マッシュホールディングス(HD)は、自社の5ブランドを集積した売り場を阪急うめだ本店4階婦人服フロアに4月6日オープンする。
売り場はエスカレーター横、旧「ウィークエンドスタイル」の約260平方メートル。展開するのは、「ジェラート ピケ(GELATO PIQUE)」「フレイ アイディー(FRAY I.D)」「ミラ オーウェン(MILA OWEN)」「エミ(EMMI)」「アンダーソン アンダーソン(UNDERSON UNDERSON)」。サステナビリティをテーマに、内装には環境配慮型の素材を使用する。床は土や廃棄レンガを粉砕して焼き上げたタイルをあしらい、壁面は卵の殻を再利用した漆喰を塗料としてデザイン。さらに天井との境目には、木くずと溶かした廃ガラスを混ぜたマテリアルをあてがうなど、細部までこだわる。
フロアの主要顧客層は20代後半〜40代だが、「大事なのは年齢によるターゲティングよりも、発信する(サステナビリティという)メッセージに共感していただけるか。そしてそのメッセージを伝えるには、まずお客さまがパッとみたときに感じるデザインの美しさがなければ始まらない」と近藤広幸マッシュHD社長。ブランドごと、サステナブル素材を使用した商品を集積したコーナーも常設する。この区画にも、阪急うめだ本店で同社が運営する「コスメキッチン(COSME KITCHEN)」で客から回収した、コスメの空き容器を再利用した原料で壁面をデザインし、特別感を演出する。さらに定期的にポップアップストアやイベントなどを開催するスペースも設けた。「ビューティ商品の販売やネイルサロンなど、アパレルフロアの枠組みにとらわれずお客さまの関心を呼ぶ場所にしたい」とする。
売り場の構想は昨年の秋ごろから始めた。「これまで百貨店の売り場は、コンセプトやターゲットをしっかりと固めてから作る分、時間を要した。だがお客さまのニーズが多様化し、(価値観や趣向の違う)小さなコミュニティーがどんどん生まれる中、従来のやり方だけでは対応できなくなった」と佃尚明・阪急阪神百貨店執行役員 第1店舗グループ婦人ファッション営業統括部担当。「この売り場も、『阪急うめだ本店に、サステナビリティに共感するお客さまが増えている』という仮説から始まった。可能性を感じたら、手探りでも走りながら答えを見つけていく売り場作りが必要だ」。同社ではこのような売り場設計を「ビジョン思考」と呼び、社内全体で推進している。
「これまで、ここまでの面積の区画を、お取引先企業1社に丸々(常設店の運営を)お願いすることはなかった。サステナビリティという大きなテーマを掲げ、お客さまに伝えていくには百貨店の編集力だけではかなわない。より一層、お取引先さまと固く手を携えていく必要がある」。近藤社長も「大きな期待を背に感じると同時に、“ウエルネスデザイン”をスローガンに掲げるわれわれだからこそ、応えねばならないと感じた」と振り返る。「阪急うめだ本店のお客さまは、店舗の価値が試されている時代にあって、新しい価値観や、自分にフィットするカルチャーを見つけたいというモチベーションが非常に高い。そういった方々の冒険をお手伝いする売り場を作っていきたい」。
高い集客力を持つブランドを多数抱えるマッシュHDには、百貨店からの期待値も高い。同社が百貨店のフロアや館全体の編集を手掛けた事例として、他にも西武池袋本店地下1階、福屋本店(広島市)の別館フクヤ アディクトがある。