コロナ禍をきっかけに、アパレル業界でもさまざまな領域でデジタル化が進んでいる。小売店に対するブランドの卸売も例外ではない。その領域をサポートするべく生まれたサービスが「homula(ホムラ)」だ。同サービスは2021年12月に本格スタート。現在、登録ブランド数は250以上、登録バイヤー・小売店数は2500以上。全国各地の多種多様なブランドとバイヤーが日々取引を行っているという。「ブランドの卸売事業を成長させることにフォーカスし、“使わない理由がない”サービス設計を目指している」と語る福地峻homula代表取締役CEOに、「homulaでブランドの卸売事業はどう変わるのか」を聞いた。
ブランドと小売店をつなぐ
オンラインマーケットプレイスは、
何故生まれたのか?
―homulaとはどのようなサービスか?
福地峻(以下、福地):端的に言うと、ブランドと小売店をマッチングさせるオンラインマーケットプレイスだ。オンライン展示会をhomulaで行い、既存取引先との受発注だけでなく新しい卸先を見つけることができたり、オフラインで展示会を行い、発注をhomulaで実施したりとさまざまな使い方をすることができる。また、ブランドによっては展示会後も多少在庫を持つことがあるが、そういった在庫の卸販売もhomula上でできるようになっている。
―そもそも、なぜhomulaを立ち上げようと考えたのか?
福地:コロナ禍で、アパレル店の方から、コロナで展示会に行けなくなったり、新規のブランドを仕入れることに対してリスクを感じるようになったりして、仕入れがしづらくなったという話を聞いた。私自身、前職の金融時代にB2Bの取引において買う側のリスクを軽減するためのビジネスを立ち上げた経験があり、その知見を生かせるのではないかと考えた。社内メンバーに大手百貨店やセレクトショップ、ファッションテック出身者を迎えて、彼らに話を聞いたり、小売店側だけでなく仕入れ先であるブランドの方にもいろいろと話を聞いたりして機能を追加していったことで、今のhomulaのサービスに行き着いた。ブランドの卸売の成長を全力でサポートするべく、“使わない理由がない”くらいのサービスを目指して日々機能をアップデートしている。
“使わない理由がない”と
思わせるほどのメリットとは?
―ブランドにとって、homulaを利用することにはどのようなメリットがあるのか?
福地:いくつかあるが、まず、費用面においては初期費用や固定費が無料で、発生する費用はhomulaを通じて新規の取引先を見つけた場合のみ、といった形を取っていることがある。機能面に関しては、取引対象となる商品を登録するだけで、既存の取引先や新規の取引先に対して、在庫販売〜展示会受注までをワンストップでできる。こういったサービスは私の知る限り、今のところ日本には存在していない。また、顧客管理機能が付いていることもポイントだ。取引先に対して展示会案内などのメールを簡単に作成して送ることができ、そのメールをどのバイヤーがどの程度クリックしているのか、受注用のページをどれだけ見ているのかを全て可視化できるようにしている。これにより、バイヤーの温度感が分かり、どのバイヤーに積極的にアプローチをかけていくべきかが一目瞭然になる。また、バイヤー側にとっても取引がしやすい仕組みを整えているため、ブランドとしては新規卸先の発掘だけでなく、既存卸先との取引ボリュームの増加にもつながるはずだ。
―「バイヤーにとっての取引がしやすい仕組み」とは?
福地:まず、支払いや在庫のリスクを当社が負う形にしている。支払いに関しては、取引が成立した際、いったんは当社からブランド側に支払うようにしており、バイヤー側は60日後までに支払えば良い、ということにしている。在庫においては、初回取引に関しては当社がブランド側から買い取るような手法を取っており、バイヤー側は仕入れ後に当社に返品することができる。返品された在庫は当社の会員の方に販売しているため、最終的にはhomulaで在庫を抱えることもない。
挑戦する“リスク”を下げ、
ファッション業界をより多様に
―最後に、homulaを通じてどのような世界を実現したいのか?
福地:ファッションにおいて、挑戦がしやすいような環境を作れればと思っている。ブランドや小売店は、立ち上げの際は少人数であることがほとんど。大企業でも、1ブランドは少人数のチームで回しているところもある。そのような中で挑戦していくことは尊いし、それが結果、新しいものや、人を熱狂させるものを生むことに繋がっていく。ただ一方で、挑戦する際にはリスクや、リスクに対する不安も生まれてくる。我々としてはリスクを限りなく下げることで、挑戦をする人たちがどんどん生まれるはずだし、さらにはそれがファッション業界の多様性の維持にも繋がってくると考えている。homulaではそのためのロードマップを引き、ユーザーの要望も取り入れながら新しい機能やバリューを打ち出していっている。私自身も事業に挑戦している身として、“挑戦する人たち”を全力で後押ししていきたい。
【ブランド成長事例】利用を
開始して数ヶ月で
新規取引先が約20件増
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カイタックインターナショナルが運営する「グランマ ママ ドーター(GRANDMA MAMA DAUGHTER)」は、コロナ禍でhomulaの利用をスタートしたブランドの1つだ。同ブランドを担当するカイタックインターナショナル卸営業部の丸川博文氏は、homulaを使い始めた理由について「コロナ禍で、新規卸先の開拓を行うには従来の営業スタイルを変えていく必要性を感じていた。そのような中で、homulaならブランドイメージを守りながら効率的に売上アップが行えるのではないかと感じて導入を決めた」と話す。「初期費用や固定費もかからずリスク低く始められたのも大きなポイント。作業工数が少なく、かつ与信リスクを気にせず受注が取れる点が非常に便利だ。コロナもありオフライン展示会での営業が難しい中、homulaでは温度感が高いバイヤーの可視化もしてくれるので、効率的な営業を行うことができ、開始から数カ月で約20件もの新規取引先を増やすことができた。UIもシンプルかつきれいで使いやすく、機能もどんどんアップデートされて使いやすくなっているので今後も楽しみ」。
homula