自動車やヘッドホンなどの工業製品の試作品製造を行う日南は、アパレルブランド「リツ(RITSU)」を2022年春夏に始動させた。試作品事業に用いる3Dプリンターを使ったアクセサリーをはじめ、工業製品で培った技術力をアパレルデザインに応用。ジャケットから スカートまで、約25型の商品を提案する。公式ECや百貨店などへのポップアップで販売する予定だ。
ブランドを率いるのは、堀江勝人・日南社長の娘で、現在28歳の堀江りつデザインディレクター。堀江デザインディレクターは工業デザイナーとして同社に入社したが、「高校から夢見ていたアパレルを諦めきれず」、会社をやめて米ニューヨークに留学。パーソンズ美術大学(Parsons School of Design)でファッションを学び、複数ブランドでの研修を経て、帰国後に再入社した。社内を改めて見渡すと、「最新の3Dプリンターがあったり、車のシートの縫製部屋があったりと、ファッションに生かせる技術がたくさんあることに気づき、アパレルプロジェクトを考案した」。普段はクライアントのイメージを具現化する試作品作りがメインで、社名は表に出ない。「でも、もっと多くの人に会社の技術力を知ってほしい。デジタル化が進み、フィジカルな試作事業のニーズが縮小していることを踏まえると、オリジナル企画でビジネスを拡大するのも会社に必要だ。アパレル事業が、そのきっかけになれば」と語る。
ブランドコンセプトは“抽象画に溶け込むような洋服“。ボヘミアンテイストとニューヨークのミックススタイルを組み合わせた“ボーホーシック”を、エレガントに昇華したウエアを提案する。ファーストシーズンは、コットンシフォンを使ったブラウス(税込2万1500円)とスカート(同2万4500円)のセットアップや、オーガニックコットンを用いたリボン付きのプルオーバー(同1万8000円)、7部丈の袖とウエストベルトで女性らしさを出したジャケット(同3万800円)など。さらに3Dプリンターで花に着想した柄を入れ込んだイヤリングとピアス(いずれも税込6380円)もそろえる。デビューに合わせて、アバターにコレクションを着せたイメージムービーも制作した。「アイテムだけでなく、ムービーなどコレクションの見せ方にも技術力が生かせる。アパレルのノウハウを今後もっと積んでいけば、どんな工程に既存のテクノロジーを生かせるかが見えてくるはず。まずは数シーズン継続させたい」。