サステナビリティ

三井不動産と考える“SDGs時代”の「人が主役の街づくり」 ミヤシタパーク編

 三井不動産は「人が主役の街づくり」「街づくりを通して、持続可能な社会の構築を実現すること」を理念に掲げる。全国で展開する三井ショッピングパーク ららぽーとや三井アウトレットパークといった商業施設では、子育て世代を軸にした施設環境やサービスの充実で、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を推進する。東京・日本橋では「残しながら、蘇らせながら、創っていく」のコンセプトの下、地域の人々と開発を進める。ミヤシタパーク(MIYASHITA PARK)(東京・渋谷区)では、南北2つに分かれていた旧渋谷区立宮下公園を一つにし、公園・商業施設・ホテルが一体となった次世代型の複合施設として、環境配慮の施策を積極的に行う。“SDGs時代”にフィットする三井不動産のサステナブルな取り組みを全3回の短期連載で紹介する。第3回は、2020年6月に開業したミヤシタパーク(MIYASHITA PARK)(東京・渋谷区)をクローズアップする。

渋谷に集う人たちの
新しい憩いの場
誰もが安心できる屋上公園

 ミヤシタパークは、訪れる人のスタイルに合った過ごし方や、街歩きの楽しさを発見できるような渋谷の新たなストリートとして、2020年6月に開業した。多様な人々が訪れ、さまざまなモノ・コトを通して、新たな価値を生み出すコミュニティーを創出している。

 商業施設本部 アーバン事業部 運営企画グループ 金澤佑香(以下、金澤担当)は、「公園を作るだけなら、さまざまな構想ができたと思う。例えば、未来感のあるコミュニティースペースも考えられたが、かつての宮下公園のように緑に溢れ、老若男女幅広い属性の人たちが安心して利用できるスペースにしたかった」と話す。そこで施設の屋上を緑化し、渋谷区民や渋谷区への来街者の憩いの場になる新たな公園として開発した。

 商業施設部分は、20代を中心に若年層が多いが、特に屋上公園は幅広い世代が訪れる。「若者はもちろんだが、朝の時間帯はご年配の方が公園を散歩し、平日の昼間は若いママがベビーカーを押している姿が見られる。ランチの時間帯は施設の利用者が、飲食店でテイクアウトしたフードを屋上で食べていることも多い。ペットを連れて散歩している人もいる。多様な人々の憩いの場になっている」と金澤担当。

施設のさまざまな場所で
SDGsを実感
ゴミ排出量の削減が一番の課題

 ミヤシタパークの屋上にはモニュメントのようなアーチを設置した。柱の間にネットを張ることで、夏には緑のカーテンが現れる。訪れた人々に心地よい日陰を提供し、屋上の温度を下げる効果も期待される。

 館内にはソーラーパネルで発電しゴミを自動圧縮するスマートゴミ箱「SmaGO」や、水循環型手洗いスタンド「WOSH」を設置。「コロナ禍以降、どの施設も入口の消毒液設置は当たり前になっているが、手洗い場は水道敷設の関係上、施設設計の段階で組み込まないと増設が難しい。ミヤシタパークも例外ではなく、コロナ禍でよりニーズが増した手洗い場の不足を感じていた。水道敷設不要の『WOSH』を導入することにより、この問題を解決できた。『WOSH』はとても便利かつ、洗いで利用した排水を98%以上再生循環するため環境にもやさしい。最近ではこの手洗い場で撮影したTikTokがバズっていると聞き、新たなカルチャーを発信する若者の力からサステナビリティの輪が広がることを期待している」と金澤担当。

 また、店舗側には施設のゴミ排出量削減のために協力を促している。現在は集積場に人を配置し、店舗から出たゴミをチェック。紙やペットボトルなどリサイクルできるゴミの分別を行っている。スタッフと共に確認することで、店舗側に再利用できるゴミが意外にも多いことを知ってもらい、環境問題への意識改革につなげている。こうした呼びかけにより、施設から排出されるゴミのうち、生ゴミを除くすべてのゴミについて100%のリサイクル率を達成している。

受付のICT化、
必要最低限のアメニティーで
日本流の“おもてなし”を見直す

 次世代ライフスタイルホテル「シークエンス(sequence)」は、“やさしいつながり”という理念の下、「スマート」「オープン」「カルチャー」をコンセプトに、三井不動産グループが2020年に立ち上げた新ブランド。ミヤシタパークの北側に公園からシームレスに繋がる形で建つ「シークエンス ミヤシタパーク(sequence MIYASHITA PARK)」は、ゲストに自由な時間と過ごし方を提供する同ブランドの第1号物件だ。

 エントランスには最新のICT技術を導入し、顔認証でのチェックイン&ルームチェックアウトに対応。宿泊客の自由な時間を拡張できるようチェックイン・チェックアウトの時間もフレキシブルに対応している。また、アメニティーも必要な分だけをピックアップできるボックスを設置。室内のゴミ袋なども含め、再利用素材や脱プラスチック備品を積極的に採用した。

 江連沙織ホテル・リゾート本部ホテル・リゾート運営一部運営企画グループ主任は「元々はサステナビリティの考えが当たり前に浸透している海外のお客さまを念頭に、インバウンド需要を見越した取り組みだったが、結果として環境に配慮した取り組みを知ってもらう施策になった。当社グループの施設も含め、従来の日本のホテルではアメニティーを多く準備することが“おもてなし”の一環でもある。これは良い点でもあるが、サステナビリティの観点からは良い点ばかりではない。国内でもアメニティーの配置など、ホテルのやり方に共感いただくお客さまも多く、日本流の“おもてなし”を見直すきっかけにもなった」と語る。
 
 ホテルのエントランスと公園を結ぶ場所にはカフェラウンジがある。ここでホテルオリジナルのタンブラーを購入すると、宿泊客は宿泊中無料でコーヒーまたは紅茶が楽しめる。タンブラーは持ち帰り、旅の思い出としてだけでなく、普段使いしてもいい。ホテルでの体験をきっかけに、マイボトルの利用を促す仕掛けだ。さらに、カフェの椅子は、旧宮下公園に生えていた木をアップサイクルしているという。

イベント開催で各店舗の
サステナブルな
打ち出しを引き出す

 ミヤシタパークでは3月に「エンジョイ!ミヤシタ サステナブルファッション!」を開催した。「サステナブルにファッションを楽しむカルチャー」をテーマに、各店舗はサステナブルなアイテムを使ったコーディネートを提案。吹き抜け広場ではWEGOが古着市を期間限定でオープンした。

 期間中は館内にロスフラワーのモニュメントを展示。フラワーリサイクル第一人者の河島春佳氏が代表を務めるRINとのタイアップで、廃棄される花「ロスフラワー」に新たな命を吹き込み、花のロスやアップサイクルの考え方を広めた。金澤担当は、「当社で企画するイベント以外にも、『ミヤシタパークでサステナビリティをテーマにしたイベントを開催したい』というお声をいただくことも増えている。公園が一体となった施設ということもあり、サステナビリティの発信拠点としての認知が高まっていると感じる」と話す。

 かつての商業施設であれば、既にある建物を活用して商業施設を作る手法で環境に配慮することもできたが、再開発を伴う大規模な施設開発ではそれが難しい。だからこそ、新しい技術を積極的に取り入れ、そこに買い物に行くことがSDGsの一環になるような、新たな商業施設の形を目指していく。

TEXT:KAORI TOMABECHI
PHOTOS:SHINE SHUHEI
問い合わせ先
三井不動産 広報部
03-3246-3155