ファッション

「応援購入」が彩る世界を目指し、“人”と向き合う女性リーダー【ネクストリーダー2022】

 “アタラシイものや体験の応援購入サービス”のクラウドファンディングサイト「マクアケ(MAKUAKE)」は2021年9月期、重要経営指標である「応援購入総額」(クラウドファウンディングで集まった資金の総額)が前期比46.9%増の215億円に達した。2013年の創業から順調な成長を続けるマクアケの共同創業者の一人で、30代の若さで同社をけん引するのが坊垣佳奈取締役だ。彼女が追い求めるリーダー像と、その眼差しの先にある「プロジェクトへの『共感』を通じた、新しい消費文化」について聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):「応援消費」の意義とは。

坊垣佳奈マクアケ取締役:クラウドファンディングは東日本大震災を契機に“寄付”として広まったが、この認識を一歩進めるため、弊社のサービスのありようを「応援購入」と呼ぶことにした。ゆくゆくはモノやサービスへの「共感」を軸に、消費のあり方そのものを変えたいと考えている。企業は今、これまでの利益追求型の経営から、環境や人権問題と向き合い、持続可能な経営に舵を切ろうとしている。企業淘汰も進むだろうが、われわれは「応援購入」の普及を通じて「生まれるべきものが生まれ 広がるべきものが広がり 残るべきものが残る」(同社の理念)世界を作る。「マクアケ」では、プロジェクトに共感する人やお金が先に集まり、無駄のない数だけモノを作って届ける。懐が潤沢な大企業がプロモーションを打ち、(販売店の)棚を確保し、大量の商品を売りさばく商いとは違う。ここでは大資本も中小企業も、個人も対等。主役は消費者であり、作り手のこだわりや背景に納得してモノを選ぶ世界。これを新しい消費の形として普及させたい。

WWD:2020年からビームスと提携している。

坊垣:新商品のテストマーケティングや未来人材の発掘にご活用いただいている。歴史と規模のある企業ほど、過去の成功体験や既成概念から離れ、新しい価値を生み出すことが難しくなる。そういった状況を打破する上で、「マクアケ」は一つの武器になる。ただ、(ビームスとの)協業の目的はここに止まらない。ファッション業界の最重要課題は廃棄だ。例えば、「この商品はピンクが欲しい人が500人いる」ということが事前に分かれば、その数だけ作れば余剰在庫が出ない。このようなスキームが業界の主流になるのはまだ先の話。だが、ビームスさんとはそんなことまで見据えた上で手を取り合った。

WWD:坊垣さんは女性リーダーとしても注目されている。

坊垣:経営者を目指す女性がいれば、彼女たちを勇気づける存在でいたい。ただ、「リーダーには女性を」「いや、男性だ」という極端な議論はしたくない。組織のさまざまな意思決定の場において、男女がバランスよく存在することが重要だ。これは私見であり、あくまで大まかな傾向の話ではあるが、男女で仕事における資質や適性は違う。男性はクリエイティブに物事をイメージすることが得意。一方、女性は現実をしっかり認識し、目標を着実に実現に結びつける力がある。それに対する責任感も強い。だから、「ここは思い切って女性に任せる」というような、うまく性差を「活用する」ことを考えてもいいかもしれない。

 年齢に関してもそうだ。ベテランだけで構成する組織より、若い人の視点がある方がよりフラットで適切な判断ができる。年次が上がってマネジメントする範囲が広がれば、現場感覚は失われていく。だったら現場のことをよく知っている若手に頼るべきだ。役職や年次に関係なく、フラットに声を聞ける環境を作っている。一番大事なのは社員一人一人の「個」に目を向け、長所や意思を尊重すること。社員1人につき、月に最低1回は対話の場を持つことを徹底している。

WWD:自身をどんなリーダーだと分析するか。

坊垣:周りからは「お母さんみたい」、と。人をよく観察している自覚はあって、毎日会っている社員の微妙な変化に気付くことが多い。「なんか元気がないな」と思うと、プライベートに悩みを抱えていたりとか。人間は「仕事だから」「プライベートだから」と簡単には割り切れない。結婚した今も、部下の恋愛相談に乗ることはよくある。仕事のことだけでなく、「人」として相談に乗れるリーダーでいたい。あとは、「たまに抜けてるね」とも(笑)。これは隠そうとも、さらけ出そうとも思わない。常に自然体でいたい。

WWD:創業期と今とでは、リーダーとして求められることは変わったか。

坊垣:これまでは自社のことだけに集中してきたが、社外の若手経営者の会議などに出席する機会も増え、社会において自社が果たすべき役割や存在意義を考えるようになった。専門外の知識もどんどんインプットしている。毎日同じことは一つもないし、学ぶばかりの日々だ。

 折れずいられるのは、20代の頃にがむしゃらに頑張った経験が基盤になっているからだと思う。新卒で入社したサイバーエージェントでは、口コミ関連事業の子会社の立ち上げに参画し、まさに死に物狂いだった。ウェブサービスやエンジニアリングの知識がろくにないのに、外注先へシステムの仕様書を書くこともあった。世の中の新卒で一番忙しかったんじゃないか、と思っている。

 このときに、誰かの教えを待ち、指示されて動くのではなく、問題に対して自分なりの仮説立てて立ち向かうことを学んだ。そして「何とかなる」の精神を持ち続けると、結果がついてくることも。今は、「社会において何を成し遂げたいのか」という経営者の意志がますます重要な世の中。それはサービスや商品を通じて世の中に伝わっていくものだし、意志があるから仲間を巻き込める。私も「マクアケ」のサービスを通じて本気で世の中をよくしたいと思っているから、これからも自信を持って突き進んでいく。


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