1月14〜16日、千葉の幕張メッセでアウトドアに焦点を当てた合同展示会「トーキョーアウトドアショー(TOKYO OUTDOOR SHOW以下、TOS)」が開催された。キャンプを中心としたアウトドアレジャーは、コロナ禍の“3密回避”といった面でも注目を集めており、年々市場規模を拡大している。「TOS」も3日間で12万6869人が来場(コロナ感染拡大対策は実施した上で開催)。うち、一般消費者に開放した15、16日の週末は、一人1500円の入場券制ながら10万1935人が来場し、市場の盛り上がりを反映する形となった。ここでは、約80社の出展の中で「WWDJAPAN」編集部が注目した出展者を紹介する。
「ザ・ノース・フェイス」
家の中でも浮かない新色キャンプグッズ
アウトドア人気の立役者の一つともいえるゴールドウインの「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE以下、TNF)」は、テントやクーラーバッグ、ツールボックス、カトラリーケースなどのキャンプギアを出展。長年、クライマーなどに向けた本格派のテントを企画してきたが、近年はレジャーとしてのオートキャンプを意識した商品ラインアップを増やしている。「キャンプ用品は2012年ごろから徐々に強化していたが、20年以降特にニーズが強まっている」と担当者。22年春夏物では、クーラーバッグなどで黒とグレーを新たに投入。キャンプから帰ってきて室内にしまっておく時も、家の中で浮かない色合いがポイントだ。価格はカトラリーケースやツールボックスで6000〜7000円前後。
「ヴァンライフ サプライ バイ フリークスストア」
人気セレクト発のアウトドアブランド
「ヴァンライフ サプライ バイ フリークスストア(VAN LIFE SUPPLY BY FREAK’S STORE)」は、セレクトショップ「フリークスストア(FREAK’S STORE)」を運営するデイトナインターナショナルが2021年9月に立ち上げたブランド。現在、全国の「フリークスストア」約20店内で販売するほか、地方のアウトドアショップへ卸販売もしている。目玉商品は愛車の横に設置できるカーサイドテント(4万9500円=税込)。現在、車も置いて世界観を強く打ち出している店舗は茨城・古河の「フリークスストア」1号店などに限られるが、「デベロッパーから、同様の見せ方をしてほしいという要望はとても多い」と担当者。「TOS」では、1等商品としてカーサイドテントが含まれた1000円クジが来場者に大人気だった。
「アルペン アウトドアーズ」
新宿にグループ最大の旗艦店をオープン
創業50周年を迎えるスポーツ用品店アルペンは2022年春、東京・新宿にグループ最大の旗艦店「アルペン トーキョー(ALPEN TOKYO)」をオープンする。名古屋発の企業として東京ではやや知名度が低いが、旗艦店オープンによって攻勢をかける。量販店ではなく専門店として「販売員もスペシャリストを集める」(担当者)考えだ。「TOS」には新店舗の告知も兼ね、アウトドア業態の「アルペン アウトドアーズ(ALPEN OUTDOORS)」で出展。使用するシーンや人数に合わせて形を変えられるPB商品の大型テント(5万4989円)などをアピールしていた。「他の人とは違う、こだわりのある商品を探すお客さまが増えている」ことに対応したアイテムだ。
「トウキョウクラフト」
こだわりの焚火台がクラファンで人気
「トウキョウクラフト(TOKYO CRAFTS)」は、チャンネル登録者数23万人のキャンプユーチューブチャネル「タナちゃんねる」発のキャンプギアブランド。「TOS」には、「キャンプの醍醐味」(担当者)だという焚火のためのギアを出展していた。チャンネルでは一般キャンパーへのインタビューも配信しており、「タナちゃんねる」としてのギアへのこだわりと、キャンパーたちのリアルな声を反映した商品開発がポイント。最初に製作したという、炎が斜めに立ち上がる日本製の堅牢な焚火台(2万9800円)は、クラウドファンディングで1022万円超を調達。2021年10月に発売した第2弾の焚火台(9878円)は、794グラムと軽くて持ち運びがしやすい点が好評。現在予約販売中だ。
