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日本橋高島屋S.C.で国外初「メゾン・エ・オブジェ・パリ」展が開幕 ル・コルビュジェのタペストリーは必見

 日本橋高島屋S.C.(以下、日本橋高島屋)本館8階で3日、「デザイン・ダイアローグ メゾン・エ・オブジェ・パリ(以下、メゾン・エ・オブジェ)」展が開幕した。「メゾン・エ・オブジェ(MAISON ET OBJET)」とは、仏パリで年2回開催される“インテリア業界のパリコレ”と呼ばれるインテリア雑貨の見本市で、国外での展示は初めて。約3000ブランドが出展し、デザインを通した対話の場として定着している。同展は3部構成で、「メゾン・エ・オブジェ」が選出する「デザイナー・オブ・ザ・イヤー」から21人を選び、各デザイナーの椅子や照明を中心に展示。2部では、24日からのパリでの開催に先駆けて「ホワッツ・ニュー」と題して出展者の新作を発表し、3部では、「ライジング・タレント・アワード」の受賞者の作品を展示する。

名作とデザイナーをつなげる展示

 同展では、フィリップ・スタルク(Philippe Starck)やジャスパー・モリソン(Jasper Morrison)、パトリシア・ウルキオラ(Patricia Urquiola)、吉岡徳仁など、そうそうたるデザイナーの作品を紹介。「どこかで見たことある」と思う椅子や照明、その作品とデザイナーを結び付ける分かりやすい展示になっている。椅子と照明を選んだ理由について、メゾン・エ・オブジェ日本総代理店の榎本アコ・デアイ代表は、「椅子は一番身近かつ機能的なプロダクト。デザインは出尽くしたと思われがちだが、人間工学的に極めて複雑な構造を持つものだ。照明は、機能とテクノロジーが結び付いた製品。エジソンの発明からLEDの登場までいろいろ変化をしてきた」と述べた。

目からうろこ!ペリアンを招いたのは高島屋だった

 「メゾン・エ・オブジェ」展は高島屋が1931年に創業以来取り組んできたデザイン・ライフスタイルにおける美の発信の一環だ。私が驚いたのは、シャルロット・ペリアン(Charlotte Periand)を日本に招聘したのが高島屋だったという点だ。ペリアンは20世紀を代表する建築家であり、デザイナーで、ル・コルビュジェ(Le Corbusier)やピエール・ジャンヌレ(Pierre Jeannere)との協業で知られている。1940年、ペリアンの元に画家・棟方志功の絵が添えられた建築家・板倉準三からの手紙が届いた。8mにも及ぶ巻き紙には、「ペリアン女史、東京の高島屋百貨店にいらしてください」と書かれていたという。それに感動したペリアンは、輸出工芸指導顧問という任務を引き受けて来日。それ以前は日本文化に批判的だったペリアンの人生を変える出来事だった。彼女は日本文化の素晴らしさに感動し、情熱を持つまでになったという。41年に日本橋高島屋で開催されたペリアンの初の個展「選擇(せんたく)、傳統(でんとう)、創造」展は、彼女の日本での講演と指導の締めくくりとして開催されたそうだ。

半世紀以上も続くペリアンと日本の対話

 日本橋高島屋では55年、大規模展「芸術の綜合への提案−ル・コルビュジェ、レジェ(Fernand Leger)、ペリアン三人展」を開催。そこで登場した見事なコルビュジェのタペストリーも展示。色彩豊かなコルビュジェのタペストリーは高島屋蔵で、なかなか目にすることのできない貴重な作品だ。この作品とともに、ペリアンが日本から着想を得てデザインし「カッシーナ(CASSINA)」により復刻されたが家具が置かれている。

 来日中のペリアンをアテンドしたのは、日本を代表する工業デザイナーの柳宗理だった。彼は、「日本で仕事をした西洋人で日本のデザイン界に最も大きな影響を与えたのは、おそらく彼女だ」と述べたという。

 インテリアやデザイン業界で女性が活躍することが少なかった20世紀に、建築や家具だけでなくアート作品を世界中で発表し続けたペリアン。“モダン建築の母”と呼ばれることもある存在だが、彼女自身は名声に興味がなく、一般的な知名度は低い。茶目っ気のある笑顔のポートレートからも想像できるように、ペリアンは、類い稀な才能に恵まれただけでなく、冒険心旺盛、自然やアートを愛し自由奔放に生きた20世紀を代表するクリエイターと言えるだろう。そんな彼女と高島屋のストーリーにも触れられる展示は必見だ。

 入場料は500円、会期は21日まで。

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