REPORT
「J.W.アンダーソン(J.W.ANDERSON)」の2016-17年秋冬メンズは、ゲイ向けの出会い系アプリ「GRINDR」を通じてライブ配信された。「GRINDR」はGPS機能をもとにユーザーの身の回りのゲイを探し、お互いが意気投合すればチャットやデート、性行為などにつながるアプリケーション。会場でジョナサンは、「『GRINDR』は、インスタグラムと何ら変わることのない、コミュニケーションツールだ」と話したという。報道によれば、ライブ配信の視聴者は、延べ700万人。古今東西、あらゆるカルチャーを飲み込み、それらを先入観や偏見なしにリミックスするアンダーソンの才能を物語るエピソードだ。
そんな場を通じて発表したコレクションは、スピードが命のネット社会とは正反対の存在とも思える、歩みの鈍いカタツムリがキーモチーフ。もっともアンダーソンは、「カタツムリに理由はない」と話したというが、瞬時に配信したコレクションのモチーフが、のろまのカタツムリというのは、なんだかユーモラスだ。
スタイルは、けん引してきたノージェンダー、性差にとらわれないスタイルが、さらに個性を残しながらコマーシャルに進化したよう。ラビットファーで作るカーコート、シルクのようなビスコースで作るチェスター、オーバーサイズでボロボロのコーディガン、メタルボタンを一列に配したドレスシャツ、そして、男性の体躯を凛々しく描くふんわりしたモヘアのニット、そしてカタツムリのモチーフをのせたパンチングレザーのチェスターコート。素材がフェミニンならシルエットは正々堂々と、反対に強いマテリアルにはキュートなモチーフをのせて、と柔剛のバランスにたけている。