「WWDJAPAN」ポッドキャストシリーズの連載「考えたい言葉」は、2週間に1回、同期の若手2人がファッション&ビューティ業界で当たり前に使われている言葉について対話します。担当する2人は普段から“当たり前”について疑問を持ち、深く考え、先輩たちからはきっと「めんどうくさい」と思われているだろうな……とビビりつつも、それでも「メディアでは、より良い社会のための言葉を使っていきたい」と思考を続けます。第16弾は、【ベーシック】をテーマに語り合いました。「WWDJAPAN.com」では、2人が対話して見出した言葉の意味を、あくまで1つの考えとして紹介します。
ポッドキャスト配信者
ソーンマヤ:She/Her。入社2年目の翻訳担当。日本の高校を卒業後、オランダのライデン大学に進学して考古学を主専攻に、アムステルダム大学でジェンダー学を副専攻する。今ある社会のあり方を探求すべく勉強を開始したものの、「そもそもこれまで習ってきた歴史観は、どの視点から語られているものなのだろう?」と疑問を持ち、ジェンダー考古学をテーマに研究を進めた。「WWDJAPAN」では翻訳をメインに、メディアの力を通して物事を見る視点を増やせるような記事づくりに励む
佐立武士(さだち・たけし):He/Him。入社2年目、ソーシャルエディター。幼少期をアメリカ・コネチカット州で過ごし、その後は日本とアメリカの高校に通う。早稲田大学国際教養学部を卒業し、新卒でINFASパブリケーションズに入社。在学中はジェンダーとポストコロニアリズムに焦点を置き、ロンドン大学・東洋アフリカ研究学院に留学。学業の傍ら、当事者としてLGBTQ+ウエブメディアでライターをしていた。現在は「WWDJAPAN」のソーシャルメディアとユース向けのコンテンツに注力する。ニックネームはディラン
若手2人が考える【ベーシック】
ファッション業界で使われる系統としての「ベーシック」は、白やベージュといったニュートラルカラーや使っていたり、柄を使用していないアイテムで装ったりしたファッションから、素材や形、サイズにこだわったタイムレスなものまで多岐にわたる。社会的に“無難”な多数派という意味での「ベーシック」に加えて、「ベーシック」系はミニマリストな性質を含んでおり、全体の完成度を追求するために装飾的趣向を抑えた表現スタイルとも言える。何が「ベーシック」となるかは時代や流行の影響を受けているものだが、トレンドを追うのではなく、着回しやすくTPOを選ばないスタイルを長く愛用することを哲学としている印象。また着心地の良さそうなものを抜け感とともに着こなす“エフォートレス”な雰囲気もまとっている。
英語でライフスタイルやファッション、好みなどを“ベーシック”と形容するときは、単純に“つまらない”ものを指しているので使用方法に注意が必要だ。同じようなファッション、メイク、ヘアースタイルなどの女性を揶揄するときにも使われる「量産型女子」と似た響きを持つ。今や「量産型」は逆転して憧れの対象になることもあるが、個人の装いに対する英語の“ベーシック”は今も、本来個性を表すことがファッションの醍醐味とされる中、世間の流行や目を基準にしていることからミーハーや無個性というニュアンスを込めて使われている言葉だ。
【ポッドキャスト】
「WWDJAPAN」ポッドキャストシリーズはSpotifyやApple Podcastsでもお聞きいただけます。