ファッション

「オニツカタイガー」が日本の美学で世界を驚かせる ミラノで挑んだ漆黒のランウエイショー

 「オニツカタイガー(ONITSUKA TIGER)」は、ミラノ・ファッション・ウイークで2022-23年秋冬コレクションを発表した。ミラノでのリアルのランウエイショーは、参加3シーズン目にして初めて。今季は1980年代の日本の美学にオマージュを捧げる内容で、黒を軸にしたコレクション"Shadow(陰影)”で西洋に再び衝撃を与える。

1980年代の“ジャパンブラック”
革命再び

 記念すべきショーのテーマに選んだのは、1980年代の日本のファッションだ。当時は男性服をミックスした少女グループの“ツッパリファッション”や、ロンドンの若者をほうふつとさせるブラックレザーの“パンクボーイズ”など、日本では当たり前だった全身まっ黒の“ジャパンブラック”が、豪華絢爛を美の絶頂とする西洋に衝撃を与えた。ミラノを拠点にするアンドレア・ポンピリオ(Andrea Pompilio)=クリエイティブディレクターは、「オニツカタイガー」のルーツである日本の美学に焦点を当て、イタリア人である彼自身のフィルターを通して、“ジャパンブラック”の革命を再び呼び起こす。

 ルックには、80年代のアンダーグラウンドカルチャーのムードを盛り込み、レイヤリングの手法を多く取り入れた。地厚なコットンのウルトラオーバーサイズのTシャツの上にナイロンジャケットを羽織ったり、マキシバミューダパンツ、ミディ丈のプリーツスカート、マルチポケットのベストを重ねたりし、異素材の対比で黒の“陰影”を浮かび上がらせる。グラフィカルな刺しゅうを施したオーバーサイズのカフタンは、学生服を変形させた少年少女の自由さを想起させ、ひときわ存在感を放っていた炎のプリントは、黒で統一したコレクションにエネルギッシュなパワーを与えた。

漆黒のスタイルに映える
アクセサリー

 黒で統一したスタイルには、アクセサリーがいっそう際立った。頭部を飾ったバラクラバは、80年代の日本にいた全身黒服の少年たちをイメージ。コレクションにパンキッシュな要素を加えたのは、レザーのフラットソールのサンダルと、薄いナイロンのキルティングを用いたプラットフォームソールのスニーカーだろう。カフタンとリンクするナイロンのバッグに施した刺しゅうは、“ジャパニーズ・ファッション”の代表格であるスカジャンの装飾へのオマージュでもある。「金子眼鏡」とコラボレーションしたクリアフレームの眼鏡は、黒いスタイルをいっそう洗練させ、コンテンポラリーな印象を加えた。

“ジャパニーズ・ファッション”の
真髄を再び示したい

 「1980年代に日本のデザイナーがファッション業界に与えた影響はとても大きかった。装飾主義の西洋美学に対して、日本はミニマルでピュア、わびさびに通じる“不完全さ”があり、それが美しく新鮮だった。今では、全身黒のスタイルは世界でも当たり前になった。そのスタイルを西洋にもたらしたのは、間違いなく日本人だ。『オニツカタイガー』に携わって約10年が経ち、自分自身が半分イタリア人、半分日本人という感覚だ。だから“ジャパニーズ・ファッション”の真髄を再び示したいと、今季のコレクションを制作した。ミラノでの初のランウエイショーとして、最も相応しい内容だと思えたしね。先シーズンのデジタル発表では、バーチャルな旅によって東京の街中を巡った。その続編として、今回はミラノの街中に小さな東京を作るべく、真っ暗なコンクリートジャングルを抜けるようなイメージで演出した。ショーを終えた今、僕の愛する街ミラノで、東京の断片を芸術の一部として見せられて、念願が叶った気分。とにかく、うれしいんだ」

TEXT:ELIE INOUE
問い合わせ先
オニツカタイガージャパン お客様相談室
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