直線型から循環型へ。社会や経済の仕組みの変革が進む中で、アパレルメーカーもこれまでの「作って売ったらおしまい」から、不要になった衣料のリサイクルや廃棄までを考慮したデザインが求められ始めている。それと呼応するように、「リサイクルしやすい」素材や「たい肥化」しやすい素材が注目を集めている。完璧な素材はないが、日進月歩で進化するアパレル向けの素材最前線はどうなっているのか。どのようなアプローチで素材開発が進んでいるのか。世界の素材の潮流を知るマテリアルコネクションの東京の吉川久美子代表取締役にアパレル向けのサステナブル素材の最新動向を11のキーワードで分類してもらい、具体事例を聞いた。
【KEY WORD8】
リサイクルしやすい素材
単一材料であるか、リサイクル前に機械的または化学的分離を必要とせずに容易にリサイクルできる材料。
拠点:ベルギー
組成・製法:ポリエステルに似たポリマーを使用した熱分解性糸。熱を直接当てると温度90~200℃の間で融解する。
機能・ポイント:衣服が簡単に分解でき、生地の再利用が可能に。既存の縫製機器が使用でき、製造やデザインを大幅に変更することなく、製品の循環性を高めることができる。装飾品、高価値の素材、ファスナー、ボタンの再利用も可能になる。
【KEY WORD9】
リサイクルしやすい設計
事例
特徴・組成:製品寿命後に原料ごとに分解できるようにあらかじめ設計された生地。ナイロン、ポリエステル、ウールの組み合わせ。
機能・ポイント:クレイドル・トゥ・クレイドルシルバー認証取得。
【KEY WORD10】
生分解性
細菌や真菌などの生物によって分解される材料
事例
拠点:ニュージーランド
組成・製法:羊毛に吸収性を与える技術。分子レベルでウール繊維にのみ影響を与えることができ、ウール混紡織布や不織布に適応可能。生態系に配慮した湿式処理。
機能・ポイント:通常ウールに比べて10~25倍の吸収性がある。素材の再利用ができ洗濯可能。100%生分解性があり、土壌や海洋環境に対して安全。家庭でたい肥化可能。ウールが持つ防臭性や体温調整特性、低アレルギー性は維持。羊毛は全て生産者から調達。
【KEY WORD11】
副資材
事例1
拠点:アメリカ
組成・製法:リサイクル可能な生合成接着剤。工業的なバイオ発酵プロセスを用いて製造。
機能・ポイント:イカの吸盤にある環歯からヒントを得た自己修復特性を提供。石油由来の同等品に匹敵する特性で生分解可能。
事例2
拠点:アメリカ
組成・製法:ポリプロピレン混合物を用いた生分解性のあるタグピン。
機能・ポイント:マイクロプラスチック問題に対応。1年未満で生分解する特別な設計で、有害物質を発生させずに分解する。
*ここで提供された情報は製造元/供給源から提供されたものです。マテリアルコネクションは各メーカー/サプライヤーと協力してメーカーの技術を理解し、メーカーが行った有効性/主張を誠実に評価しますが、マテリアルコネクションが実施するインタビュープロセスではさらなる検証、妥当性確認、サードパーティのテストに代わるものではありません。
マテリアルコネクションとは?
マテリアルに特化したコンサルティング会社で、グローバルではナイキ(NIKE)やケリング(KERING)、ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)やグーグル(GOOGLE)、コカ・コーラ(COCA COLA)やBMW、日本ではアシックス(ASICS)など各分野のリーディングカンパニーをクライアントに持つ。製品、デザイン、開発および製造のイノベーションをサポート。さまざまな領域の素材を、日本では常時3000点以上(データベースは1万点以上)をそろえる会員制ライブラリーを運営し、素材や加工技術をクロスボーダーに活用した素材提案や用途開発を支援する。