「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」は3月2日、初のビューティアイテムを発売する。オードパルファム10種とオードコロン2種、リップスティック30色、石けん、クリーム、コーム(櫛)、ポーチをそろえる。価格は100mLのオードパルファムが220〜240ユーロ(約2万8000〜3万円)、リップスティックが35ユーロ(約4500円)。ヨーロッパのブティックおよびECサイトで取り扱い、ほかの小売り店は4月末〜5月に発売予定だ。
同ブランドは2018年にスペインのファッション・ビューティ企業であるプーチ(PUIG)に買収され、デザイナーのドリス・ヴァン・ノッテン(Dries Van Noten)は傘下になった当初からビューティを手掛けたいと思ったという。「われわれは早い段階からビューティアイテムの構想を始めた。私はいろいろなタイプの人に服を作っているので、フレグランスもあらゆる人にアピールできるものを作りたかった」と話す。
ノッテンにとって、香りは幼少期から馴染みのあるものだという。「キッチンに行けば鍋やオーブンに鼻を突っ込み、料理の香りに夢中になっていた。子どものころの記憶は母親が使っていた『ゲラン(GUERLAIN)』の名香“シャリマー”の印象が残っているし、幼いころから香りや香水でいろいろ遊ぶのが好きだった」と振り返る。
ビューティアイテムは、異なるカラーやプリント、テクスチャーを組み合わせるファッションのデザインと同様の考えで作った。透明な瓶にラベルを貼り付けた従来の香水瓶ではなく、鮮やかなカラーやプリントを組み合わせたデザインにこだわった。たとえばオスマンサス(金木犀)のノートを含む“フルール ドゥ マル(Fleur du Mal)”はべっ甲柄とバイオレットのガラスボトルを組み合わせ、栗とバニラをブレンドした“ソワイエ マラケ(Soie Malaquais)”はバーガンディー色のガラスと陶器から作られたボトルに閉じ込めた。
フレグランスの中身はインターナショナル・フレバー・アンド・フレグランス(IFF)やジボダン(GIVAUDAN)、フィルメニッヒ(FIRMENICH)といったさまざまな香料メーカーの調香師が手掛けた。ノッテンは調香師をアントワープにある自宅やガーデンに直接呼び、共に香りを作り上げたという。中身も異なる要素を用い、カンナビス(大麻)とパチョリ、ローズマリーとパチョリなど意外な組み合わせにこだわった。
リップスティックは30色のうち、15色がサテン、10色はマット、5色はシアー(艶やか)な仕上がりだ。リップバームも用意する。フレグランス同様にカラフルなケースにそれぞれ詰め替えが可能になっている。これまで数々のファッションショーやキャンペーン撮影のメイクを選んできたことから、メイクアップもノッテンにとって馴染み深いものだ。「メイクは人の印象を大きく左右するもの。目元を少しミステリアスにしたり、口元にダークなカラーをのせて目立たせたりするだけで、見た目が一気に変わる。メイクアップは人を変える無限の可能性を秘めている」。
サステナビリティも開発の大きなポイントだ。香水のボトルは全て倫理的に調達された再生可能な素材を用い、充填もできるようになっている。ポーチは洋服で余った生地をリサイクルして作り、製品の外箱は紙を使用した。
プーチは近年カラーコスメに力を入れており、18年には「クリスチャン ルブタン(CHRISTIAN LOUBOUTIN)」のビューティライセンスを取得、20年4月にはイギリスの人気メイクアップブランド「シャーロット ティルブリー(CHARLOTTE TILBURY)」を買収した。