小泉智貴による「トモ コイズミ(TOMO KOIZUMI)」は14日、「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」冠スポンサーの楽天が実施する支援プロジェクト「バイアール(by R)」のサポートで、新作となる2023年コレクションを東京エディション虎ノ門で発表した。ショーのディレクションは写真家で映画監督として知られる蜷川実花が担当。ファッションショーと、蜷川によるフォトシューティングの2部構成で、エンターテインメント性のある表現に挑んだ。
レッドカーペットを歩く
個性豊かな表現者13人
レッドカーペットが広がるランウエイに現れたのは、俳優や歌手など13人の表現者たち。フラッシュを浴びる演出で、アワードの式典を再現した。ファーストルックのSUMIREは、玉虫色のラッフルケープが特徴的なロングドレスをまとい、中山咲月はラッフルを襟やパンツにあしらったテーラードスーツを着こなす。大島優子はドレスにレイヤードされていたスカートを着脱し、ケープとして羽織ってランウエイを往復した。市川染五郎はオレンジのセットアップにラッフルのローブを、ラストを飾った寺島しのぶは、裾の広がったプリンセスラインのラッフルドレスに身を包んでレッドカーペットを歩いた。どのコレクションも見た瞬間に美しさと楽しさが伝わる、「トモ コイズミ」流の工夫が凝らされていた。
ほかにも森川葵や玉城ティナをはじめ、松田ゆう姫、ローレン・サイ、アイナ・ジ・エンド、Little Black Dress、ともさかりえ、仁村紗和らが登場。コーディネートで合わせた「ジミー チュウ(JIMMY CHOO)」のシューズや、「ロビンソン ペラム(ROBINSON PELHAM)」のジュエリーもドレスの魅力を引き立てた。
蜷川実花によるシューティング
花に包まれたモデルたち
レッドカーペットを歩いた出演者たちは、蜷川によるフォトシューティングへ向かう。東京エディション虎ノ門内のゴールド バー アット エディション(Gold Bar at EDITION)は、フラワーアーティストの東信率いるジャルダン デ フルール(JARDINS des FLEURS)による花の装飾で埋め尽くされた。ドレスをまとい、花に包まれた出演者を、蜷川が次々に写真に納めていった。
今季は、アートディレクターの石岡瑛子による舞台や映画の衣装が着想源になった。小泉デザイナーは、20〜21年に東京都現代美術館で開催された回顧展「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」を訪れ、その力強いクリエイションに感化されたという。石岡はフランシス・フォード・コッポラ(Francis Ford Coppola)監督作品の「ドラキュラ(Bram Stoker's Dracula)」でアカデミー衣裳デザイン賞を受賞したほか、マイルス・デイヴィス(Miles Davis)のアルバム「TUTU」のジャケットデザインで日本人初のグラミー賞を受賞するなど、海外でも偉業を達成したことで知られている。
その影響は、今季の「トモ コイズミ」の大胆な色使いやシルエットのドレスに現れていた。パープルやネイビーなどの濃厚な色味に、相反するビビッドなネオンカラーを掛け合わせているのが特徴的。またオーガンザと光沢感のあるサテンなどの異素材の組み合わせや、強弱のあるボリュームが、華やかさだけでない高貴さも感じさせた。
レッドカーペットに込めた
“ハリウッドへの夢”
年1回のペースで新作を披露する「トモ コイズミ」は、現在ドレスブランドとして独自のポジションを確立し始めたところ。ニューヨークでの華やかなショーデビューを経て、著名ブランドとのコラボレーションなども経験した。「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(LVMH YOUNG FASHION DESIGNER PRIZE」では共同受賞者に選出され、国内外のセレブリティの着用も増えた。東京五輪の開会式ではMISHAが着用するなど、知名度を着実に高めている。小泉デザイナーの次なる野望は、エンターテインメントの聖地、ハリウッドへの進出だ。そこではセレブリティの着用のみならず、衣装デザインなど多岐にわたって挑戦したいという。今季のランウエイに敷いたレッドカーペットには、そんな夢への思いが込められていた。衣装デザイナーとしてキャリアをスタートし、華やかなドレスとともに、新しい道を切り開こうと前進する小泉デザイナーの今後から目が離せない。