仏発シルバーブランド「クリストフル(CHRISTOFLE)」は2月、東京・虎ノ門のモダンフレンチレストラン「ユニ(UNIS)」で2022年新作発表会を行った。「クリストフル」は1830年、パリの宝石商であったシャルル・クリストフル(Charles Christofle)が創業。電気分解の原理に基づいた金銀メッキに関する技術の特許の取得により、装飾品から食器まで製造するブランドに発展させた。ナポレオン3世が愛した「クリストフル」は、今でも世界中のトップシェフから高い支持を得ている。
会場の「ユニ」はフュージョンフレンチ「スガラボ(SUGALABO)」で経験を積んだ薬師神睦シェフによるカウンター8席限定のレストラン。誕生日やアニバーサリーなど“ハレの日”を彩るレストランがコンセプトの料理を提供している。隠れ家的なエントランスを入ると落ち着いた雰囲気のサロンに迎えられる。
「クリストフル」の新作は、アイコニックなカトラリーセット“ムード”から“ムード・アジア”。“ムード”は卵型のケースに6人分のカトラリーを収めたユニークなセット。ディナー用カトラリーやパーティー用、エスプレッソ用スプーンなど幾つかタイプがある。“ムード・アジア”は、和食や中華に欠かせない箸や箸置き、スプーンの形をアレンジした蓮華とデザートフォークを収めたもので、卵型のケースは、ディナーサイズ“ムード”と比べると一回り小さく高さは27cm。まずは蓮華で、カニ、ローストパプリカ、柚子胡椒、ミカンのババロア添えをいただく。普通の蓮華よりも浅く滑らかなフォームで仕上げているため、口へ運びやすく、このような前菜にもぴったりだ。特にディナースプーンは日本人の口には大きすぎるので、これくらいのサイズの方が使いやすい。上品な味のスターターの次は、シルバーでコーティングした箸で、香ばしくローストしたアオリイカ、山菜、セリのピューレ、すだちドレッシング、玉露パウダー添えのブーケサラダをいただいた。「クリストフル」は今までにも箸を販売しているが、全てシルバーというものは初めてだ。一見、細く滑るかなと思いきや想像以上に持ちやすく、普通の箸と同じく違和感なく使える。芳しいさまざまな食材の風味が引き立てあったサラダは絶品だった。
あらゆる食に合う万能なシルバーカトラリー
もう一つの新作は、“インフィニ”シリーズだ。15種類のメーンカトラリーと2種類のサービングカトラリー全17種類。人間工学に基づき、角度や太さ、重さ、バランス、持ちやすさが計算されデザインされている。世界のさまざまな料理に対応でき、カジュアルに楽しめるよう、“ユニバーサル”と付くカトラリーは1本で数通りに使用できるという優れものだ。
例えば、“ミディアムユニバーサルフォーク”は、前菜やサラダにぴったりのサイズだが、フィッシュフォークとしても使用でき、“ミディアムユニバーサルスプーン”は、デザートスプーンとティースプーンの機能両方を備えている。“ミディアムユニバーサルナイフ”は、前菜やデザートナイフとして、また、チーズや他の料理にも使用が可能だ。価格は、9460円〜4万40円。薬師神シェフは、「食のニーズが目まぐるしく変化する中、“これしかできないカトラリー”から“これもできるカトラリー”と幅広い可能性を感じる。各ゲストのニーズからわれわれのテーブルのあり方を考えたい」と語った。
時代により変化する食文化とカトラリー
今や食はボーダレスになり、文化や国境を越えて世界中で味わわれるようになった。それによりレストランで使用されるカトラリーもさまざま。特に“モダン”“ニュー”“フュージョン”などという言葉のつくレストランでは、ナイフやフォークに、蓮華や箸などを自由に組み合わせて使用するようになった。フレンチを箸で味わう店もある。堅苦しいテーブルマナーなど忘れて“料理に合う器とカトラリーで”というのが一般的。それは料理をつくるシェフのこだわりや演出、おもてなしの気持ちを表すものでもあると思う。「日本人にとってなくてはならないカトラリーが“箸”。“ムード・アジア”は、どんな料理にも寄り添うフォルムとデザインで、“欲しかった”を叶える新作だ」と薬師神シェフ。和・洋・中・エスニックとさまざまな国の料理が家庭の食卓に並ぶことが多い日本にはぴったりだ。一方で、世界的な和食ブームで“ムード・アジア”への欧米の反応は予想以上だそうだ。