ボンジュール!欧州通信員の藪野です。2週間にわたるコレクション取材も今日でラスト!無事、体調を崩すことなく乗り切ることができました。今シーズンは連日報道されるウクライナの状況が気になり、複雑な気持ちを抱えながらの取材でした。ただ、コロナ後の世界を意識したコレクションはエネルギーに溢れていたのも事実。力強いクリエイションやデザイナーたちのメッセージを伝えるこのリポートが、読者の方々にとって、考えるきっかけやヒントになることができればうれしい限りです。それでは最終日、3月8日のダイジェストをどうぞ!
CHANEL
「シャネル(CHANEL)」の会場は、今季もグラン・パレ・エフェメール。招待状もツイードのボックスでしたが、中に入ると壁も地面も座席も全てがツイードで覆われた巨大な空間が広がっています。そんな演出からも分かるように、今季のコレクションはメゾンを象徴する素材のツイードへのトリビュート。ゆるやかにカーブするランウエイも、スコットランドの田園地帯にあるツイード川をイメージしたものだそう。コレクションには、その風景に見られる色彩が取り入れられています。
「シャネル」のツイードの背景にあるストーリーはご存知の方も多いかもしれません。その始まりは1924年で、ガブリエラ・シャネル(Gabriela Chanel)が当時交際していた第2代ウェストミンスター公爵ヒュー・グローブナー(Hugh Grosvenor)と頻繁に訪れたスコットランドで伝統的な紳士服の生地であるツイードに出合ったのがきっかけです。彼女は公爵のジャケットを自身のために作って着こなしたというからロマンチックですよね。そんなエピソードについて、クリエイションを率いるヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)は「愛する人の服を身につけるのは、何よりもセクシーなこと」とコメント。「とても現代的な振る舞いに魅了されました。そして、シャネルはそのツイードをフェミニンなものにしたのです」と話しています。
ショーは、ピンクのゆったりとしたベルトコートからスタート。その後も、「シャネル」の代名詞であるツイードのジャケットやスーツをバリエーション豊富に提案したほか、かっちりとした肩やスタンドカラーのコート、パッチポケットが特徴的なアウター、ベアトップドレス、カーブを描くゆったりしたパンツなどがランウエイを彩ります。そこに加えるニットもファンシーツイードのように色が混じり合い、チュールのミニドレスはスパンコールでツイードの柄を想起させるチェックを表現。バッグも、ウエアと同じツイードを用いたものがたくさん登場します。コーディネートのポイントは、カントリームードをもたらすラバーブーツやニットのニーハイソックス、キャスケット。今季もヴィルジニーらしいアクセサリーの重ね付けが効いています。
今シーズンはメゾンのシグニチャーやルーツを再考し、それを現代的に表現するコレクションが数多くありました。「シャネル」は、まさにその極みといった印象です。もともと、メンズテーラリングの素材にフォーカスしながら、色や織り、デザインの豊かさでその幅広い可能性を表現しました。
MIU MIU
「ミュウミュウ(MIU MIU)」の会場に並んでいたのは、冬の屋内に似つかわしくないデッキチェア。その沈み込むような座り心地は、眠気を誘います。ファッション・ウイークで寝不足続きの来場者の中には、ショー開始までウトウトしていた人もちらほら(笑)。
提案したのは、話題になった2022年春夏シーズンのスタイルからの引用を感じるラインアップ。ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)は、「無意味な目新しさに対する解毒剤」として、シーズンを超えて共鳴するスタイルやムードを進化させました。見慣れたアイテムを大胆にカットすることにより新たなバランスを生み出すアプローチはそのままに、今回はテニスウエアのようなスポーティーな要素をプラス。プレッピーなスクールガールといった雰囲気です。ラインアップは、ニットポロやVネックのアーガイルセーター、ジップアップニット、学生服のようなジャケットやコート、ストライプシャツ、マイクロミニや膝丈のプリーツスカート、ホットパンツ、ルーズソックス、アーティストデュオのナタリー・ユールベリ&ハンス・ベリ(Nathalie Djurberg & Hans Berg)とコラボしたキッチュなアクセサリーなど。今季も上半身はクロップド丈が多く、ローライズのウエストからはサテンのロゴ入りショーツが覗きます。中盤からはチェックのツイードやアップサイクルレザーを使ったアウター、ハードな印象のレザーパンツやブーツ、ビジューや箔をのせた透け感のあるドレスもミックス。甘辛のバランスを効かせたスタイルを打ち出しました。
驚いたのは、ショーで「ミュウミュウ」ボーイズが登場したこと!ただ、これはメンズ・コレクションの復活というわけではなく、多様性やさまざまなアイデンティティーを受け入れることを示しているそう。プレスリリースには「『ミュウミュウ』のペルソナの根幹を成す“ガーリー”は心の状態であり、それはジェンダーから解放されます」と書かれています。マイクロミニ丈を男性がはくのはなかなかハードルが高そうですが、“着たいものを着て、自分らしいスタイルを楽しむ”という背景にある考えには共感します。
おまけ:今日のワンコ
「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」のリシーで来場者のバッグの中から顔を出すアメリカンコッカースパニエルのワンちゃんを発見!飼い主がコレクションを見終わるまで、大人しくしているお利口さんでした。
これにてミラノ&パリコレの現地リポートは終了です。最後までお付き合いいただきありがとうございました!