イタリア政府は、国内での毛皮生産を禁止し、同国に残る10のミンクの毛皮農場を半年以内に閉鎖させる。ヨーロッパでは、オーストリアやベルギー、クロアチア、チェコ、オランダ、ノルウェーなどに続いて毛皮を禁止した16番目の国となる。アメリカでは、ロサンゼルスやサンフランシスコでも毛皮撤廃の動きが進んでいる。
イタリア上院の予算委員会で承認を得た改正案では、ミンク、キツネ、タヌキ、チンチラの飼育が禁止され、2022年6月30日までに全ての毛皮農場が閉鎖される見通しだ。毛皮農家には、補償金として22年の1年間を通して総額300万ユーロ(約3億8400万円)が交付される。
同法案の可決は、毛皮農家の代替ビジネスを提案する動物愛護団体のヒューメイン ソサイエティー インターナショナル(Humane Society International以下、HSI)との継続的な対話のもと行われた。HSIイタリア支部のマルティナ・プルーダ(Martina Pluda)=ディレクターは、「これはイタリアの動物愛護における歴史的な勝利だ。農場の閉鎖は、動物福祉はもちろん、経済、環境、公衆衛生の観点からも明確な理由がある。ファッションのために野生動物を大量に飼育することは、動物と人間の両方にリスクを与え、この残虐な産業に関わる少数派の人々にわずかな経済的利益をもたらすために正当化されてはならないことが同法案の可決によって示された」と話す。
一方で、マーク・オーテン(Mark Oaten)国際毛皮連盟(International Fur Federation)最高経営責任者は、米WWDの取材に対し、「農家は収入を失うし、厳しい規制のなかで行われていたサステナブルな農業の自由が奪われたことは非常に残念だ。政府が動物愛護団体を恐れ毛皮の生産を禁止するなら、近い将来に牛や鳥、豚の養殖も禁止するようになるのだろう」とコメントした。毛皮を支持する人々は、ポリエステルなどの石油から作られる素材を原料とするフェイクファーよりもリアルファーの方がサステナブルだと主張する。
今回イタリア政府は初めてこの問題に対して明確な姿勢を示したが、「プラダ(PRADA)」「ヴェルサーチェ(VERSACE)」「グッチ(GUCCI)」「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」「フルラ(FURLA)」など、多くのイタリアブランドはすでにリアルファーの使用を自主的に禁止している。ケリング(KERING)傘下のブランドのほか、「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」「バーバリー(BURBERRY)」「シャネル(CHANEL)」「オスカー デ ラ レンタ(OSCAR DE LA RENTA)」、直近では「モンクレール(MONCLER)」もサステナビリティへの取り組みの一環として、ファーフリーを宣言している。PETA(国際動物愛護団体)によると、「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」も年内に毛皮の調達をやめ、23-24年秋冬コレクションが毛皮を使用する最後のコレクションになるという。
小売業界では、米百貨店ノードストローム(NORDSTROM)が21年末に毛皮商品の販売停止を発表しており、ニーマン・マーカス・グループ(NEIMAN MARCUS GROUP)も23年までに毛皮商品の販売を中止する方針だ。