「アンダーカバー(UNDERCOVER)」は9日、2022-23年秋冬コレクションを東京・代々木第二体育館でショー形式で披露した。ランウエイショーは楽天の支援で開催した昨年3月の「バイアール(by R)」から1年ぶりで、ウィメンズ単独でのショーはパリ・ファッション・ウイークで実施した18-19年秋冬シーズン以来。本来であれば、ウィメンズのショーは21年春夏シーズンのパリコレで復活させるはずだった。しかしパンデミックによって延期になり、ホームである東京からの再スタートとなった。ショーは2部制で行い、合計400人以上の来場者が訪れた。
パンクの内側に秘めた美しさ
会場は真っ暗な空間で、丹下健三が設計した代々木第二体育館の奇妙で美しい輪郭がぼんやりと浮かび上がる。漆黒の空間に一本の白いランウエイが現れ、ショーが開幕した。無音の中、複数のファスナーで装飾したブラックのドレスが連続する。ほとんどが体に沿うシルエットで、ファスナーの開閉位置によってフォームが微妙に変化する構造だ。そして首元や腕、耳などのエッジの効いたアクセサリーが、パンクな雰囲気を後押しする。その後はレッドやホワイト、ゴールドなどキーカラー別のスタイルが続いた。
フォーマルが軸のアイテムそのものはシンプルで、テーラードジャケットやトレンチコート、ドレス、ライダースジャケットなど、パンデミック前は日常的に街で見かけたものばかり。そこに、非日常の要素を溶け込ませていく。例えば、巨大な安全ピンやカミソリの刃のベルト、チェーンのブレスレットなどの激しいアクセサリーだったり、ビーズやガラスビジューで表現したタータンチェックや、モコモコに起毛させたニットなどのドリーミーなテキスタイルだったり。そして、エレガンスとパンクという両極を融合した強いスタイルではあるものの、シルエットに丸みを加えているため、どこか柔らかさがある。ビーズのフリンジで型どったハートのモチーフや、パフスリーブのアウターのショルダーライン、袖がこぶのように膨らんだワンピースやコートの曲線が、強さの中に美しさを、普遍性の中に特殊性を作り出していた。一見するとパンクな要素が目立つものの、凛としたエレガンスも際立つ45ルックだった。この日のショーに参加したモデルは38人で、娘の高橋ララの姿もあった。
「今は自分ができることをやるだけ」
「パリでショーを再開するつもりだったので、これまでよりもエレガンスを意識した。強いスタイルの内側に、想いを秘めたような女性のイメージだ」と高橋盾デザイナー。パンクの要素については「そのイメージを持たれているけれど、ここまでは試していなかったので、原点的に取り入れてみたかった」。世界の状況が厳しいからこそ、ファッションを純粋に楽しめていたかつての日常に思いを馳せ、あの頃の自由を取り戻すために、「アンダーカバー」は前に進む。「自由とファッションはつながっているもの。気持ちにゆとりがあるから自由があり、自由があるから着飾ることができる。世の中が元通りになるまで、今は自分ができることをやるだけ」。