H&Mジャパンは、3月1日に東京・池袋にオープンする路面店「H&M 池袋店」を公開した。注目は、売り場1階入り口付近などの一部の什器に、同社の不良品衣類を原料にした“循環型繊維リサイクルボード”の「PANECO」を導入した点だ。グローバルで進めているサステナビリティシフトの一環として店舗設計の面でも循環型を追求しており、それを体現する店になっている。
H&Mは2030年までに、全商品をリサイクル可能な原料、またはサステナブルに調達された原料に切り替えると発表している。現在、「既に64%が切り替わっている」(広報担当者)が、「商品そのものだけでなく、店舗設計、輸送、働き方、経営など全ての面で真にサステナブルな企業を目指す」。
池袋店で初導入する「PANECO」は、什器デザインなどを手がけるワークスタジオによるもの。輸送中に傷が付くなどして販売ができなくなったH&Mジャパンの不良品の衣類を裁断し、結合剤を加えて成形。テーブル什器やハンガー、ビジュアルを掲出するボードなどにした。繊維含有量は90%以上、粉砕して再成形することもできるという完全な循環型だ。「『PANECO』は池袋店で試験的に導入し、耐久性や導入にあたりかかるコスト、お客さまの反応などを検証していく」と、H&Mジャパンの山浦誉史サステナビリティ・コーディネーター。「店内の什器すべてを『PANECO』に置き換えるといった計画ではなく、今後もさまざま手法でサステナブルな店舗設計のあり方に取り組んでいく」という。「PANECO」の他店舗への導入スケジュールなどは現時点で未定。
「PANECO」に加え、組み立てや解体がしやすく、再度加工してリサイクルすることも可能なアルミ製の什器もワークスタジオと組んで導入。店内照明は全てLEDにし、消費電力を従来の照明に対し最大50%抑えた。また、壁面塗料は揮発性有機化合物が1%未満のものを使用しているという。
池袋店は3層の作りで、売り場面積は約1000平方メートル。ウィメンズ、メンズと、主にティーンに向けた“ディバイデッド(DIVIDED)”ラインの商品を販売する。「H&M」の国内店舗は、これで117店となる。路面店のオープンは19年9月の「H&M 戎橋店」(大阪・心斎橋)のリニューアル以来となり、東京都内に限れば09年以来。池袋への出店は08年の日本上陸以来初めて。
約1000平方メートルという売り場面積は、新宿などの旗艦店に比べれば3分の1ほどの広さ。「(路面店オープンにあたり、店舗設計の面でのサステナビリティの追求としてどんなことができるかを考えたが)本国のスウェーデンの旗艦店などで行っているリペアステーションの設置などは広さの面で難しい。この面積の中でどんな取り組みができるかを考えた」と広報担当者。「今後も新店出店、中でも路面店出店の際は、店舗設計としてどのようなサステナブルな取り組みができるかを考えていく」という。