LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)は、2022年の「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(LVMH YOUNG FASHION DESIGNER PRIZE以下、LVMHプライズ)」のセミファイナリストを発表した。セミファイナリスト20組はパリ・ファッション・ウイーク期間中の3月4日と5日に行われるショールームイベントに参加する。
セミファイナリストに選ばれたのは、岡﨑龍之祐による「リュウノスケオカザキ(RYUNOSUKEOKAZAKI)」やアンソニー・アルバレス(Anthony Alvarez)が手掛ける「ブルーマーブル(BLUEMARBLE)」、ヴィクトル・ヴァインサント(Victor Weinsanto)の「ヴァインサント(WEINSANTO)」、スティーブン・ストーキー・デイリー(Steven Stokey Daley)による「エス・エス・デイリー(S.S.DALEY)」、アレハンドロ・ゴメス・パロモ(Alejandro Gomez Palomo)による「パロモ スペイン(PALOMO SPAIN)」など、すでに各地のファッション・ウイークに参加している候補者が多い。
「LVMHプライズ」の立役者であるデルフィーヌ・アルノー(Delphine Arnault)=ルイ・ヴィトン エグゼクティブ・バイス・プレジデントは、セミファイナリストを「皆クリエイティブな才能と職人技、テクノロジーを大胆に掛け合わせた多様性を持ち合わせている」と評価。特に「環境、地域、社会、倫理的な面に配慮しており、世界をより良い場所にするために、そして私たちの業界が打開策を発見することに貢献している」ことが印象的で、リサイクル素材の使用、アップサイクル、出身地の伝統的な技術を好んで使うなど、「環境への責任感」があるという。
また、彼らのコレクションはメンズウエアとウィメンズウエアの境が流動的であることも指摘。「以前はウィメンズウエアのデザイナーが大半を占めていたが、今回はメンズウエアやジェンダーレスなコレクションを作るデザイナーがほとんどで、ウィメンズウエアだけを作るデザイナーは少なくなっている。また候補者の多くがメンズウエアとジェンダーレスコレクション、レディスウエアとジェンダーレスコレクション、またはその3つのラインを展開している」とコメント。「若いデザイナーたちは、メンズウエアとウィメンズウエアを融合させてジェンダーの境を広げ、よりインクルーシブな服を作ることに尽力している。ジェンダー、多様性、アイデンティティー、平等であることは、社会を前進させる議題であり、『LVMHプライズ』はこうしたトピックスにスポットライトを当てるものだ」と続ける。
さらに同氏は、候補者のコミュニケーション能力の高さにも注目しているという。「クリエィティブなだけでなく、候補者は自分たちのイメージに非常に配慮しており、自分たちの個性を引き立てるコミュニケーションの仕方を熟知している。インスタグラムがこの変化の大きな要因だ。また、パンデミックがこの傾向をさらに加速させたかもしれないが、セミファイナリストの成熟度の高さが各自のビジョンを表現する上で重要な役割を果たしていると思う」とアルノー=エグゼクティブ・バイス・プレジデントは語る。
「LVMHプライズ」はパンデミックの間オンライン開催とデジタルシフトを加速させていたが、今回も公式サイトで3月4~9日に一般投票を行う予定だ。
今年のエキスパート委員にはセルフポートレート写真で知られるアーティスト、シンディ・シャーマン(Cindy Sherman)のほか、「ESマガジン(ES Magazine)」のベン・コブ(Ben Cobb)、SNSで“PAM_BOY”のハンドルネームで知られる仏「GQ」のピエール・マペル(Pierre M’Pele)、「インタビューマガジン(Interview Magazine)」のメル・オッテンバーグ(Mel Ottenberg)ら編集者などを招聘した。
勝者は賞金として30万ユーロ(約3900万円)を受け取るほか、LVMHグループのエキスパートによる1年にわたる指導を受けることができる。故カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)氏の功績を称えた特別賞「カール・ラガーフェルド賞」の勝者は賞金15万ユーロ(約1950万円)と、1年間の指導を受ける機会を手にする。また22年のファッション学校の卒業生の中から3人を選出し、賞金1万ユーロ(約130万円)を与えるほか、受賞者はLVMH傘下メゾンの1つで1年間学ぶことができる。この学生向けのプライズは3月15日まで出願を受け付けている。