ブルガリ ジャパンは毎年12月、さまざまな分野で活躍する女性をたたえる「ブルガリ アウローラ アワード(BVLGARI AVRORA AWARDS 以下、アウローラ)」のイベントを華々しく開催している。昨年で5回目を迎えた同賞の“アウローラ”とは、ローマ神話で“暁の女神”を意味し、文化、スポーツ、社会貢献などの分野でインスピレーションを与える女性に贈られるものだ。毎年同賞の授賞式のために来日するジャン・クリストフ・ババン(Jean Christophe Babin)=ブルガリ グループ 最高経営責任者(CEO)だが、今年は、コロナ禍のため来日できなかった。同CEOに「アウローラ」をスタートした理由や、同賞に込めた思い、そして、コロナ禍におけるビジネスについて聞いた。
WWD:「アウローラ」を2016年にスタートした理由と目的は?
ジャン・クリストフ・ババン=ブルガリグループCEO(以下、ババン):「ブルガリ」のブランドとしての成功は女性によるものが大きい。われわれは、女性なくして世界的なラグジュアリーの象徴かつ羨望の的のジュエラーの一つになることはできなかったはずだ。だから、女性たちに捧げる賞を作りたかった。ジュエリーだけでなく、ウオッチやアクセサリー、フレグランスなどのインスピレーションの始まりは女性から。「アウローラ」は女性が持つ注目されるべき隠れた才能にフォーカスし、その声を伝えるのが目的だ。
WWD:このイベントは6年にわたり開催されてきた。この6年間の変化についてどのように分析するか?
ババン:男性のライフスタイルよりも女性のライフスタイルの方が早いスピードで変化している。今日の女性は自分自身の才能を信じて発揮することにより、社会的にますます重要な役割を果たすようになった。自分の人生を動かすエンジンそのものになっている。これが、この賞を誇りに思う理由だ。「アウローラ」は、女性のありのままの姿を讃えて、それぞれの女性が持つ夢の実現に導く賞だと思う。この賞を受賞することにより、夢が明確になり、それを実現する決意になるだろう。
WWD:幾つかの企業が女性のエンパワーメントに関する賞を設けているが、「アウローラ」はそれらとどのように違うか?
ババン:“卓越性”を重視している点。「ブルガリ」は、世界的なトップジュエラーとして、日々、“卓越性”を実現するために尽力している。宝石や貴金属といった材料から、オリジナリティー溢れるクリエイション、世界中の店舗やさまざまな方法による顧客へのサービスまで、“卓越”していることが重要。「アウローラ」も同様に、参加する女性がそれぞれの才能を通して世界に卓越した作品を届ける決心をする場なのだ。歌でも、建築でも、アートでも、“卓越”したものを作り出す方法を知っている、そんな女性に贈られるのが「アウローラ」だ。
デジタルはターゲットとの需要なタッチポイント
WWD:コロナ禍におけるビジネス状況は?好調の市場とその理由は?
ババン:パンデミックをもたらすウイルスとの戦いで世界は一致団結した。しかも渡航制限により世界はある意味、小さくなったと言えるかもしれない。われわれのようなラグジュアリーブランドは、より、ローカルな戦略でビジネスをするようになった。そして、経済全体が徐々に回復しつつある。コロナ禍で、デジタルが重要な後押しになった。ECは、ロックダウンなど危機的な状況で大きな味方となったが、状況に関わらず重要なビジネスチャネルになっている。優れた業績を残すことを忘れず、デジタルで、顧客によりパーソナライズされたサービスをどう届けるかというのが興味深いチャレンジだ。
WWD:コロナ禍における富裕層市場は?どのようなサービスを提供しているか?
ババン:ラグジュアリービジネスは近年、デジタルとの相互作用により、デジタルに明るい若い世代を市場の中心に押し上げた。EC顧客の消費動向を研究し、好みに合わせた商品を提供することにより完璧なショッピング体験を提供することができる。「ブルガリ」にとってデジタルは、理想的なターゲットと接触できる刺激的で有用なチャネルであり、SNS上でユーザーが発信する価値や経験に基づいたマーケティング戦略が可能になる。また、3Dデジタル技術を駆使して、メタバース上で商品を存分に楽しめるユニークな体験を提供することも課題だ。
WWD:コロナは一部地域で落ち着きつつあるが、この先行きの見えない状況における戦略は?
ババン:世界情勢は常に変化している。長期的に危機的状況にある地域はもはやない。実店舗とデジタルの融合により消費者のニーズに応えるのが理想的な戦略だ。われわれは決して立ち止まることなく、状況を考慮に入れながら、コレクションの発表や店舗のオープン計画を進めている。昨年秋には、フランス・パリのヴァンドーム広場に新しい旗艦店をオープンし、ジュエラーの聖地である同広場における存在感がアップした。12月には、「ブルガリ ホテル パリ(BVLGARI HOTEL PARIS)」をオープンした。コロナ禍が落ち着けば、国際的なラグジュアリーショッピングの拠点であるパリで、多くの宿泊客を迎える特別な存在になると信じている。「ブルガリ」ならではの、細部まで気を配ったサービスの質の高さを感じてもらえるはずだ。このように、われわれは国別に具体的な戦略を立てて、計画を実行している。ECによる販売は、ブティックにおけるサービスや、ブルガリの世界観を再現することはできないが、実店舗とECは補完し合うもの。コロナ禍による制約がある地域では、ECやSNSをを通して顧客とタッチポイントを作り販売することが重要だ。