ミレニアルズやZ世代と呼ばれる若者たちは今何を考え、ファッションやビューティと向き合い、どんな未来を描いているのだろうか。U30の若者たちにフォーカスした連載「ユース イン フォーカス(Youth in focus)」では、業界に新たな価値観を持ち込み、変化を起こそうと挑戦する若者たちを紹介する。連載の7回目は、バンタンとパルコが主催する若手デザイナーを対象にしたコンテスト「アジアファッションコレクション(ASIA FASHION COLLECTTION、以下、AFC)」第9回でグランプリを受賞した大阪文化服装学院在学生によるデザイナーデュオ「ドゥッカ ヴィヴィット(DOKKA VIVID、以下、ドゥッカ)」にフォーカスする。
現在大阪文化服装学院4年生の菅内のど佳さんと夏明豊さんは、入学直後に「ドゥッカ」を立ち上げた。「着る人の人生にスパイスを加えること」をモットーに掲げる2人は、鮮やかな色や柄の生地を巧みに用い、ポジティブなアジアンパワーを感じる独特な世界観を表現する。現在はリースがメインだが、今後は販売ラインを立ち上げる予定だ。過去にはファーストサマーのウイカや青山テルマらが着用した。「ドゥッカ」のウエアは気分を上げてくれると好評で、美容師など個人からの問い合わせもあり、ファンがじわじわと増えているようだ。コロナ禍で制作したオリジナルマスクは、ECサイトの「BASE」で月20万円を売り上げた。マスクは現在も販売中だ。
2人は小学校からの同級生。部活動の中国舞踊部で出会い、チャイナドレスやカラフルなメイクなどを楽しみながら、中国文化に魅了されたという。菅内さんは「お互いファッションが好きで、中学生の時から将来は一緒にデザイナーになろうと話していました。デザイン画の描き方も知らないのにドレス作りに挑戦して途中で挫折した思い出もあります(笑)」と話す。夏さんは中国にルーツを持ち、小さいころから度々中国を訪れ、現地で出合った美しい生地を買い集めることがいつの間にか習慣になっていたという。
古着のアップサイクルで世界観を披露
グランプリを受賞したAFCでは、「アディダス(ADIDAS)」のジャージーとレトロな花柄ワンピースを組み合わせたドレスなど、集めた古着をアップサイクルした作品で「ドゥッカ」の世界観を披露した。コンセプトは「LOVE&CHOICE」。選んだ服を長く愛することや、着なくなった服も新しい選択肢として届けたいという思いを込めた。
夏さんは「自粛期間は、私たちにとってサステナビリティと向き合う時間になりました。自由に買い物にも行けず、今あるものを大切にしなければいけない気持ちが芽生え、デザイナーとしてどのようにこの課題にアプローチすべきかを真剣に悩みました。その結果がAFCで発表した作品で、審査員の人たちにきちんと届いたのでうれしかった。『ラッシュ(LUSH)』みたいなブランドを目指してほしいと言われ、納得しました」と語った。
学内では、「サステナブルを意識しながらも、クリエイティビティーを爆発させたい」という思いから、シーチングのリサイクルプロジェクトにも取り組む。他校の学生にもアンケートを実施したところ、試作段階で生地を捨てることに違和感を覚える学生も多かった。企業の協力を得てシーチングを新たな生地にリサイクルする循環の仕組みを実現させていく予定だ。
2人はデザイナーの道へ進むことに不安はない。「これまで私たちは知識ゼロの状態から服を作ったり、イベントを開催したりしたので、どんな状況でも作りたいものを作れる自信があります。自分たちが楽しんで作ったかわいい服を多くの人に届けたいというシンプルな気持ちを大事にしたい」と夏さん。菅内さんは「今ならバーチャルで服を作ったり、世界のクリエイターとコラボできたりします。『ドゥッカ』のクリエイティビティーを、ポジティブに新しい領域で発揮していきたいです」とビジョンを語った。