ここ数年、ラグジュアリーブランドでハンドバッグの値上げが続いている。中でもその幅が大きいのは「シャネル(CHANEL)」と「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」だろう。
例えば「シャネル」の“ミディアム クラシック フラップ(Medium Classic Flap)”は、2021年1月には6800ドル(約78万円)だったが、同年7月には7800ドル(約89万円)に値上げされ、22年2月現在では8800ドル(約101万円)となっている。米投資銀行ジェフリーズ・グループ(Jefferies Group)の調べによれば、同モデルの米国内での価格は19年11月から約60%値上がりしているという。100万円の大台に乗ると、「エルメス(HERMES)」の人気モデル“バーキン(Birkin)”の最低価格に近づいてくる。
また、より大きな「シャネル」の“2.55”モデルは21年6月には7400ドル(約85万円)だったが、現在は9500ドル(約109万円)だ。“ボーイ シャネル(Boy Chanel)”“ガブリエル ドゥ シャネル(Gabrielle de Chanel)”“シャネル 19(Chanel 19)”など、その他のアイコニックなモデルも10〜15%の値上がりとなっている。
競売会社サザビーズ(SOTHEBY'S)によれば、「シャネル」は新型コロナウイルスの感染拡大が始まった20年3月から現在に至るまで4回の価格改定を行っているほか、顧客が年間に購入できるバッグの個数を制限して“エクスクルーシブ感”を高めているという。しかし、この個数制限は国や都市によって異なるため一概にはいえないようだ。
「シャネル」の広報担当者は、値上げは為替相場や生産コストの変動に対応するため、また商品が世界中でおおよそ同じ価格になるよう調整するためとコメントしている。
「ルイ・ヴィトン」でも、同様にクラシックなモデルの値上げが続いている。肩に掛けられる小型バッグ“ポシェット・アクセソワール(Pochette Accessories)”は、21年前半には630ドル(約7万円)だったが、現在では1050ドル(約12万円)と約66%の値上げとなっている。
生産コストや人件費の上昇のため、ブランドが値上げをするのは珍しいことではない。21年の場合は、20年にコロナ禍の影響によって観光客が激減したこと、特に中国人観光客による売り上げの大幅な減少を補填するために行われたケースもあるだろう。いずれにせよ、値上げによって顧客が離れている様子はあまり見られず、多くのラグジュアリーブランドは順調に業績を伸ばしている。
例えば、「ルイ・ヴィトン」を擁するLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)の21年12月通期決算は、売上高が前期比43.8%増の642億1500万ユーロ(約8兆4121億円)、営業利益は倍以上(同115.1%増)の171億5500万ユーロ(約2兆2473億円)、純利益は約2.5倍(同155.9%増)の120億3600万ユーロ(約1兆5767億円)と増収増益。19年比でも売上高は19.6%増、営業利益は52.1%増、純利益は67.8%増とコロナ禍以前を上回る結果となった。