アーティストには力がある。
ファッションにおいても、歌詞やメロディ、ビジュアルで、観た人、聞いた人、感じた人の人生を、時に一瞬で変えてしまうほどのパワーを持っていることは、皆さんも知っての通り。そしてここで言うアーティストとは、ミュージシャンや役者、画家、作家、スポーツ選手など、あらゆるジャンルだ。
各国共通で大量生産するアイテムへの依存度が高いミュージシャンに、私がフォーカスして警鐘を鳴らし始めたのは、コロナが始まった2020年4月のことだった。きっかけは自分のラジオの生放送で、世界中のツアーやライブイベントが中止になっていくのをお知らせしたこと。「大量生産したツアー限定のプリントTやタンブラー、年号入りのタオルは一体どうなってしまうんだ!」。私は急にゾッとして、その数をサラッと計算してみた。
その数は、世界で考えるとゾッとする。「まさか売れ残ったら、全て焼却されるのか⁉︎」と心配になり、「世界中のアーティストが力を合わせ、コロナ時代の西暦入りの売れないTシャツをパッチワークするようにリメイクしたら、かなり貴重な時代のピースに生まれ変わるのではないか?」と企画を立ち上げたが、権利問題など壁は大きく、実現には至らなかった。
そんな経験から、「どれくらいのアイテムを種類ごとに何個作るものなのか?」を、規模や集客する人数によって変動する価格や販売方法含めてリサーチし、どんなものが現場やイベントの前後に売れるものかまとめた。結果見えてきたのは、生活に寄り添うアイテムもあれば、イベントで使用するアイテムまで多種多様なこと。イベントの余韻と共に生活したいと願う、ファンの心情がうかがえた。
そして、ほとんどがサステナブルな素材やアイテムで作れることに気がついた。
例えばマグカップの代わりにオリジナルのロゴ入りタンブラーなどを提案すれば、イベント会場でも紙コップやペットボトルを削減できる。タオルは人気のアーティストやフェスなら百枚単位で売れるので、オーガニックコットンやリサイクルポリエステルでもマネタイズ可能だ。Tシャツなどのアパレルアイテムも、ありボディで作成できる。
他にもバンダナからステッカーまで、さまざまな素材がサステナブル素材で代替可能なのに、そこまで手をつけているアーティストは日本では多くない。もっといるとは思うのだが、新人のアーティスト”さらさ”が古着の上にプリントしたサステナブルなライブTを作っていると聞いた時は嬉しかった。
コールドプレイが温暖化などへの影響からワールドツアーを中止したというニュースは興味深かったが、これからはグッズも環境に配慮して作り、手に取ったファンの生活をサステナブルな方向に導いて欲しい。そう願い、とある有名アーティストからの依頼でライブグッズのプロダクションに関わっているが、今年こそライブやイベントが安心して開催できる環境が整うことを心から願っている。
早くおしゃれして、フェスやイベントに行きたいから!