ファッション

「我こそはネクストリーダー」‼︎ 業界をけん引したいと意気込む自薦・他薦応募者が熱血プレゼン

 ルミネは「WWDJAPAN」とともに、業界の前進・進化・成熟を考えるプロジェクト「MOVE ON」において、未来のファッション&ビューティ業界をけん引するネクストリーダーを称えるアクションに取り組んでいる。国内外10人のアドバイザーが次世代リーダーを選んでいるが、これに加えて「MOVE ON」は自薦・他薦によるエントリーを募集。「WWDJAPAN」編集部とルミネの次世代リーダーがオンラインプレゼンテーションに参加し、10組の中から3人のネクストリーダーを選出した。ここでは、オンラインプレゼンの様子をお届け。選ばれた3人を含む総計16組のネクストリーダーは、2月14日に発表する。


【エントリーNo.1】
佐藤怜
EBRU代表

■就活の違和感から音楽とアートファッションを「マーブリング」

 佐藤代表は、「音楽からアート・ファッションをコネクトし、ウェルネスを実現する」ために、サウンド・アート・ピースと称するイヤホンを手がける「イヤーマインド(EARMIND)」を立ち上げた。ファッションとアートを同時に学んできた佐藤代表は就職活動の際、ファッション業界にはアートを、アート業界にはファッションを勧められるなど「希望が見出せなかった」結果、起業。2人の仲間と共に「耳の形は異なるのに、好みの音楽も違うのに、個人が最適が選べない」イヤホンに機能性とデザイン性を掛け合わせ、音楽とアート、ファッションをつなげようと試みる。イヤホンは現在、6月のポップアップを目指して音質改善の再改良の真っ只中。4万~8万円程度から一点物まで、アートワーク、シェイプ、サンドタイプのそれぞれからお気に入りの組み合わせを選べるようになっている。「カルチャーは、混じり合うから美しい」を信じ、いろんなものが「マーブリング(混じり合う)」する社会を目指す。

【ルミネの次世代リーダーからのフィードバック】
 「イヤホンで世界を変える」は、考えつかない面白い視点。大きなトレンドはないけれど、皆が気にするコンテンツだからこそ商機がある。テックにも本気。


【エントリーNo.2】
松尾真希
FrankPR代表

■アマゾンで4年連続No.1のサステナブルな革小物

 松尾代表は、ハワイ州立大学でサステナブル開発を学び、「持続的な発展」が世界にとっての最重要課題と認識。サステナビリティはもちろん、バングラディシュのストリートチルドレンやジェンダー不平等などの社会課題をビジネスで解決すべく、2014年にレザーブランドの「ラファエロ(RAFFAELLO)」を立ち上げた。

 「ラファエロ」は、シングルマザーを積極雇用しているバングラディシュの企業などと業務提携。検品では障がい者雇用を促進し、ダイバーシティ&インクルージョンの環境を実現する。商品は、現地で年に一度開かれる犠牲祭に奉納された牛の革を用い、ヨーロッパ式の染色技法などを共同開発。売れ残りや流行に左右されないデザインを良心的な価格で提供することで、「アマゾンのメンズレザー小物部門では、4年連続でナンバーワン」を獲得しているという。今後は、カメラバッグなどコロナ前に検討していた商品開発も進める予定だ。

【ルミネの次世代リーダーからのフィードバック】
 自ら経験した課題感に基づいてエネルギッシュに行動している。今後もブランドとしてのストーリーを大事に、共感の輪を広めて欲しい。


【エントリーNo.3】
Kimiko Nakayama
「バサラ シルク ランジェリー」デザイナー

■「もう一度じぶんの体にウットリ」の下着ブランドが町づくりスタート

 「バサラ シルク ランジェリー(BASARA SILK LINGERIE)」のKimiko Nakayamaデザイナーは、日本の下着ならではの「隠す」や「ボディメイクする」のアプローチに違和感を覚え、「もう一度じぶんの体にウットリする」をコンセプトに、洋服のような感覚で楽しめるランジェリーを提供している。

 過剰生産については「大切に長く着られるものだけを作ること」、流行に囚われ過ぎることについては「自分の個性、価値観を大事にしたスタイルの啓蒙」、そして技術の継承については「縫製は衣料品業界の要。光の当て方を変えて、業界全体で未来につなげなければ」と、デザイナーとして出来ることに取り組む。現在は、かつて「クロエ(CHLOE)」のランジェリーなども手掛けていたのに閉鎖してしまった秋田県の工場を取得し、再建計画を立案中だ。ショールームを併設したり、縫製体験が楽しめたりすることで「クリーンで、クリエイティブ。若者が『働きたい』と思える工場」になれば、と願う。

【ルミネの次世代リーダーからのフィードバック】
 ご自身の哲学、世界観がしっかりしている。デザイナーによる工場再建や町づくりが成功したら、後に続く人も増えるのではないか?


