ユニクロは、3月16日に東京・三田の済生会中央病院内にオープンする店舗を公開した。「ユニクロ(UNIQLO)」が医療施設内に出店するのは今回が初めて。売り場面積約43平方メートルと「駅ナカなどの店舗よりも小さい、最小規模の店」(広報担当者)で、取扱商品数も100型未満。ただし、ECで朝10時までに注文した商品は一部を除き当日中に店頭で受け取りができ、利便性を補う。入院患者や病院職員らに加え、近隣の住民や通勤者らの店頭受け取りのニーズも見込む。
以前は「タリーズコーヒー(TULLY’S COFFEE)」があった1階の区画に出店。店舗すぐ脇に外部からの入り口があるが、コロナ禍の感染拡大対策で現在は閉鎖中だ。壁面と3つの島什器で構成し、面積が限られる中でも車イスが通れる通路幅を確保した。在庫を保管するバックヤードは地下1階にあるという。
売り場の顔である前面には、看護・介護などの場面で重宝するメンズの前開きインナーを陳列。乳がん患者などのニーズを汲んで開発したウィメンズの前開きインナーや、ブラトップ、ショーツなどの下着類も「狭い店舗ではあるが力を入れてそろえている」。インナーでは、一部キッズ商品も販売する。
取り扱う商品は、済生会側の意見も取り入れて決定した。パジャマや着やすいカットソーアイテムなどのほか、病院職員などのニーズも想定してブラウスやシャツ、“感動ジャケット”なども置いている。とはいえ「ユニクロ」の商品ラインアップの中ではごくごく一部だ。スタッフはタブレットを持ち歩き、店頭にない商品はその場でECに誘導し、ECに慣れていない高齢客などの注文もサポートする。朝10時までのEC注文に対する当日の店頭配送は、既に有明のEC専用倉庫から近い一部の店舗では行っており、今回の出店のために取り組んだことではないという。
医療機関への出店は初となるが、この店舗で入院患者らの声を汲み取り、商品開発や品ぞろえに生かしていく。通常、病院の売店やコンビニで売られている肌着やパジャマは色数やデザインが限られる。その点、同店ではメンズの肌着でクリーンに見える濃いグリーンや、ウィメンズで気持ちの明るくなるライラックやミントグリーンなどもそろえる。それが「ユニクロ」が病院内に出店する意義でもあり、済生会からも「患者の選択肢が増えることを歓迎している」といったフィードバックが出ているという。
今回の出店は、「病院内に『ユニクロ』があったら便利」という済生会の職員の声から、済生会側がユニクロにオファーしたことがきっかけ。「済生会の病院や医療関連施設は全国に800以上あり、ユニクロの国内店舗数と近い。今後は、各地の病院や施設での出張販売や、車イスの方などがユニクロ店舗の時間外などに買い物ができる取り組み、済生会による店舗での健康講座などの構想もあるが、具体的には未定。済生会以外の病院への出店も検討していく」とユニクロ広報担当者。済生会側としても、地域社会と病院の間に人の流れを生み、新しい病院のあり方を模索する意図があるという。
営業時間は8時半から20時まで。ただし時短営業中は18時で閉店する。