数回前の連載で述べた、「私のレザー企画」がついにお目見えする。今回「パスカルマリエデマレ(PASCAL MARIE DESMARAIS.以下、PMD)」がローンチするのは、初めてのローファーだ。
靴の生産過程や販売方法は、衣類とはまったく違う。使う道具や技、資材だって異なる。ハーフサイズごと、準備する数だって違う。同じなのは、モノづくりへのパッションや情熱だ。そんな初挑戦を迎えるきっかけは、「キッズラブゲイト(KIDS LOVE GAITE)」の山本真太郎デザイナーとの出会いだ。山本デザイナーのスタジオで触れた、ロンドンを感じさせるシューズの数々に「この人の靴を履いたら、かっこよくなれる」とすぐわかった。パンクばかり聞いて育った私には未知の世界の教科書のようで、すっかり魅了された。今回「PMD」とのダブルネームを制作するにあたり山本デザイナーは「使われなくなった、捨てられるはずの革を使用してみないか?」と提案してくれた。当時の私はそんな存在すら知らなかったが、どの業界でも少しでも傷がついたり規格外だったりの商品や素材の処理の方法は同じ。こうして皮革工場に赴き、上質なレザーを作る上で革を傷つけないよう保護するために用いるクレイタンピングレザーと出合い、「これを使わせて欲しい!」と決めた。役目を終えたクレイタンピングレザーは、何百回も使われたレザーだからこその風合いを持っている。レザーをずっと守ってきたのかと思うと、可愛く思えてしまうほどだ。でも、あまりの使用回数から大きな穴が空いてしまったり、柔らかくなりすぎてしまったりすると、役目を終えるのだという。そんなレザーを救出し、山本デザイナーのディレクションで美しすぎるほどのアイテムに生まれかわった。
靴のデザインは、私が「キッズラブゲイト」で最初に惚れたタッセルローファー。その革の特性から、表情は一足一足異なっている。自分に合った一足に出合えるだろう。耐久性は、何百回ものドラムからの刺激にも耐えてきた経験が物語っている。ソールには耐久性に優れたビブラムソールを使い、丁寧な縫製で国内で仕上げた。このモノづくりの美しさ、美しい素材を最後まで明日のオシャレのパーツに変えるアイテムをぜひ体感していただきたい。
ローファーは4月2日、渋谷パルコ4F「レザー作家TOMYのアトリエと親愛なるゲスト展」で発売する。3日からはオンラインでも販売を受け付ける。