古田泰子による「トーガ(TOGA)」は19日、2022-23年秋冬のショーを東京・表参道ヒルズで開催した。「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」の冠スポンサーである楽天が実施する支援プロジェクト「バイアール(by R)」のサポートによるもので、2月にロンドン・ファッション・ウイークで、映像形式で見せたコレクションを再編集し、東京版として披露した。東京でのショー開催は、約5年ぶりだ。
真っ白な空間と
個性的な19人のモデルたち
会場は真っ白な床と青白いカーテンに囲われた、真っ白で極めてシンプルな演出。古田デザイナーは「今という瞬間、服だけに集中できる空間にしたかった」という。
起用したモデルはジェンダーや肌の色、年齢も異なる19人。1990年代から海外コレクションでも活躍してきたSAWAをはじめ、メンズモデルの朝比奈秀樹や柳俊太郎らキャリアを積んだモデルがそろう。モデルそれぞれの個性に合わせて、ウィメンズの服でスタイリングを組んだ。メンズモデルが着こなすスカートやフリルトップスも、洗練されてモダンに映る。17年の東京でのショーも男女のモデルが登場したが、ジェンダー平等が当時よりもうたわれている今、さらに自然で垣根のない提案に感じられた。
ストレッチ素材を合わせた
気持ちを明るくする“弾む服”
コレクションは“HOOPS, BOUNCING, SWINGING”がキーワード。「トーガ」が続けてきた典型的なビジネススーツにテクニックを加える手法だ。今季はスーツにストレッチ素材を組み合わせることで、新しいシルエットを生み出している。特徴的なのは、ローウエストからふっくら広がるスカートのバランス。例えば、ジャケットとミニワンピースのセットアップは、トップスとスカートの間にストレッチ素材をはさむことで、プリーツが立体的に膨らむ。ファーやスパンコールの装飾、中綿を入れたテクニカル素材など、異素材の掛け合わせで生まれるボリュームもポイント。モデルたちが歩くたびに、ゆらゆらと揺れる服は、「弾むような足取りで、洋服から気持ちを軽く、明るくできたら」という古田デザイナーの思いが込められた。
フィナーレではモデルが会場中央をランダムに歩き回り、バックステージへと戻っていく。多様な人々が集まり、すれ違う東京を象徴するスクランブル交差点をほうふつとさせた。
文化的な発信を続けることが
今できる抵抗
「トーガ」は今年25周年を迎える。古田デザイナーは「過去を振り返るのではなく、私たちは今やるべきことに向き合うことが大事だ」という。「アートやファッションなどの文化は、心を豊かにすると信じている。(世界情勢に目を向けると)暗いニュースばかりで、ファッションショーを開くことが非常識だと思われるかもしれない。しかし、文化的な発信を止めずに自由に行動することが、私たちが今できる抵抗だと思う」。また楽天との取り組みで「楽天ファッション(Rakuten Fashion)」内にオンラインストアをオープンするなど、新たな販路も広げた。「窓口を広げることで、幅広い人たちが楽しめるファッションを届けたい」。
ジェンダーレスでエイジレス、オープンマインドな精神で、心を豊かにしてくれる「トーガ」の今。次の25年も、エッジの効いた提案とともに、新しい価値観を提示してくれるだろう。