ラグジュアリーからセレクト、ライフスタイルまで幅広く網羅し、地域住民の生活に根差しているのが玉川高島屋S・Cだ。コロナ禍で海外に出られない富裕層や、都心に出るのを避けた男性や若い層の購買が継続している。東神開発の森脇公一・営業本部玉川事業部第1営業グループ グループマネージャーに聞いた。
WWD:2021年7〜12月を振り返ると?
森脇:緊急事態宣言が出ていたので7〜9月は厳しかったが、10〜12月は19年が消費税の増税による影響受けた19年度対比でも、20年度対比でも売り上げが大幅にアップした。7〜12月では19年度対比で6.0%減、20年度対比で2.8%増だった。
WWD:好調カテゴリーは?
森脇:着物や毛皮など、オケージョン需要が復活してきた。前年はコロナで自粛せざるを得なかったが、重要なライフイベントは別物というムードになっている。「エポカ ザ ショップ(EPOCA THE SHOP)」などのエレガンス系のオケージョンに使えるドレスがそろっているところにお客さまが戻ってきた。また、「シャネル(CHANEL)」「ロエベ(LOEWE)」などの特選は引き続き好調。コロナ禍以前はなかなか見られなかった若いお客さまが、引き続き特選で買い物をしている。ゴルフウエアの好調も継続している。
WWD:特に好調だったショップは?
森脇:家の中で過ごしたい人や、アウトドアを楽しみたい人など、この下期はいろいろなシーンが生活の中に戻ってきた。そういう多様なニーズに対応できていたのが「エストネーション(ESTNATION)」。お出掛け用のウエアから、アスレジャー、カジュアルなものまで、オリジナルでそろっておりお客さまの支持を得た。そのお客さまが「モンクレール(MONCLER)」や「ヘルノ(HERNO)」などのダウンコートも買ったので、客単価も高く、好調だった。コロナ禍の影響で型数や生産数を絞るショップも多かったが、「ウィム ガゼット(WHIM GAZETTE)」は商品をしっかり仕込んでおり、この1年、かなり好調。玉川のマーケットに合わせた販売員体制が奏功しており、長谷川京子さんとのコラボレーションもうまく当たって、新しいお客さまをつかんだ。玉川には毎日のように来店される地域のお客さまもおり、そういう人にとっては顔と名前が一致することがとても大事。「エルベシャプリエ(HERVE CHAPELIER)」もそういった顧客特性にマッチした接客スタイルを地道に実施することでお客さまの支持を得ている。また、コロナ禍1年目のホーム系の需要の反動が2年目になって出る中、「マディ(MADU)」はずっと好調水準を維持。季節商材を早めに見せて仕掛けることで、若いお客さまとの接点をうまく保っている。家の中での暮らしを良くしていくために、「マディ」に行こうみたいな流れができている。ゴルフでは「パーリーゲイツ(PEARLY GATES)」や「ブリーフィング ゴルフ(BRIEFING GOLF)」「オブシディアン(OBSIDIAN)」など。フレグランスの「ディプティック(DIPTYQUE)」は今や半分が男性のお客さまで、引き続き好調。3月にオープンした「オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー(OFFICINE UNIVERSELLE BULY)」もホリデーシーズンのギフトで賑わった。
WWD:館としての取り組みで効果的だったものは?
森脇:8月末から9月の頭の来店を促すため、タカシマヤカードのデータから、百貨店のコスメ売り場を利用している44歳以下のお客さまが購買する専門店のファッションはどこかを抽出し、その上位20ブランドで期間中に買い物をした人に、コスメ売り場でもらえるサンプル引換券を配布した。百貨店のコスメ売り場でも1万円の購入で1000円分、2万円で2000円分と、該当する20ブランドで使えるファッション券を渡して相互送客にトライしたところ、双方にとって新客を獲得する機会になり、好評だった。タカシマヤカードをフックにした送客系の販促は今後重点的にやっていきたい。また、パンプスなどの靴のショップを盛り上げるべく、10月にリシューズフェアを開催した。不要になった靴を持参されたお客さまに、SC内のシューズショップや百貨店の靴売り場で5000円購入ごとに1枚使える500円クーポンと交換した結果、ブーツなど相当数の靴が集まり、お客さまからも好評だった。回収した靴は売却し、その一部を団体支援の基金に寄付するといった循環性を持たせており、秋にはアウターの回収イベントも実施する予定だ。
WWD:今後の計画は?
森脇:3月末に本館1階に「ドゥロワー(DRAWER)」がオープン予定だ。ハイエイジの層まで、足元がみんなスニーカーになっており、劇的にスタイリングが変わってきている。しかし、そのスニーカーをしっかり提案できる売り場が、今SC内に足りないので、そこを解決したい。この足元の変化の影響で、いずれはウエアのスタイリングも変わっていくだろうと見ている。また、玉川の場合、“買う”だけの場所ではなく、生活の拠点であるべきだと考えている。「ショッピングセンター」ではなく、「コミュニティーセンター」としてお客さまや出店者との関係性を深めていきたい。