【エントリーNo.4】
天沼聰
エアークローゼット社長兼CEO

■ワクワクを届けるサブスクレンタルは300人のスタイリストの育成にも注力

 「エアクローゼット(AIR CLOSET)」を国内最大級のアパレル・レンタル・プラットフォームに押し上げた天沼聰社長兼CEOは、「“ワクワク”が、空気のように当たり前になる世界へ」をビジョンに掲げている。「億劫とワクワクでは、同じ時間の価値は圧倒的に異なる」と話す天沼社長兼CEOは、労働や生活など、子育てママの環境が大きく変化していることに着目。「自分の時間の使い方が難しくなる中、感動する洋服との出合いが作れたらワクワクする」と考え、時短ながら一期一会のサプライズも提供できるサブスクレンタルを発案。これまで300万回以上のコーディネート提案をしてきた、300人のスタイリストが選んだ毎月3着の洋服を60万人以上の女性に届けている。

 300人のスタイリストの育成にも熱心だ。仕組みを整え、1カ月以上を費やしてスタイリング提案ができるように教育。「論理的に説明できるように」と骨格やカラー診断、文章力の向上についても指導する。優秀なスタイリストは毎月表彰しながら、ユーザーからの評価が低いスタイリストには個別で指導。日本パーソナルスタイリング振興協会を設け、スタイリストという仕事の地位向上にも貢献する。

【ルミネの次世代リーダーからのフィードバック】
 「ファッションを盛り上げたい」の思いが強い。レンタルは、ルミネのような小売を揺るがすビジネスでありながら、「一緒に仕事してみたい」と思わせてくれた。


【エントリーNo.5】
近藤晃裕
デザイナー/写真家

■「お金を一旦なくして」モノが主役の活動を模索

 文化服装学院などでファッションを学び、アタッチメントでは「カズユキ クマガイ(KAZUYUKI KUMAGAI)」のデザイナーを6年半務めた近藤晃裕デザイナーは、現在は独立。アパレルブランドのルックブックなどを手掛けてきた写真でも、年内の展覧会などを企画しているという。

 そんな近藤デザイナー/写真家が昨年の夏くらいから考えているのは、「お金を一旦なくして」「究極のことができないか?」。作った商品の対価を、金銭以外の形で受け取ることができないか?と真剣に考えている。それでは「お金が出ていく一方」なのは、分かっている。それでも「ファッションの力を信じているから、ファッションで動く感情で周りを動かしたい」。それは、企業の社会活動などにも繋がるのでは?と漠然とではあるが考えている。「モノができた後のマーケティング戦略に重きを置いている業界の中、あくまでもプロダクト・ファースト、モノを主役に置いていきたい。全員でモノづくりを考え、その純度が失われないように。そんな活動が浸透すると、ファッション業界の見え方も変わるのではないか?」との疑問を投げかけた。

【ルミネの次世代リーダーからのフィードバック】
 具体的なアクションはこれからだと思うし、「ビジネスとして成功するの?」と聞かれたら難しいかもしれない。でも、長年モノに向き合っていた人が、そんな発想を抱くのは本当に興味深い。


【エントリーNo.6】
喜多泰之
MILKBOTTLE SHAKERSブランディング・ディレクター兼共同創業者

■「エコバッグを普及させる仕組みがナンセンスでいいの?」からスタート

 アーバンリサーチでバイヤーやPRなどを歴任した喜多泰之MILKBOTTLE SHAKERSブランディング・ディレクター兼共同創業者は2020年9月、「LOOPACH(ルーパック)」をローンチした。このブランド名でもオリジナルのエコバッグを制作・販売しているが、同時に他社には会社のエコバッグに洗える電子タグを内蔵した「ルーパック」のタグを縫い付けるなどを推奨。買い物のたびに店頭の端末機で電子タグを読み取るとポイントを付与する仕組みで、エコバッグの更なる普及を推進する。

