ファッション業界のサステナビリティを推進する団体「アクト・オン・ファッション(Act on Fashion)」とデザイナーのステラ・マッカートニー(Stella McCartney)、ニューヨーク州のアレッサンドラ・ビアッジ(Alessandra Biaggi)上院議員とアナ・ケルズ(Anna Kelles)下院議員はこのほど、ニューヨーク州の消費者製品安全委員会に業界内のサステナビリティに関する法案「ファッション・サステナビリティ&ソーシャル・アカウンタビリティ・アクト」を提出した。昨年10月にニューヨーク州議会に初めて提出されて以来、業界から多くの支持者を集めてきた法案だ。
同法案は、世界的なファッション都市を抱えるニューヨーク州に、環境汚染および社会的不公正・搾取についての責任を取らせることを求めている。またニューヨークでビジネスをするアパレル・フットウエア企業で年間1億ドル(約114億円)以上の売り上げを計上する場合は「サプライチェーンの詳細や環境・社会への負荷を公表し、それを削減するための目標を掲げること」としている。なお環境負荷の計算は、パリ協定やGHGプロトコル基準に準じる。また原料・素材の詳細に加え、従業員の賃金も公表することを求める。これらに準じない企業は売上高の2%を罰金として課し、それを「環境問題で犠牲になっているニューヨークのコミュニティー向けのプロジェクトに充てる」という。
業界筋によると同法案が通る可能性は極めて低いというが、業界に大きな影響を与えることには違いない。サステナビリティを推進する業界内の女性を讃える「コンシャス・ファッション・キャンペーン」のケリー・バニガン(Kerry Bannigan)発足人は法案について「アパレル・フットウエア企業が本当に責任を持って社会・環境問題に取り組むことへの革新的な一歩になりうる」と話し、政府が関わる取り組みになるからにはきちんとした教育や支援システムが必要だと強調する。
中途半端な法律はさらなる混乱を招きかねないと懸念するサステナビリティの専門家もいるが、(政府による)法規制がほとんどない現状を憂う関係者も多い。ステラ・マッカートニーは、「ファッション業界は環境に最も負荷をかけている業界の一つであるにもかかわらず、取り締まりの欠如が目立つ。自主的なルールやレギュレーションを設けるだけでは限界がある。政府による規制や基準の設置など、ファッション業界へのサポートが必要だ」と話す。
なお、フランスでは循環型エコノミーや廃棄削減を掲げる循環経済法が昨年2月に施行され、今年1月1日付で本格的にスタートした。これにより、政府主導で循環型経済への一歩を踏み出すことになった。