JRA(日本中央競馬会)で5年連続リーディングジョッキーを獲得する騎手のクリストフ・ルメール(Christophe Lemaire)氏が、アパレルブランド「CL. by C.ルメール」を今春スタートする。故郷フランスをはじめ各国で活躍した後、外国人として初めてJRAの通年騎手免許を取得し、驚異的なペースで勝ち鞍を重ねてきたルメール氏。アパレルブランド設立は「日本への恩返し」だと話す。
WWD:もともとファッションに関心が強かったのですか。
クリストフ・ルメール(以下、ルメール):幼い頃からおしゃれが大好きでした。フランスで生まれ育った僕は、騎手だった父と一緒に競馬場をたびたび訪れていました。競馬場は社交場でもあるので、子供でもドレスコードに従います。ブレザーにネクタイ、ピカピカに磨かれた靴でめかしこむのです。この体験が僕をファッションに目覚めさせた気がします。
騎手になって稼げるようになると、「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」「グッチ(GUCCI)」「ケンゾー(KENZO)」などの服を愛用していました。パリには有名ブランドがそろっています。けっこうお金を使ってきました。
WWD:ファッション好きが高じて、自分で服を作りたくなったと?
ルメール:2、3年前から自分のブランドの服を作りたいと考えるようになりました。僕がやるからには競馬とストリートをつなげて、競馬の楽しさや奥深さをもっと多くの人に広めたい。今回の服はどれも騎手がレースで着る勝負服から着想を得ています。バスケットボールなどは、ストリートファッションとも密接に結びついて、バスケをしない人にとっても身近な存在になっていますよね。競馬もそうなれたらいい。「ストリートジョッキー」というコンセプトで、服を通じて競馬の文化にも触れてもうらことを目指しました。競馬ファンだけでなく、ファッションが好きな人にも着てほしいのです。
お世話になった日本への恩返し
WWD:ポロシャツやTシャツ、ジョッキーパンツなどスポーティーなアイテムが多いようですね。
ルメール:馬の調教など仕事のときだけでなく、プライベートでも動きやすい服が好きです。でも僕の好みとしては、いつもスマートな印象でいたい。例えば、いま僕が着ているTシャツは細身のVネックで、(テーラード)ジャケットのインナーに着てもカジュアルになりすぎません。ポロシャツには、競馬の騎手が着る勝負服から着想を得た柄を用いました。デザインを考えるのは本当に楽しい。暇さえあれば(イラストやデザイン用の)アプリを開いて描いています。
一般の方のなじみはないでしょうが、ジョッキーパンツは普段着としてもカッコいいので是非おすすめです。少しシェイプさせて、シルエットも美しくしました。フランス人の僕が作るからには、エレガントな服にしたかったのです。
WWD:でも、モノ作りの点では日本製にこだわっていると聞きました。
ルメール:はい。それはブランドを立ち上げた動機の一つでもあります。日本に恩返ししたいという気持ちが、僕の中で日増しに強くなっているのです。競馬界への恩返しはもちろん、お世話になった日本の皆さんへの恩返し。このブランドを発信することで、少しでも日本の産業に貢献できたらいい。特に僕が暮らす京都には、素晴らしい技術を持った職人さんがたくさんいます。彼らと仕事できるのは喜びでもありました。
「デザイナーのルメールさんに会いたい」
WWD:製造現場も訪ねたそうですが、どんな感想を持ちましたか。
ルメール:ポロシャツなどを縫う和歌山県の工場を訪ねました。広い工場を想像していましたが、意外に小さくて家族的な雰囲気の中で真剣に服が作られる様子に感心しました。日本のモノ作りのクオリティーは素晴らしい。僕もミシンに挑戦したけれど、なかなかうまくいかなかった。
帽子で協業した京都の佐藤喜代松商店も訪ねました。漆の神秘的な工程には驚きました。Tシャツのグラフィックでは、京都を拠点にするアーティストのMOYAさんに協力してもらいました。今後もたくさんの職人やアーティストと協業していきたいです。
WWD:ところで、「ルメール」を展開するファッションデザイナー、クリストフ・ルメール氏と同姓同名ですね。
ルメール:「ユニクロ」などで活躍されているルメールさんですね。確かに僕と同じ名前です(笑)。だからブランド名は騎手のルメールだと分かるよう「CL. by C.ルメール」にしました。面識はありませんが、デザイナーのルメールさんには是非お会いしたいです。コラボレーションできたら“ルメール×ルメール”になりますね。
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「CL. by C.ルメール」は、4月13日から専用のオンラインサイトで販売を開始する。また、4月13〜24日まで高島屋京都店、4月27日〜5月8日までイセタンサローネ メンズ(東京・丸の内)でポップアップストアを開く。主力商品の税抜価格は、半袖ポロシャツ1万8000円、Tシャツ9000円、パンツ2万4000円など。各商品はJRAの年間重賞レースとG1レースの数に合わせて、各128枚または各24枚の限定販売となる。