高島屋は4日、ショールーミングストア事業に参入すると発表した。4月下旬に高島屋新宿店2階に1号店を開く。D2C企業を中心に従来の百貨店にはなかった商品をそろえる。EC(ネット通販)とリアル店舗をつないだOMO型の新しい売り場は昨年秋、そごう・西武と大丸松坂屋百貨店が相次ぎ開設して話題になった。高島屋はこれに続く動きで、5年以内に国内外に10店舗の多店舗化を計画する。
高島屋とトランスコスモスが15年に合弁で設立したタカシマヤ・トランスコスモス・インターナショナル・コマース(本社シンガポール、以下TTIC)が運営を担う。TTICは日本の商品を海外に販売することを目的に設立。デジタルトランスフォーメーションに長けたトランスコスモスのノウハウを用いて、東南アジアや中国での越境ECなどに取り組んできた。この経験をショールーミングストア事業に生かす。
1号店は高島屋新宿店の2階の正面入り口の横の一等地に設ける。いわゆる“売らない店舗”で、売り場にはサンプルだけを並べ、在庫は置かない。ウェブサイトに客を誘導して購入を促す手法をとる。
「食・グルメ」「ライフスタイル」「ビューティ」「日本アート&クラフト」「エシカル」など、それぞれのテーマに精通した5人の外部キュレーターが商品の一部をセレクトする。フォロワーの多いキュレーターがSNSで発信を強める。店頭では専属のスタッフが詳しい説明や、専用ウェブサイトの利用方法などをサポートする。来店できない客に向けてオンライン接客も行う。
店内はAI(人工知能)カメラで客の動きについてデータを集めるとともに、ウェブサイトやSNSでの閲覧などのデータ、そして店頭のスタッフが集めた客の生の声を出店企業に提供する。
その場での販売を主目的にしないOMO型の売り場は、D2Cブランドの導入に積極的なマルイのほか、米国発のベータなど広がりをみせている。百貨店でも新機軸として期待が高く、昨年9月にそごう・西武が西武渋谷店のパーキング館1階にメディア型OMOストアを歌う「チューズベース シブヤ」、昨年10月には大丸松坂屋百貨店が大丸東京店4階に販売をしないショールーミングストア「明日見世」がそれぞれオープンした。
高島屋は当初から多店舗化を掲げている。高島屋の店内だけでなく、出店していないエリアも想定する。TTICの拠点であるシンガポールやベトナム、タイ、中国など海外でも出店を探る。