ファッション

最強の繊維商社集団へ、新会社MNインターファッションの今後をトップ2人に聞く

 1月1日、三井物産の繊維部門中核子会社である三井物産アイ・ファッションと日鉄物産の繊維部門が統合し、新会社MNインターファッションが誕生した。2021年2月に統合合意を発表。売上高は旧三井物産アイ・ファッションが796億円、旧日鉄物産繊維部門が984億円で、単純合算で約1800億円という巨大企業が誕生する。繊維商社の合従連衡の号砲にもなった統合の今後を、キーマンである木原伸一社長(旧三井物産アイ・ファッション会長)と吉本一心(かずみ)副社長(旧日鉄物産常務執行役員)に聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):統合合意から約1年。社内外の反応は?

木原伸一社長:水面下ではコロナ前から統合に向けて動き出しており、1月1日の新会社発足で、山でいえば5合目まで来たといったところ。お互い上場企業なので、水面下での話し合いも、知っていたのはごく一部の役員のみ。社員にもなかなか情報を開示できず、とても心配をかけたと思う。取引先への売り上げなどの情報交換も(新会社発足の)1月1日までは一切できず、その意味でも統合の具体的な道のりは始まったばかりだ。オフィスの統合は4月1日なので、現場の社員にまだ実感は湧きづらいと思う。

吉本一心副社長(以下、吉本):昨年2月の基本合意の発表はコロナ禍の真っ最中。この2年の若手の離職率は従来よりも若干高かったが、それは統合というよりもコロナ禍に伴う業界全体の不振が理由だと分析している。中堅以上に関しての離職には影響はほぼない。

WWD:人事制度や組織、取引の統合はどうなる?

木原:現時点では組織や人事制度にはほとんど手を付けていない。経営幹部間では今後についてかなりディスカッションしてきたが、「将来のあるべき姿とは何か?」といった企業理念から中長期的な業績目標、人事設計まで、全社員と議論し、共有した上で、1年をかけて変えていく。現時点で言えるのは、「お互いのいいところを見つけましょう」ということ。今はオンラインで、お互いの商売の勉強会などを行っており、アプローチや商売のやり方の情報交換を行っている。

吉本:大枠で決まっているのは、従来の商社像にこだわらず、川上から川中、川下までサプライチェーン全体でやれることはすべてやる、強い企業になろう、ということ。両社ともアパレルOEMが主力の事業だったので意外に思われるかもしれないが、取引先の重複については全体の3割以下で、そういった部分での整理・調整という作業はそれほど多くない。それに、かつては例えば取引先とのゴルフコンペなどを通じて、競合であっても交流があったりしたが、最近はそういったことも多くないようだ。ほとんどの社員は、お互いに交流がない状態だった。

WWD:個を重視し伝統的にプロパー社員の育成に力を入れてきた日鉄物産と、外部人材も多く混成部隊である三井物産アイ・ファッション。異なる社風を、どう融合していくのか?

吉本:まず前提として、成長への意思、誠実さ、顧客満足度の高さなど共通する部分は多い。その上で異なる部分をあげるとすれば旧日鉄物産は組織がニットやカットソーで、海外に自社の縫製工場も多く構えていて子会社も多い。一方、旧三井物産アイ・ファッションは顧客単位の組織で、高機能素材「パーテックス」など素材に強いといった面がある。理想はそれぞれのいいところをハイブリッドで組み合わせることだ。もちろん物量を出せれば、貿易、物流などのコストのシナジーも出せる。そういった部分は細かい項目を書き出して、精査しているところだ。

木原:私からすると、日鉄物産は現場が強い。数字へのコミットが強く、製品に対する知識や知見も深い。こうした知見を融合できれば、取引先へのサービスレベルもアップできるし、その上で規模や取引先の統合できるのでサプライチェーン全体の強化にもつながる。シナジーは大きい。

WWD:シナジーを発揮するという意味ではデジタル分野が大きいのでは?

吉本:例えば3DCADの分野では、三井物産はすでにデジタルクロージングという事業会社を持っており、この部分の知見を活用できるのは単純に大きい。両社とももともとデジタル投資には継続的に取り組んでおり、今後はさらに加速する。

木原:特にデジタルに関しては、共通化やスケールが重要になってくる。その意味ではMNインターファッションだけというより、取引先に加え、競合他社も含めた大きな連携も見据えている。

WWD:株主構成は三井物産50、日鉄物産50の完全な折半出資。親会社が2つになり、経営判断が遅くなる懸念はないのか?

木原:そもそも統合は、変化の激しい時代の中でより迅速な経営判断をするためにどうするべきか、というのが出発点だった。投資判断なども含め、経営面での自由度はずっと高くなる。

WWD:繊維商社の今後をどう見る?

木原:商社の繊維・アパレルビジネスということで言えば、実際には10年前から危機感はかなり高かった。コロナ禍でいよいよ顕在化した、というのが実際のところだ。従来の枠組みだと繊維専門商社と言われる企業も、実際には非衣料や、コスメなども含めたライフスタイル全般に事業領域を広げており、だいぶ個性がはっきりしてきた。実感としても競争相手はだいぶ変わってきた。10年後20年後はさらに変わっていく。

吉本:個人的には、水面下で進めてきた統合作業に加え、20年6月からは繊維事業部門の管掌になり、事業全般を見ることになってかなり大変だった。だが今は、以前はそれぞれ別々にしていた商社の今後のような議論を、文字通り一体となってできるようになって、それだけでも個人的にはとてもワクワクしている。足元でも市況は回復基調にあり、今は上がるだけという状況だ。

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