構築的なボリュームのコントラストで、より大胆な「アライア」像を打ち出しています。デビューシーズンに見せたマーメイドラインは、今季を象徴するシルエットの一つ。ドレスだけでなく、極端なフレアデザインでジーンズやパンツに取り入れたり、ニーハイブーツの履き口にラッフル状のパーツを加えたり。モデルのウォーキングに合わせ、踊るように揺れるのが印象的です。
そして、真っ白なコットンポプリンのタキシードシャツはたっぷりとした量感と切り替えでロングドレスになり、ライダースやボンバージャケットは体の線をなぞるようにタイトなドレスに変化。テーラリングの提案も増えていて、肩のラインとオーバーサイズシルエットが強さにつながります。また、終盤のドレス群の中には、ピカソ財団とのパートナーシップによる、パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)の手掛けた陶芸作品の刺しゅうやニットで表現したタイトなロングドレスも登場しました。
クラフトへのこだわりや彫刻的な服作り、シルエットの実験と探求といった「アライア」らしさに敬意を表しながらも、ピーター自身の考える美がより強く表れたように感じられた今季。アズディン時代をよく知る人にとっては、違うものになってしまったという見方もあるかもしれません。しかし、ピーターが目指しているのは、メゾンが過去の遺産にならぬよう、そのレガシーを未来に受け継いでいくこと。それがアズディンの死後、デザインチームでコレクション制作を続けてきたメゾンにクリエイティブ・ディレクターとして加わった使命でもあります。これからも「アライア」のDNAをどのように彼らしく解釈していくのか楽しみです。
22:00 SACAI
パリ・メンズの締めくくりは、夕方にデジタルで発表された「サカイ(SACAI)」をチェック。今季の映像は雪山をバックにした開けた道路を舞台に、若者のグループが”デロリアン”を追いかけて走ったり、その上に乗ってポーズを取ったりというもの。2分半しかなく、「サカイ」好きとしては、もうちょっと見たかったというのが本音です。
コレクションは、デザイナーの阿部さん自身の技術や希望を再構築して完成させるという原則のもと、オリジナルのビジョンを再考し、「サカイ」らしいハイブリッドの極意を探求し続けたとのこと。メンズと一緒に発表されたウィメンズのプレ・フォールでは、初期のランジェリーディテールを再考し、ドレスやジャケットにブラカップのようなデザインをプラス。メンズもベースにある考え方は一緒ですが、こちらはランジェリーディテールではなくスノーボードウエアの雰囲気をテーラリングとハイブリッド。足元には、ボリュームのあるスノーブーツを合わせています。
また、今季はアーティストのMADSAKIとのコラボアイテムも発表。自分の意見を持たずにマジョリティに従う人や無気力な人を表す「Sheeple, Zombies and Kool-Aid」という言葉が、セーターのフロントや「ショット(SCHOTT)」とのコラボによるライダースジャケットの背面などにあしらわれています。さらに「ナイキ(NIKE)」とのコラボも継続。新たに”コルテッツ(CORTEZ)”をベースにしたモデルが登場しました。
おまけ:今日のワンコ
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「パコ ラバンヌ」のショー会場となったパレ・ド・トーキョー前の人混みの中で、お散歩中ワンちゃん2匹を発見。動物をうまく撮るのって難しいですよね。来シーズンからは、おもちゃを持参して気を引こうかな(笑)。