ファッション

職人集団「ブラックミーンズ」が初のショーで見せた“ジャパニーズパンク”魂 「日本の文化を盛り上げたい」

 「ブラックミーンズ(BLACKMEANS)」は、「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」で2022-23年秋冬コレクションをファッションショー形式で披露した。同ブランドがショーを行うのは初めてだ。今回のイベントは、国が推進するプロジェクト“日本博”の一貫として、文化庁と日本芸術文化振興会の支援を受けて実現した。

 「ブラックミーンズ」は、岐阜県にあった革製品のOEM工場から派生して、2008 年にオリジナルブランドとして設立した。スタッズ付きのライダースジャケットやボンテージパンツなど、パンクを軸にさまざまな要素をミックスしたアイテムを提案している。毎シーズン1枚のルックのみでクリエイションのムードを表現しているが、「“日本の文化を盛り上げたい”という文化庁の思いに共感し、ショーの開催を決意した」と小松雄二郎デザイナーは語る。

“日本のパンク音楽を世界に”
ブランド哲学と共鳴するバンドが生演奏

 暗がりの会場にはスモークが焚かれ、バンドセットが設置されていた。“シャーン”という鈴の音が鳴り響くと、笛や和太鼓といった和楽器が軽快な音色を放ちショーが始まった。演奏するのは、和楽器を用いてパンクミュージックを再解釈するバンド、タートルアイランド(TURTLE ISLAND)だ。「(彼らは)元々、直球のパンクをやっていたが、『海外から入ってきた音楽をそのままやっていてもつまらない』と、現在の表現にたどり着いた。僕らも洋服をベースに、日本ならではの付加価値を強く意識してものづくりを行っている。ファッションと音楽という違いはあるけど、マインドはリンクしている」小松デザイナーは説明する。

 バンドを起用した理由はもう一つある。小松デザイナーをはじめとする「ブラックミーンズ」のコアメンバーは、20年ほど前までコレクションブランドで働いていた。「当時のショーはエンタメの要素が強く、ファッションの枠を超えて楽しさと感動を生み出していた。どうせショーをやるならそのエンタメ性を再現して、あの頃の空気を感じてもらいたい」。

音楽とともにボルテージが上昇
国境とジャンルを超えるクリエイション

 コレクションは、ブラックのレザージャケットとパンツのセットアップで開幕した。白や緑、赤と色のバリエーションは増える一方で、ディテールや加工は控えめ。しかし、叫びにも似た女性ボーカル入りの音楽に切り替わると、クリエイションのボルテージが一気に高まった。異なる表情の革で切り替えたワークコートや長年着古したようなエイジング加工を施したレザーブルゾン、細かなパッチワークのジャケット、モッズコートをレザーで再解釈したようなオーバーコートなど、ディテールや加工、パターンワークなどで、要素を盛りに盛っていく。ファッション性の強いアイテムとして、ケーブルニットのカーディガンやデニムのセットアップ、蛇と鳥を刺しゅうしたシャカシャカ素材のコート、切り替えが特徴的なウールブルゾンなども登場。どのアイテムも、ブランドの軸であるクラフツマンシップが感じられる。例えばジャカードのデザインは袖と身頃でリンクし、フリンジや刺しゅうは細やかで、切り替えも縫製が難しい曲線だ。

 終盤は、ファッションのジャンルと国境を超越した渾身のミックススタイルを見せた。ウィメンズのジャケットはレザーでフリルを表現してドレッシーに仕上げ、ヌバックレザーのニッカポッカには屏風のようなデザインを施した。スタッズの代わりに仏具用の金具を敷き詰めた“仏(ぶつ)ジャン”や、能の衣装に使われる“金蘭”を使ったパンツなど、和を強くイメージしたアイテムもたたみ掛けた。

 ショーは最初で最期ーーそのつもりだった小松デザイナーにも、心境の変化があったようだ。「実際にやってみて、ショーが好きなんだなと気づいた。機会があったらまたやるのが自然かな。まだ分からないけど」。

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