資生堂は2月9日、プロフェッショナル事業をヘンケル社に123億円で売却することを発表した。その背景には2021年が初年度の中期経営計画「WIN 2023 and Beyond」に基づいた“スキンビューティーカンパニー”の基盤を盤石にするための事業ポートフォリオの再構築がある。21年にはヘアケア「ツバキ(TSUBAKI)」などを扱う日用品事業、「ベアミネラル(BAREMINERALS)」など3つのプレステージメイクブランド、アジア地域などで展開する「ジーエー(ZA)」「ピュアマイルド(PURE&MILD)」を売却し、「ドルチェ&ガッバーナ ビューティ(DOLCE&GABBANA BEAUTY)」はグローバルライセンス契約を解消した。事業規模2000億円強のトランスフォーメーションを短期で実行している。
スキンケアを中心とした事業構造の変革により、21年12月期連結決算では主力の「シセイドウ(SHISEIDO)」の売上高が前期比15%増、「クレ・ド・ポー ボーテ(CLE DE PEAU BEAUTE))が同21%増、「アネッサ」が同10%増など軒並み好調で、スキンケアブランド全体では同10%増、スキンケア比率は64%まで高まった。一方、プロフェッショナル事業も同23.4%増の158億円と好調だったものの「ヘアカラーの需要は高いが、当社が持っているスキンケアビューティの分野とは異なるもの。全体のチャネルでは優先順位が低い事業(資生堂グループ全体の中で売り上げ構成比は1.5%)であり、単独で進めていくより信頼できる相手がいるならばと契約に至った」と今回の売却について魚谷雅彦・資生堂社長CEOは述べている。
グローバル企業として豊富な実績を持つヘンケル社グループと、資生堂のプロフェッショナル事業が統合することで、グローバルな展開力が増すことは間違いない。では、日本市場においてはどうだろうか。
今回の売却で特徴的なのが、主力ブランドの「資生堂プロフェッショナル(SHISEIDO PROFESSIONAL)」は、ヘンケル社に商標権の使用をライセンスすることだ。ヘアサロン業界には、美容師には広く知られている一方で、一般消費者の間では知名度が低い、というブランド・メーカーも多々ある。その中で圧倒的な知名度を誇る“資生堂”を冠するブランドは、それだけで差別化ができており、消費者に安心感を与えることができる。
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