アディダス(ADIDAS)の2021年12月通期決算は、売上高が前期比15.1%増の212億3400万ユーロ(約2兆7179億円)、営業利益は2.5倍以上(同166.2%増)の19億8600万ユーロ(約2542億円)、純利益は5倍近く(同389.8%増)の21億1600万ユーロ(約2708億円)だった。21年8月に売却したリーボック(REEBOK)に関する分を除いた継続事業の純利益は、3倍以上(同223.6%増)の14億9200ユーロ(約1909億円)だった。19年に約240億ユーロ(約3兆720億円)の売上高を計上したコロナ前の水準には達しなかったものの、増収増益を記録した。
地域別で見ると中国は現地通貨ベースで前期比3%増、EMEA(欧州・中東・アフリカ地域)は同24%増、北米は同17%増だった。成長の鈍化の要因として、中国国内の欧米商品のボイコットやコロナ禍の影響によるロックダウン、サプライチェーンの問題などを挙げた。これらにより年間でおよそ15億ユーロ(約1920億円)の売り上げロスがあったという。JPモルガン(JP MORGAN)やバーダー バンク(BAADER BANK)、カナダロイヤル銀行(ROYAL BANK OF CANADA)をはじめとする投資銀行のアナリストは、アディダスは目標に達しなかったものの、業績の結果は「予測通り」と分析した。
決算会見では、キャスパー・ローステッド(Kasper Rorsted)最高経営責任者(CEO)が22年の戦略について説明した。まず、直営店やECといったD2Cビジネスを強化する。昨年直営ビジネスは売り上げの38%を占め、25年までに全体の半分を担うことを目指す。またプレミアムスポーツウエア市場にさらに進出する狙いで、現在ジェリー・ロレンゾ(Jerry Lorenzo)「フィア オブ ゴッド(FEAR OF GOD)」デザイナーとバスケットボール関連のウエアを手掛け、「プラダ(PRADA)」や「グッチ(GUCCI)」ともコラボレーションしている。さらに、ボイコットの影響を受けた中国事業を安定させることも課題だ。新たに同エリアのマネージャーを立て、本来成長率が高い同エリアのビジネスを強化する。
現在は新型コロナウイルスによるリテール市場への影響は落ち着きつつあるものの、ロシアのウクライナへの軍事侵攻が懸念される。アディダスは先日ロシア事業を停止し、ロシアとウクライナにいる約7000人の従業員の支援をしているという。同社の15〜20年の成長率は毎年13%ほどを記録していたが、今年はロシアでの事業を考慮し、11〜13%の成長を見込む。