 サステナブルなアクションを進めようとする各社が数年前、これまでの洋服同様にエコバッグを大量生産し始めたことに対する違和感があった。「エコバッグを普及させる仕組みが、ナンセンスでいいのか?」と考え、みんなが、もっとポジティブに楽しめるシステムを構築。各店舗のイニシャルコストは数万円以内、付与するポイントも1回につき1~4円相当だから、エコバッグの制作や、レジ袋や紙袋の導入相当かそれ以下の金額でサステナブルなアクションに取り組める。現在の登録者数は数百とまだまだ少ないが、年間1000店舗ペースで加盟店が増え、大手スーパーやコンビニでも「『ルーパック』をつけているバッグが当たり前」の時代になれば、と夢は大きい。

【ルミネの次世代リーダーからのフィードバック】
 サステナブルな取り組みには注目しているが、だからこそ「将来の展望」に独自性が欲しい。明るい人柄の喜多さんならではの、「ルーパック」じゃないとできない取り組みがあるはず。


【エントリーNo.7】
中森友喜
NOSE SHOP社長

■次の世代のための「中継ぎリーダー」として、「香水砂漠」で香りの文化

 ニッチフレグランスの専門店「ノーズショップ(NOSE SHOP)」は3月に7店舗目をオープンする。扱うのは、1mlがなんと2万円という超高級品を筆頭とする「ファッション・フレグランスへのカウンターカルチャー」のような商品。普及していないからこそ「香水砂漠」と揶揄される日本では、「フラグメント(破片の偏在)からコンパクション(圧縮)」の考え方が必要と感じ、「(小さな魚が集まって大きな魚群を描いた)スイミー」のように、ニッチフレグランスを「ハイトラフィックな場所で多店舗展開」する。接客はセミセルフ、香水の販売において一般的な100mlの容量にもこだわらず、未知との出合いを楽しむ“香水ガチャ”を設置するなど、新しい売り方にも挑戦中だ。

 「クリエイターと、上質な鑑賞者(=ユーザー)が育つ仕組みを作りたい」と、3月にはオリジナルブランドをスタート予定だ。「ノーズショップ」が取り扱うフレグランスより手頃な価格で、ルームフレグランスや柔軟剤など「香りを軸にした、さまざまなプロダクトを開発する」。「水資源が豊富な日本では、(体を洗う頻度が少なかったからこそ、体臭を覆う香水の文化が育った)欧米と同じように香りが発展するとは思っていない。それでも、子どもの頃から鼻が鍛えられたら、全然違う世界が見えてくるのでは?」と話す。自身は、「次の世代のための“捨て駒”でいい」。香水文化を啓蒙する「中継ぎリーダー」を自認する。

【ルミネの次世代リーダーからのフィードバック】
 個々の取り組みが面白く、ルミネとしても応援している。ただ、次の「オリジナルブランドを販売」という展開自体は一般的なので、オリジナルブランドの面白さ、次なるアクションにも期待。


【エントリーNo.8】
荻田芳宏
STANDING OVATION代表

■クローゼットの中身までAI学習手持ちとの最適コーデをOMOで叶える

 荻田芳宏STANDING OVATION代表は、「クローゼットを持ち歩くファッション体験を創る」を目指し、アプリの「XZ」を手がけている。手持ちの洋服を生かす、サステナブルでOMOな買い物体験に寄り添う「XZ」は、ユーザーによる写真撮影などで把握した手持ちの洋服を分析。ECやリアル店舗で出合った洋服と手持ちのコーディネートを提案したり、反対にクローゼットの中の洋服と合わせられる商品をECなどで見つけることをサポートしたりで、買い物の失敗を無くす。AIは、ユーザーによる写真や、許可をもらったブランドのEC画像をディープラーニングしてコーディネート提案の精度を高めている。アプリの現在のダウンロード数は170万、クローゼットに関する情報は3500万。サービス導入企業には購入に到るまでのコンバージョン率が2倍以上になったブランドもある。

