ベイクルーズは23日、名古屋パルコ内の複合大型店「ベイクルーズ ストア(BAYCREW’S STORE)」を24日の開店に先駆けて関係者に公開した。同社が運営する多数のブランドを集積した戦略店舗で、昨年11月に開店した仙台店に続く2号店。だが売り場面積は仙台店の2倍以上の3300平方メートルもあり、名古屋パルコ南館の4フロアを占める。同社は業界屈指のEC化率で知られているが、リアル店舗の体験価値を高めるため新業態の開発に取り組む。
名古屋パルコ南館の地下1階から地上3階までの4フロアを「ベイクルーズ ストア」として運営する。自社ECサイト「ベイクルーズ ストア」と同じ屋号になるが、ECとの連携よりも「訪れる価値のある新しいマーケットの創造」に軸足を置く。
単一業態の店舗に比べて10数倍から20倍以上の3300平方メートルの売り場を「ジャーナル スタンダード(JOURNAL STANDARD)」「イエナ(IENA)」「ウィズム(WISM)」「シティショップ(CITYSHOP)」「レショップ(L’ECHOPPE)」「ジャーナル スタンダード ファニチャー(JOURNAL STANDARD FURNITURE)」など20ブランドで構成する。南1階の正面入り口の前には、新たに立ち上げたコスメセレクトブランド「ロー パー イエナ(L’EAU PAR IENA)」の売り場を設けた。スタッフ数も100人近くで、前例のない規模になる。売上高も同社最大の30億円規模を目指す。
5カ所に設けたポップアップスペースは、3週間前後の周期で旬のブランドに入れ替える。同社がセレクトしたブランドだけでなく、同社のOBやOGをキュレーターとして招へいし、一緒に売り場を作る。またベイクルーズのブランドと親和性の高い“ゲストブランド”をコーナー展開し、ブランドミックスによる相乗効果を出す。ゲストブランドとして「ウーア(UHR)」「ダイリク(DAIRIKU)」「レッドウイング(REDWING)」などのコーナーを設けた。
売り場の内装はあえて作り込まずに、柔軟に動かせる什器を用いた。客の反応を見て、ブランドを入れ替えたり、場所を移動したりできるようにする。1号店の仙台店も開店半年に満たないが、すでに入れ替えを行った。商業施設内では、このような改装はコストがかさむが、自社運営の複合大型店なら融通がきく。グループで約30ものファッション系ブランドを有するメニューの幅広さも強みになる。
ベイクルーズは売上高に占めるEC化率が約45%(21年8月期)に達し、自社ECの運用ではファッション業界の先進企業だ。しかし古峯正佳副社長は「ベイクルーズ ストア」はリアル店舗の体験価値を突き詰める場にすると話す。「ブランド価値を上げるには、ECでは限界がある。ヒト、モノ、ハコというリアル店舗があって初めてブランド価値は高まり、ECの発展にもつながる」。
複合大型店の目的は2点あると話す。「第一に自分たちが集客のフックになること。商業施設の館(やかた)の集客力に頼るだけでなく、当社の魅力でお客さまを呼べるようにならないと長い目で見て生き残れない。ベイクルーズグループの街を作るつもりで臨んでいる」「第二にスタッフの活躍の場を作ること。現状では、地方在住のスタッフは店長から先のキャリアステップが描きづらい。ベイクルーズ ストアは(本部主導ではなく)現場のスタッフが自分たちの裁量でさまざまな企画を立てて、運営を行う場にしたい」。
連結売上高1212億円(21年8月期)まで成長した同社は、ベイクルーズ ストアを新しいステージに進むための戦略店舗と位置付ける。仙台、名古屋に続き、4月末に開業するららぽーと福岡への出店が決まっている。