ファッションの生産現場に身を置き出合ったのが、“ありボディ”という業界用語だ。価格を抑え、多くの人に商品を提供したいとき、この“ありボディ”というキーワードはよく出てくる。
これは、商社や大手ブランドが積んでいる、「すでにある」「すぐに出荷可能」な在庫のことだ。ユニホームやアーティストのライブTシャツなどは、素材やシルエットにはこだわらず、オリジナルのプリントなどをのせることで差別化しつつ、スピーディに手頃な価格で販売することが多い。過去に部活やサークルで「チームTを作ろう!」なんて盛り上がった時、なんらかのカタログからベースとなる洋服を選んだ記憶がある人も多いだろう。あれが、業界用語でいう”ありボディ”だ。
この“ありボディ”は、一気に数百枚も注文できるし、最近は1枚でもオーダーできる。専門知識がなくても洋服づくりに参戦できるのは、大きなメリットだ。これまでは“ありボディ”を使うと、業界関係者からは「アマチュアだ」や「こだわりがない」と思われてきたかもしれないが、最近は、気にならなくなった。ただ、数年前まではサステナブルな“ありボディ”なんてほとんどなく、長年、アンサステナブルなアイテムだった。
ところが最近は、サステナブルな”ありボディ界の新生児”が続々生まれている。例えば豊島の「オーガビッツ(ORGABITS)」は、100%オーガニックコットンの“ありボディ”。去年は人気で欠品状態が続き、“ありボディ”じゃなくなったくらいだ(笑)。現在は、その上をいく品質の「トゥルーコットン(TRUECOTTON)」も注目を集めている。豊島は再生ポリや100%再生可能な生分解性素材のTシャツなどに熱心で、「パスカルマリエデマレ(PASCAL MARIE DESMARAIS)」も頻繁に取り入れている。
こうした商材が人気なのは、人々が“ありボディ”さえ「安かろう悪かろう」ではなくなってきているからだろう。私がさらに期待しているのは、今年発売するという「オーガビッツ」の“ありボディ”の新製品、ロンTだ。100%再生可能な生分解性素材で作られる「タビタリウム(TAVITALIUM)」のロンTの“ありボディ”も発売になった。 ストリートのマストアイテムとして欠かせないロンTは今まで、サステナブルに作ることが難しかった。サステナブルな“ありボディ”なんて、需要がなさすぎて存在しなかったのだ。それがTシャツの成功により、市民権を得たのであろう。今後の需要に注目だ。
流通しやすい”ありボディ”が素材から変わり始めていることへの期待は大きい。「サステナブルな商品=高額」の考えも、少しづつ変化するのではないだろうか?