REPORT
再び進化したプリーツ 次は“まるでパンを焼くように”作る服
「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」が、“3Dスチームストレッチ”に続き、また新しいプリーツの服を誕生させた。名付けて“ベイクド・ストレッチ”。パンを焼くように、生地をベーキング機に入れて膨らませて作ることからそう呼んでいる。「これまでの『イッセイ ミヤケ』の仕事から、何を守らないといけないか考えた結果、アイデンティティーであるプリーツの進化だと考えた」とデザイナーの宮前義之。コツコツと進める技術の進化が、また新しい洋服のデザインを生み出した。
“ベイクド・ストレッチ”は、ショーの後半に登場。生地に特殊な“のり”をプリントし、高温で膨らませることでプリーツのひだを成形し、形状記憶する。従来のプリーツのプロセスとは根本的に異なり、たとえば文字や顔といった複雑なモチーフのプリーツも今後は可能になる。今季は、着想源であるジャングルの植物の生命力を表現する有機的な曲線をプリーツで描いた。
ジャングルをモチーフにしたのはその明るい色柄故だけではない。宮前いわく「何かだけが生き残るのではなく、個性が異なる動植物が共生していることが大切」とメッセージに込めたからだ。そのため、蒸気で生地を縮める“3Dスチームストレッチ”も今季は、天然繊維を織り込んで進化。植物を原料とした紙の糸を折り込んだカラフルなジャケットなどを登場させた。
これらのプリーツの進化は今季のポイントだが、加えて印象的だったのはコレクション冒頭を飾った、植物の繊維から生まれた紙を使った織物のシリーズ。ポックリ風サンダルと合わせたセットアップやドレスは、ピンク×ブルー×チャコールグレーなどのカラーパレットが優しく、宮前率いるデザインチームの奥行きの深さを感じさせる。