 クローゼットの中身については着用頻度まで分析し、リユースや買い取りへの動線さえつなぐ。今後は、店頭でのPOSデータからクリーニングした洋服まで、より多くの洋服をデジタルの世界に取り込むことで精度のアップはもちろん、洋服のライフサイクルを支えたい考えだ。同時にユーザーの3Dデータを取得して、オンライン試着からメタバースでの自己表現まで、「XZ」内のビッグデータのさまざまな活用を模索することで、ファッション業界の多様なビジネスも後押ししたい考えだ。

【ルミネの次世代リーダーからのフィードバック】
 左脳的なビジネス構築が素晴らしい。。ファッションが好きじゃない方のニーズもあるだろう。「選ぶ楽しみ」や「ワクワク」が「XZ」の中でもっと表現されると嬉しい。


【エントリーNo.9】
深谷玲人
DeepValley社長

 ■テックでモノづくりを効率化本来の業務に集中できる環境を

 ワールドやマークスタイラーなどのアパレル企業で経験を積んだ深谷玲人DeepValley社長は、いまだにアナログな業務も少なくないモノづくりの現場をデジタルサービスの「AYATORI」でサポートする。「AYATORI」は、縫製仕様書などの情報を効率に蓄積するデータ管理機能と、社内外の人との共有機能、そしてコミュニケーションさえ「AYATORI」内で完結するタスクコメント機能などを実装し、手頃な利用料と簡単な操作、現在は深谷代表が24時間/365日対応する(!!)という手厚いサポートなどで、ブランド運営に必要なデータをデジタルで一元管理する。導入ブランドは、1ブランド平均で毎月150時間の業務時間を削減している。

 今後は製販の予実管理までを担い、データ・ドリブンなMD経営をサポート。ブランド運営を効率化することで、本当に良いものを作れる環境や、それをじっくり接客して販売できる余裕などが捻出できる業界になれば、との願いを込めている。MD計画の社内共有機能については、販売員が多数働くルミネの次世代リーダーも高い関心を示した。

【ルミネの次世代リーダーからのフィードバック】
 華やかじゃないバックオフィスの業務改善で、アパレルの根幹に切り込もうとしている。でも、ご本人の24時間サポートは、ちょっと心配!!


【エントリーNo.10】
神谷将太
三越伊勢丹「リ・スタイル」バイヤー

■「ファッション界のコンソーシアム」で、持続可能性と高揚感を提供

 今なお好敵手でもある伊勢丹新宿本店と阪急うめだ本店のほか、セレクトショップまで参画したサステナブルなアクションが3月23日、スタートする。神谷将太バイヤーは、三越伊勢丹と阪急阪神百貨店、岩田屋三越、エスティーカンパニー、ファッションコアミッドウエスト、そして佐藤繊維(GEA)の6社による「デニム de ミライ」の発起人だ。神谷バイヤーは、引き取り手がいなかった「リーバイス」501のデニム20tを目の当たりにして、「なんとかしたい」と思い、「ほかの店舗やブランドとの取り組み」を決意。商品については、50以上のブランドに150以上のアップサイクルを依頼。販売については、上述6社がそれぞれの視点で150以上の商品から買い付け、全国津々浦々で販売する。「他人の企画には乗っからない」という業界の風土を払拭し、仲間を増やし、そこで生まれる掛け算が発信できれば、業界を超えたメッセージにつながると考える。

 その後目指すのは、「ファッション業界のコンソーシアム(互いに力を合わせて目的に達しようとする組織や人の集団)」。さらなる参画ブランドや小売店を募り、「インクルーシブなつながり」と「独自性の創出」の両輪で、社会課題に向き合う持続可能性のある関係性を構築しながら、ファッションならではの高揚感も提案する。

【ルミネの次世代リーダーからのフィードバック】
 今はまだ1つのプロジェクトだが、他社を巻き込む強さは圧倒的。業界を変えるかもしれない「人間力」を感じる。私たちも何か一緒に取り組みたい。


【INFORMATION】

 3月2日には東京・新宿のルミネゼロで、「Next Generations Forum」を開催します。選出されたネクストリーダーを称えると共に、アドバイザーも交え、ファッションやビューティの未来やカルチャー、サステナビリティなどをテーマにトークセッションを行います。ファッション&ビューティ業界のプロフェッショナルはもちろん、一般生活者の方も楽しんでいただける内容となっており、LIVE配信も行います。

問い合わせ先
ルミネ代表電話
03-5334-0550