「私たちは、このアワードを2030年に廃止する未来を描いています!」。
そう力強く語ったのは、サスティナブルコスメアワード2021の表彰式で登壇した主催者の岸紅子さんだ。私も審査員として参加しているアワードは、環境省の森里川海アンバサダーでもあるアクティビストチームMOTHER EARTHが19年に始め、「人にも地球にもやさしいコスメ」を表彰している。この表彰式は、先日行われたNEW ENERGYという新しい合同展示会で行われた。冒頭の言葉は、私の心に強く訴えかけた。こうした表現は、サステナブルな未来を目指す企業やグループ、アクティビストの中でよく出てくるものだ。
「せっかく広げた風呂敷なのに、もうやめることまで考えているの!?」という異表をつく使い方であり、人々の関心を高めながら、しっかりとゴールも定めている。締切の提示で、いい意味での「焦り」を与えることも可能だ。「アクティビストのいない未来を!」と語るアクティビスト、「サステナブルなんて言葉のない社会を!」と語るサステナブルの推奨者など、こうした表現を使うリベラルな活動家はさまざまだ。
その言葉を会場で聞いていた時、ふと頭をよぎるものがあった。「では『パスカルマリエデマレ(PASCAL MARIE DESMARAIS.以下、PMD)』を含め、サステナブルなファッションが常識になるのは一体いつなのだろうか?」ということだ。もちろん「今すぐに!」と願うが、そうは簡単にいかない。大手の衣料品メーカーと商談していると「生産・製造の現場では、そんなこと難しい」と正直な胸の内を明かしてくれるリーダーもいる。一体何から手をつけていいのかわからない企業もあれば、そもそもサステナブルは利益の妨げと考えている業者もまだまだ多く、ゴールを定めるにはまだ早い。けれど5年もモノづくりや情報交換を続けていると、面白いことに気がついた。
私は現在34歳、昭和62年生まれというギリギリの昭和世代だ。10代の頃はポケベルもiモードも使えなかったが、20代になるとmixiやマイスペース、そしてiPhoneが登場し、現在に至っている。デジタル・コミュニケーションにはそれなりに苦労したから、私より上の世代の「サステナブル社会への理解に対する苦しみ」や「今までのリニアエコノミー方式を変えられない気持ち」がなんとなく理解できると思うのだ。一方出来上がった社会で成長した私たち世代は「このままでいいのかなぁ~?」なんてクエスチョンを抱きながら、今まさに子どもを持つ世代となり、将来のことをこれまで以上に真剣に考えている。ミレニアルやZ世代の気候変動に対する不安も他人事じゃない。
まさに2つの世代の板挟みにあっており、これは「橋渡し役」として活躍するしかない世代なのかもしれない、と感じている。
ファッションで言うと、ミレニアルやZ世代の古着への関心は世界的だが、一方で上の世代が夢中になったファストファッションも最近はサステナブルになっている。だから「またファストファッション買っちゃいます」と言う人も増えている。これも、世代を超えてSDGsという考え方が広がってきた証ではないだろうか?より早くサステナブル・ファッションが普通の社会になるには、世代間の差を埋めるか、世代交代を待つかの二択だろう。我々「橋渡し役」世代が、”新しいが当たり前”の時代が早く訪れるようコミットすべきなのは明らかだと思いを巡らせている。