毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2022年2月21日号からの抜粋です)
藪野:今回のオート・クチュール・コレクションでは、着る人に向き合う姿勢が感じられました。派手さはなかったですが、顧客の美しさを際立たせるのがクチュールの本質なので良いと思いました。
村上:個々人の美しさを引き出すというアプローチですよね。最近、ビューティ業界も一方的な提案をやめて、「あなたの個性を引き出します」という商品開発やコミュニケーションになっています。
藪野:そうなんですね。オート・クチュールに関して言えば欧米や中東の顧客がパリに戻ってきているという背景もあるかもしれません。パリに来て、仮縫いやフィッティングができる状態になってきているのではないかと。
村上:なるほどね。でもやはり全体のムードとしては、メンズもそうだったけど、新時代の幕開けを高らかに宣言した前回ほどの勢いはなかったよね。
藪野:新時代が日常化したというテンションなのかもしれないです。欧州では、ワクチンさえ打っていれば、ほぼ普通の生活ができます。ファッション・ウイークも割と淡々と行われている感じでした。
村上:ブランド側のリアルorデジタルの議論は終わっていて、「やっぱりリアル!」なんだよね。次のウィメンズもほぼリアルショーに戻るし、パリコレ復帰する「サカイ(SACAI)」の阿部(千登勢)さんも2年ぶりのショーに張り切っていました。
藪野:デジタル配信だけだと、インフルエンサーを起用するなどして再生回数が得られるビッグメゾンはいいですが、それ以外はかなり厳しかったようです。
村上:デジタルで“開かれた”コレクションを目指したけど、残念ながら従来と変わらない人しか見てくれなくて、結局“開けなかった”という感じだね……。
藪野:コロナ禍に入った時は、「ファッションシステムを再考すべき時!」と皆が声を挙げましたが、「結局何も変わっていない」というのが、最近のファッション・ウイークを現地で見た印象です。
村上:僕も最近は年に2回、社会に即した自分たちの考えを問いかける機会としてのシステムは、結構いいんじゃないかと思ってきました。
藪野:長年続いている意味は、あるんだなと思いますね。