フランス・パリ発「メシカ(MESSIKA)」は、モデルのケイト・モス(Kate Moss)も協業でデザインを手がけるジュエラーだ。エッジの効いたモードなデザインのジュエリーは多くのセレブリティーやモデルらに支持を得ている。クラシックなジュエラーとは一線を引く「メシカ」のクリエイションやビジネスについて、ヴァレリー・メシカ(Valerie Messika)=メシカ社長兼アーティスティックディレクターに話を聞いた。
WWD:「メシカ」を設立した理由と目的は?
ヴァレリー・メシカ=メシカ社長兼アーティスティックディレクター(以下、メシカ):父が宝石商だったこともあり、幼少の頃からダイヤモンドには慣れ親しんできた。父とダイヤモンドに対する情熱を分かち合うことが好きだった。当初は、自分自身のためにジュエリーを作っていたが、友人たちが私の作品を気に入ってくれて、友人たちのためにデザインするようになった。そして2005年に「メシカ」を立ち上げた。ジュエラーはクラシックで高価なジュエリーを制作する一方で、宝石を使わないコスチュームジュエリーのブランドもたくさんある。そのギャップに気づき、日常的に着用できるダイヤモンドジュエリーを作ろうと考えた。ジュエリーとは女性に輝きと喜びを与えるもの。特別な日だけでなく、デニムなどカジュアルな日常の服装に合うダイヤモンドジュエリーを提供するのが「メシカ」だ。それがブランド哲学でもある。
WWD:ブランドのコンセプトは?一番の強みは?
メシカ:私の信条は“レス・イズ・モア”。軽さ、自由、純粋、官能という4つを軸にジュエリーをデザインしている。ダイヤモンドは、エンゲージメントリング用でなく、毎日楽しめるものであるべきだと思った。だから、クールでカジュアル、そして身につけやすいダイヤモンドジュエリーを提供している。 自由で大胆な発想でダイヤモンドを扱えるのは、幸運なことダイヤモンドの本質的な輝きとそれを引き立てるクリーンなデザインを追求している。タイムレスでコンテンポラリー、それにひねりを加えたデザインで、日常的に身につけられる心地よさが重要なポイントだ。2007年に誕生した”ムーヴ”コレクションは、ダイヤモンドに自由を与えたいという思いを反映した代表的なコレクション。ダイヤモンドは、光と戯れ、動くときほど美しい。ゴールドのフレームに収められた3つのダイヤモンドが自由に動き回る様子を表現している。毎年、このコレクションを中心に新しいデザインを考えている。「メシカ」の強みは、マイクロパヴェを含むクラフツマンシップだ。
WWD:デザインのインスピレーション源やこだわりは?
メシカ:私の最大のインスピレーションの源の一つは女性。だから、ミニマル、ロックテイストなどさまざまな女性に似合うものを想像しながらデザインする。
ケイト(・モス)とコラボしたのもそれが理由。彼女のスタイルが「メシカ」にぴったりだと思ったから一緒にハイジュエリーを作ってみたいと思った。旅先で、建築やインテリア、町を歩く人々のスタイルからインスピレーションを得ることもある。ジュエリーが出発点で、コレクションの名前は、それらが完成してから決める。
WWD:エッジの効いたデザインをジュエリーに落とし込むには?
メシカ:ジュエリーのクリエイションの限界に挑戦するのが好きだ。自由で大胆にダイヤモンドを扱えるのは幸運なこと。ハイジュエリー・コレクション“ボーン・トゥ・ビー・ワイルド”では、ノーズピアス、ダイヤモンドマスクなど革新的で大胆な作品をデザインした。最大の挑戦は、ジュエリーとハイジュエリーの両方を、快適で遊び心のあるものにすること。ダイヤモンドネックレスを女性のワードローブの定番にしたいという思いから、19年に”スキニー”コレクションを発表した。その特徴は、比類なきしなやかさで、ゴールドの中にナノスプリングが配置されており、弾力的。捻れたり、巻いたり、曲がったりしても、壊れることなく、元の形に戻るネックレスだ。
WWD:ターゲットは?
メシカ: 18〜77歳までの、時にミステリアスで、大胆で、勇気のある、現代の女性。そして、ロックな一面も持っている。通常は、母親が娘にジュエラーを紹介するが、「メシカ」は娘が母親に紹介したくなるようなジュエリーブランドだ。
WWD:現在何ヵ国で販売しているか?売り上げのトップ3は?
メシカ:75カ国で販売し、50のブティックを含む490の販売拠点がある。売り上げの上位3カ国はアラブ首長国連邦、フランス、アメリカ。
WWD:売れ筋アイテムと中心価格帯は?
メシカ:世界的なベストセラーは“ムーヴ”コレクション。日本での売り上げの半分は、ブランドを代表する“ムーヴ ウノ”と“ムーヴ クラシック”。ベストセラーは“ムーヴ ウノ パヴェ”“ベビームーヴ パヴェ”“ムーヴクラシック パヴェ”のリングとネックレスで、平均価格帯は38万5000円。
WWD:日本に上陸してからの年商の推移は?
メシカ:19年に初のポップアップストアを開催以降、売上高は順調に伸び、大手百貨店との提携も拡大した。コロナ禍では、東京・三越日本橋本店の店舗は1.5カ月クローズせざるを得なかったが、売上高は前年の2.5倍になった。昨年は、伊勢丹新宿本店および阪急うめだ本店内に期間限定ショップをオープン。今年春には、大阪に出店を予定している。
WWD:注力したい市場とその理由は?
メシカ:アジアに注力したい。今年年末には、日本と中国で約15店舗のブティックをオープンする予定だ。
WWD:ラボグロウンダイヤモンドやモアサナイトの存在についてどう思うか?
メシカ:数百万年もかけて自然が作り出したものを、時間をかけずに再現したのが“ラボグロウンダイヤモンド”と“モアサナイト”だ。ラグジュアリーの魔法は、希少性。一方で、実験室のレシピで簡単に生産できるダイヤモンドと同様のもの、やダイヤモンドに近いものは希少性に欠ける。美術品に例えると、1点のオリジナル作品とリトグラフの違いのようなもの。何度でも刷れるリトグラフは、オリジナル作品のような美しく、力強く、価値のあるものではない。