「ファイヤーグラフィックス」
板金工場が一貫生産する薪ストーブ
焚火と同様に、現在キャンプシーンで注目を集めているのが薪ストーブだ。キャンプ・アウトドア用のストーブブランド「ファイヤーグラフィックス(FIREGRAPHIX)」は、神奈川・秦野で板金塗装工場を運営する寿産業が運営する。自社工場で設計から板金、レーザー加工、焼付塗装まで一貫生産できる強みを生かし、キャンプ用のポータブル薪ストーブ(10万7800円)を主力に煙突やストーブ専用の五徳、スコップなどの周辺グッズも手がける。薪ストーブはクラウドファンディングで先行販売したところ、こちらも目標金額を10倍上回る1144万円を販売。その後も自社サイトを中心に合計で2000万円以上の売り上げになっているという。
スワン
バッグメーカーもキャンプ市場に熱視線
バッグの産地として知られる兵庫・豊岡に本社を置くバッグメーカーのスワンは、ミリタリーウエアブランド「ロスコ(ROTHCO)」のライセンスでキャンプグッズの販売をスタートした。ECで先行販売した飯盒(はんごう、8580円)は、防衛省の許可も取り、防衛省認定工場で生産したこだわりの製品で、すでに1000個以上を販売したという。軍モノ用品をベースにしたバッグ(1万5400円)も2月から販売予定で、素材に「コーデュラ」ナイロンを使用する一方で、サイドポーチはインナー素材に保冷素材を使用するなど、キャップグッズらしい仕様になっている。ブランドのアドバイザーには、ソロキャンパーの芸人集団の“焚火会“のメンバーの一人であるスパローズ大和一孝氏を迎えている。
「グリフォンラフト」
水辺の新レジャー、“パックラフト”
水辺のレジャーが注目を集める春夏のアウトドアシーンで人気上昇中なのが、パックラフトだ。空気で膨らませる小型のゴム製ボートのことで、収納時のコンパクトさ、軽さは空気注入式のSUP(スタンドアップパドルボード)以上。バックパックに入れて持ち運びすることができ、パックラフトに自転車をくくりつけることも可能。それゆえ、川下りとサイクリングで自然を楽しむといった遊び方が徐々に広がりつつある。そんなパックラフトを「TOS」に出展していたのが、愛知・春日井のアウトドアショップ、元気商会(会は旧字体表記)だ。オリジナルで開発している「グリフォンラフト(GRIFFON RAFT)」の “ストレウス”モデルは9万2400円。
東レ
素材メーカーも消費者への発信に活用
素材メーカーが新商品を発表する場は素材合同展というのが業界の通例だったが、アウトドア市場の盛り上がりを受けて、そこにも変化が出てきている。東レは、100%植物由来の原料で作ったアウトドアウエアにも適したナイロン生地の発表の場に、「TOS」を選んだ。「アウトドアの合同展に出展するのは今回が初めて」と担当者。サステナビリティ意識の盛り上がりや、信頼・応援できるような企業の商品を選びたいという消費の潮流を受けて、「近年は素材メーカーも対業界のアプローチだけではなく、直接消費者へ発信する必要性が高まっている」。それゆえ、アウトドア好きの一般消費者も来場する「TOS」への出展を決めたのだという。
「TOS」を運営する三栄の竹下充・第4制作局局長に聞く
「TOS」は、アウトドアメディア『ゴーアウト(GO OUT)』を手掛ける出版社、三栄などによる実行委員会で運営されている。「TOS」実行委員でもある三栄の竹下充・第4制作局局長に聞いた。
「『TOS』は消費者向けのマーケットイベントとしてスタートしたが、今回から業界関係者や報道関係者向けのビジネスデーも設けて、対業界向けの発信も強化している。ここ数年、アウトドアレジャーがブーム化している中で、それぞれのブランドのコンセプトやフィロソフィーを改めてしっかり伝えていく必要があると感じたからだ。アウトドア市場が広がり、『人とは違うギアやウエアがほしい』『機能性はもちろん大切だが、ファッション目線でもギアを選びたい』という声が増えている。それを受け、“ガレージブランド”と呼ばれるような、中小のブランドが次々生まれている。日本はモノ作りの技術が高く、金属加工に秀でた下町の鉄工所がギア生産に乗り出すケースもある。日本の職人技術も守られるし、とてもいい流れだと思う」