ファーフェッチの2021年12月通期決算は売上高が前期比34.8%増の22億5660万ドル(約2595億円)、営業損失は前年の6億1981万ドル(約712億円)から4億7623万ドル(約547億円)へ、純損益は前年の33億1562万ドル(約3812億円)の赤字から14億7061万ドル(約1691億円)の黒字になった。流通取引総額(GMV)は42億ドル(約4830億円)に達し、19年の倍の規模に成長した。業績の発表を受け、株価は29.2%上がり、19.39ドル(約2229円)になった。
今年、ファーフェッチは他社との協業を積極的に進めている。ビューティ分野では、ラグジュアリーECのヴァイオレット グレー(VIOLET GREY)を買収。そのほか「リーボック(REEBOK)」提携し、アリババ(ALIBABA)との協業ではTモール(TMALL)への進出を果たした。
創業者のジョゼ・ネヴェス(Jose Neves)会長兼最高経営責任者(CEO)は、「パーソナルラグジュアリーグッズ市場は3000億ドル(約34兆円)規模だが、ファーフェッチの事業はそのわずか2%を占めるに過ぎない。同市場は25年までに5000億ドル(約57兆円)に達する見込みで、われわれの成長のポテンシャルも十分にある」と話す。
中でも期待を寄せるのが、「リーボック」とのパートナーシップだ。ファーフェッチ傘下のニューガーズグループ(NEW GUARDS GROUP 以下、NGG)はこのほど、「リーボック」の買収が完了間近にあるオーセンティック・ブランズ・グループ(AUTHENTIC BRANDS GROUP)と協業した。今後NGGは「リーボック」のヨーロッパ事業の代理店になるほか、50カ国以上で限定モデルを製造販売する。ネヴェス会長兼CEOは、NGGが「パーム エンジェルス(PALM ANGELS)」をたった4年でストリートウエア界のビッグブランドへと成長させたことを例に、「リーボック」でも同様の成長を実現できると自信を見せる。
また、競争が激しいラグジュアリーファッション市場において、パートナーシップは成功の鍵になると説く。「ラグジュアリーファッション市場の成長は著しく、競争も激化している。そこで無理に競争するよりも、いろいろな会社とパートナーシップを組んだ方がスマートだ。だからわれわれはほかの小売りを競争相手ではなく、パートナー候補としてみている」。
なお、22年のデジタルプラットフォームのGMVは28〜32%伸びると見込む。その肝となるのが、フルプライス(定価)販売だ。「ファーフェッチのマーケットプレイスにあるトップ10ブランドのうち、5ブランドはセールを撤廃し、フルプライスのみの販売戦略をとっている。同じグループのブラウンズ(BROWNS)も1年以上セールを開催していない。今後もフルプライスの商品の扱いを増やし、より健全なビジネスを目指す」。