ファッションビル「渋谷109」は3月、大手ブロックチェーンゲームプラットフォームのザ・サンドボックス(THE SANDBOX)との提携を発表した。「渋谷109」は、ザ・サンドボックス内に専用の土地と建物「SHIBUYA109 LAND」を開設し、ここを拠点にオリジナルのNFTやミニゲーム、広告事業などを展開する。
香港に本社を置くザ・サンドボックスは、世界で4000万ユーザーを抱える、急成長中のゲームのプラットフォームだ。ブロックチェーンを基盤としているため、ゲーム内では独自の仮想通貨でアイテムなどが販売できることもあって、有力なメタバースプラットフォームの一つとしても注目を集める。昨年11月にはソフトバンク系の投資ファンドであるソフトバンクビジョンから9300万ドル(約110億円)の出資を集めたことでも知られる。3Dのバーチャルプラットフォームという意味では、すでに「レヴ ワールズ」を展開する三越伊勢丹ホールディングスも先行しているが、今回「渋谷109」は、ブロックチェーンやNFTと連動したウェブスリー(WEB3.0)をベースとした試みになる。渋谷109という、世界的にもメジャーなリアル空間での物販をベースにしてきた従来の事業とは全く異なる手法、考え方、ビジネスモデルの取り組みをどう進めるのか。
NTTドコモ、KADOKAWAというコンテンツビジネスを経験し、商業デベロッパーとしては異色の経歴を持つ「渋谷109」を運営するSHIBUYA109エンタテイメントの石川あゆみ社長に聞いた。
WWDJAPAN:今回の提携の狙いは?
石川あゆみ社長(以下、石川):コロナ禍に見舞われたこの2年、ファッションビルや駅ビルなどの都心の大型商業施設は非常に苦しい状況に置かれてきた。特に「渋谷109」はECサイトも閉じていたし、これまで少なくなかったインバウンドも消失した。リアル(な空間)に依存したビジネスの苦しみを味わってきた。昨年4月に社長に着任して、リアルに依存せず、「渋谷109」を楽しめる場所や体験をどう構築するかだった。
WWD:しかし物販を目的としないメタバースは飛躍があるようにも思うが。
石川:もともと「渋谷109」は脱ギャルなどと並行して、この数年、“いまここ”でしか味わえない“体験型消費”とも言うべきコンセプトを軸に、ライブや飲食、イベントなどの様々な施策を行ってきた。加えて、「渋谷109」には、リアル空間と紐付いて生まれる売り上げ以上に認知度や知名度のあるIP(知的財産)的な価値が高い。体験型のエンタメと付加価値の高いIP、この2つを生かす、という意味ではメタバースと非常に相性が良かった。
定期購読についてはこちらからご確認ください。
購⼊済みの⽅、有料会員(定期購読者)の⽅は、ログインしてください。