豊島は、出資先であるスタートアップ企業のグッドバイブスオンリー(GOODVIBESONLY以下、GVO)と組み、アパレル生産のDXプロジェクトを本格始動する。5月から、GVOとともに3Dのバーチャルサンプルを管理するプラットフォーム「プロック(PROCK)」を、豊島が独自に開発したソフトウエア「3Dライブラリ」とともに運用を開始する。年間1億枚ものウエアを供給する豊島が本格的に3D化に乗り出したことで、日本のアパレル産業は大きく変わる可能性を秘める。キーマン3人に聞いた。
豊島がアパレルDXに取り組むワケ
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WWDJAPAN(以下、WWD):なぜこのプロジェクトを?
渡辺哲祥・豊島デザイン企画室 室長(以下、渡辺):年1億枚近いアパレル製品を供給する豊島にとって、アパレル企画・生産をDXすることは非常に重要な課題だった。その一つが「CLO」や「ブラウズウエア」などのアパレル3DCADを駆使したアパレル企画のデジタル化であり、数年前からソフトウエアの導入だけでなく、CADオペレーターの育成などの準備を進めてきた。とはいえ、当社はあくまでサプライヤーであって納入先のブランドや小売り側とともに進めていくもの。それが2年前のコロナ禍を契機に一気に進んだ。対面での商談ができず、われわれも海外の縫製工場とダイレクトにやり取りすることも難しくなった。
WWD:現場の状況は?
山崎泰弘/豊島東京二十一部 部長(以下、山崎):東京二十一部は取引先に大手の小売チェーンなどを持ち、年間1000万枚以上を供給する部署であり、現時点ではすでに提案点数ベースで20〜30%の商談で3Dを使ったバーチャルサンプル化が進んでいる。もちろん、取引先によってやり方のやり方は様々。先方も3DCADソフトを持っていて、お互いに3Dデータでやり取りするケースもあれば、ただ3Dのデータを見せるだけというケースもある。
渡辺:そうした中で開発したのが、3Dデータを確認できる「3Dライブラリ」だった。ブラウザー上で確認できるため、ネットにさえ繋がっていれば専用のソフトなしでいつでもどこでも3Dデータを確認できる。
バーチャルサンプルプラットフォーム
「プロック」が目指す先
WWD:GVOが豊島と組む狙いは?
野田貴司グッドバイブスオンリーCEO(以下、野田):日本のアパレル産業全体のDX化だ。当社は2018年に設立した当初から、アパレルDXを掲げ、自社でD2Cブランドを運営しつつ、有力なアパレルにもそうしたノウハウの提供を行ってきた。自社でD2Cブランドを運営しているのは、DX化したアパレル生産のノウハウを内製化するためだった。アパレル企画に関わる3Dサンプルの制作依頼、進捗管理、データの受け渡し、修正などをワンストップで提供できる「プロック」は、まさに設立以来掲げてきたアパレル産業のDXを実現するための、最重要プロジェクトだった。昨年夏に豊島を始めとする各投資家からの出資を受けたことで大きく前進した。
WWD:3D化をすることで得られるメリットは?
野田:サンプル費用を削減し、従来のサンプル生産方式から30日以上もリードタイムを短縮できる。その上、実物サンプルを生産することなくSNSなどでの訴求投稿、EC商品画像として活用すれば撮影販管費の削減と効率化、サスティナブルな取り組みにもつながる。また、サンプル費用を気にすることなく新しいデザイン提案やカラーバリエーション提案もできるので、新たなヒット品番を生み出すきっかけにもなる。
人気D2Cブランド「ステラヴィアナ」を
両社で共同運営も
山崎:「プロック」と「3Dライブラリー」を組み合わせることで、3Dを駆使したデジタル化へのブランドや小売側のハードルをかなり下げられる。数年内にアパレルODM(相手先ブランドの企画・生産)の大半を3Dにシフトしたいと考えている。とはいえ、取引先は多種多様でプラットフォームを準備するだけでは不十分だ。そのためにGVOの運営するD2Cブランドの「ステラヴィアナ」を、GVOの支援を受けつつ、完全なDXブランドとして当社主体での運営に取り組む。「ステラヴィアナ」で得たノウハウを、ODMビジネス全般に波及させ、業界に貢献していきたい。
アパレルDXの今後とは?
渡辺:GVO開発の「プロック」自体にも、今後さらなるアップデートを一緒に考えていこうと話している。3Dのデータをやり取りするだけではなく、AIを駆使した需要予測サービスも組み込んでいく。実際にブランドや小売側からはDXの一環として、商品企画にとどまらず、販売までをカバーしてほしいというニーズがある。当社としても製品の供給後もフォローして、商品企画の精度を上げていきたいという思いは強かった。GVOが需要予測サービスを組み込むことで、企画の精度を高め、検証もできるようになる。
WWD:DXの今後をどう見る?
渡辺:アパレルのデジタル化は、リアルな製品を作ったり売ったり着たりすることにとどまらず、ファッションブランドのデジタルレーベルのようなバーチャルファッションの誕生にもつながってくる。デザイン企画室としてはそうしたことも視野に入れて、様々なプロジェクトを進めている。その一つがポケットRDと組んだアバターに着用するバーチャルファッションの開発だ。まだまだ進化の余地は大きいが、開発を進めている。
豊島 営業企画室
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