時計メゾンの「ロジェ・デュブイ(ROGER DUBUIS)」は、1995年に誕生したマニュファクチュール(ムーブメントから自社で一貫製造する時計メーカーのこと)だ。創業してから30年にも満たない“若手”は、「DARE TO BE RARE(希少なものに、大胆に)」や「NO RULES, OUR GAME(このゲームにルールはない)」などのメッセージを掲げながら、時計の既成概念を超越。一方、スイスで毎年生まれる2000万個の時計のうち0.1%強しか取得できない「ジュネーブ・シール」を獲得する“名門”でもある、不思議なブランドだ。その世界と、代表モデル“エクスカリバー”、そして最新作を時計ジャーナリストの篠田哲生がナビゲートする。
アイコニックな
スケルトンムーブメントの
世界を銀座店で堪能
篠田が訪れたのは、銀座の並木通りにある「ロジェ・デュブイ」の銀座ブティックだ。幾何学構造のファサードなどは、「ロジェ・デュブイ」のアイコンであるスケルトンムーブメント“アストラル・スケルトン”をイメージしたもの。ゴールドと黒、赤という3つのカラーを基調とした空間で、ブランドの世界観を堪能できる。篠田はここで、新開発のキャリバーを搭載し72時間のパワーリザーブを実現した2022年の新作“エクスカリバー モノバランシエ イオンゴールド”などをチェック。ここには“エクスカリバー”のほか、各モデルが豊富に揃う。
実践派ジャーナリストが
「ロジェ・デュブイ」を語る
「ロジェ・デュブイ」は、デビュー間もない頃から取材をしてきたブランド。スイス取材はもちろんのこと、上海で開いたイベントに参加したこともある。歩みを長年見守ってきた身として感じるのは、新進気鋭ブランドならではの斬新な発想とスイスの時計文化に対する深い敬意の両方を持っていることだ。
過去を否定せず、しかし大胆に未来を見据えられるのは、やはり卓越した技術と専門性があるからだろう。創業者のひとりである時計師ロジェ・デュブイ氏は、有名マニュファクチュールを経て独立してオールドウオッチの修復や複雑機構の開発を行った人物であり、スイス時計の伝統を知り抜いていた。彼が中心となって自社ムーブメントの開発に力を注ぎ、熟練の時計師の技術を結晶させ、それを生かす形で独創的な時計を作ってきた。
1995年の創業から27年を経た現在では、卓越した時計技術と現代的なデザインの融合が大切な個性になっている。毎年何を仕掛けてくるか楽しみなブランド、それが「ロジェ・デュブイ」なのだ。
新作は伝統技術で
アバンギャルドに進化した
“エクスカリバー”
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常に進化する「ロジェ・デュブイ」の姿勢は、2022年の新作モデルにも表れている。「ロジェ・デュブイ」は昨年以降スケルトンムーブメントの構造を見直し、ムーブメントパーツを下側のブリッジのみで支えることでダイヤル側の表現の自由度を高め、アストラルスケルトンと呼ぶ星形ブリッジを立体型に進化させている。昨年はこの新構造をトゥールビヨンモデルに取り入れたが、今年はオートマティックモデルの“エクスカリバーモノバランシエイオンゴールド”にも継承した。
進化のポイントは他にもある。少々マニアックになるが脱進機の爪石とガンギ車がシリコン製となり、テンワはマスロット付きに。さらに歯車の歯型を変えるなどの細かい改良によって、パワーリザーブも72時間へと伸ばした。
つまり審美性を高める一方で、ユーザビリティの向上にも努めている。「ロジェ・デュブイ」は華やかなデザインが話題になりやすいが、実は高い精度やロングパワーリザーブなど、実用性も意識している。さらにジュネーブの伝統的な時計技術を公的に証明する「ジュネーブ・シール」も取得している。アバンギャルドに進化しているが、それを支えるのはスイス時計の伝統技術。その新旧の融合こそが、「ロジェ・デュブイ」を特別なものにしているのだ。
ちなみにモデル名の“モノバランシエ”とは、バランスホイール=テンワがひとつという意味。通常、時計のテンワは一つだが、「ロジェ・デュブイ」は最大で4つも使用する。なのに、あえて“モノ(ひとつ)”と明言する。そんなところにも自分たちのスタイルを極めんとする「ロジェ・デュブイ」の信念が見えてくる。
「ロジェ・デュブイ」は、何にも似ていない。だから一度魅了されてしまったら、抗うことは難しい。その傾向は、ますます強くなっている。
個性豊かな“エクスカリバー”
のラインアップを紹介
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“エクスカリバー”は、「ロジェ・デュブイ」の未来を創り出す意思を体現したアイコン的存在だ。圧倒的なデザインと妥協を許さないメカニズムを兼ね備える“エクスカリバー”には、さまざまなラインアップが存在する。
ロジェ・デュブイ
03-4461-8040