ファッション

新生「エーグル」CEO、「価値観を共有する全ての人々に届けることが使命」

 1853年にフランスで誕生した「エーグル(AIGLE)」の歴史は、機能性とスタイルを重視したハンドメイドのラバーブーツを生み出したことから始まる。創業以来自然との調和を大切にし、アウトドアのみならず都会でのアクティブなライフスタイルをサポートしてきた「エーグル」は、コロナ禍での人々の価値観の変化を追い風に躍進する。2019年にCEOに就任したサンドリン・コンセイエ(Sandrine Conseiller)氏に、「エーグル」が描くビジョンを聞いた。

自然との真の絆を求める
人々に届ける

WWD:改めて、「エーグル」の強みは?

サンドリン・コンセイエ「エーグル」CEO(以下、コンセイエCEO):CEOに就任してまず、アーカイブを振り返り、ブランドがたどってきた169年の歴史を理解するところから始めた。驚いたのは、「エーグル」が創業当初から「スタイル」と「機能性」を掲げていたことだ。そして、サステナビリティという言葉がなかった時代から商品の耐久性に価値を置いていた。今の時代にブランドに求められる価値観をすでにコアに持っていたことは、非常に嬉しい発見だった。

WWD:「エチュード スタジオ(ETUDES STUDIO)」創業者チームをアーティスティック・ディレクターに指名した狙いは?

コンセイエCEO:彼らが就任する以前は、アーティスティック・ディレクターというポジションを設けていなかった。人々は地球に優しいからではなく、それを身に着けたくて商品を買う。だからブランドの根幹にあるサステナビリティによりコミットするためには、同時にファッション性を高めることが必要だ。創業以来大切にしてきた都会と自然を融合させる感覚を維持しながら、商品をさらに魅力的なものにアップデートできるのが彼らだった。

WWD:ファーストコレクションの感想は?

コンセイエCEO:非常に良いスタートが切れたと思う。特に自然を感じる色やプリントが素晴らしい。コロナ禍でロックダウンを経験した人々の間で、自然とのつながりを感じたいという欲求が高まっている。昨今、多くのブランドが“地球のために”といったメッセージを打ち出しているが、「エーグル」は、自然との真の絆がある点で大きく違う。それを強調するようなコレクションだった。ターゲット層は、こちらから年齢や属性で絞らない。価値観を共有する全ての人々に届けることがブランドの使命だ。実際にそうした価値観に敏感な人々は増えており、ブランドの魅力を再発見してくれているように感じている。

顧客を巻き込みパーパスを実現

WWD:コロナ禍での商況は?

コンセイエCEO:21年は20年比で20%増、コロナ以前の19年比でも7%増という業績を残すことができた。利益も同様に、19年、20年を超えた。厳しい局面もあったが、この世界的なクライシスがブランドの進化を後押ししてくれた。19年にはファッションブランドとして初めて、フランス政府が定める「使命を果たす会社(Purpose driven company)」に認定された。

※2019年にフランスでPACTE法に基づき導入された、企業が利益以外の社会や環境目標を定款に定める新たな企業形態

WWD:「エーグル」のパーパスとは?

コンセイエCEO:「足跡以外の痕跡を残さずに、大いに経験し人生を謳歌するために」だ。つまり、あらゆる天候下で人々が外に出掛けることをサポートすると同時に、カーボンフットプリントの削減に向けて最大限の努力をするということ。このパーパスの下、温室効果ガスの排出量を30年までに少なくとも現在より40%削減することを目指し、環境に配慮した素材や再生可能エネルギーへの切り替えなどを進めている。また、本国で実施する中古品の販売などを通して、私たちのコミットメントに顧客を巻き込むことにも取り組んでいる。

WWD:今後の展望と日本市場に期待することは?

コンセイエCEO:「スタイル」と「機能性」を時代に合わせて発展させていく。またすでに述べたように、カーボンフットプリントの削減は優先事項の一つだ。ブランドの成長にとって、日本は非常に重要なマーケットだ。加えて、日本は「エーグル」が海外で初めて路面店を開いた場所でもある。日本は新しいトレンドが生まれる場所でありながら歴史を重んじるという点でユニークだ。歴史に裏打ちされたフランス製のクラフツマンシップとサステナビリティはまさに日本市場の顧客が求めるもので、原宿にオープンした旗艦店を拠点にブランドの価値観を発信していきたい。

「エーグル」の哲学をひもとく
様子を捉えた
ドキュメンタリー動画を制作

 YouTubeと日本公式インスタグラムでは、アーティスティック・ディレクターの3人が22年春夏コレクションを制作する過程を追ったドキュメンタリー動画を公開している。撮影は、ファッションドキュメンタリーを数多く手掛けるロイック・プリジェント(Loic Prigent)監督が行った。3人が新たなアイコンブーツ“アトリエ”を製造する工場を訪れる様子や、キーアイテムであるトレンチコートに施した工夫を語る様子を映している。

日本公式インスタグラム
アカウントを立ち上げ

 「エーグル」はこのほど、日本の顧客に向けた公式インスタグラムアカウントを立ち上げた。“エーグルメーカーズ”と名付ける、「まちと自然をつなぎ、寄りそう暮らし」を実現するクリエイターらの紹介や、日本で活躍するスタイリストを起用した日本の顧客に向けたコーディネート提案などのコンテンツを発信していく。

問い合わせ先
AIGLEカスタマーサービス
0120-810-378